作品タイトル不明
第12話
椅子、テーブル、ベッドなど最低限の家具は揃えられている。
タンスを開けてみると、ずらりと服が揃えられている。きっと、すべて俺の体に合ったものなのだろう。
特に荷物などを持っていたわけではないので、俺が何かを置くことはなかったので、確認はそれで終了だ。
「何か不便があったら言ってね?」
「うん、分かったけど……とりあえず大丈夫そうかな」
「それなら良かった。それじゃあ、私は迷宮攻略に関する会議に参加してくるね」
「あっ、俺はいいのか?」
「別にいいんじゃないかな? フェイクだって疲れてるよね?」
「でも、迷宮攻略をすることになれば俺も一緒に行くだろ? 一緒に話を聞けるのなら、聞いておきたいと思ったんだ」
アリシアは少し考えるように顎に手を当てた。
……アリシアはどうやら俺のことを心配していて、俺を参加させたくないように見える。
多少、強気に交渉する必要があるのかもしれない。
「うん……分かった。でも、迷宮攻略への参加が難しいと思ったら拒否してもいいんだからね?」
「分かってるよ、ありがとな」
「ううん。それじゃあ、一緒に行こう」
俺はアリシアとともに部屋を出る。
俺が迷宮攻略に参加したい理由は、第一にアリシアのことが滅茶苦茶心配だったからというのもあるが、それだけではない。
第二の理由は、俺の評価を上げるということ。
バーナスト家に関わる人の中には、俺に対してあまり良い感情を持っている人ばかりでもないはずだ。
俺のことを知らない人もたくさんいるだろうしな。
だが、今後はアリシアとともに色々な人と関わっていくはずだ。
俺にできることがあれば、積極的に協力していき、バーナスト家に関わる人たちに好印象を残したいとも思っていた。
迷宮攻略への参加は、そういった意味でも価値あるものだろう。
会議室内へと入ると、すでにリガードさんがいた。
リガードさんの席の背後では護衛の兵士が二名立っていた。
さらに、二名の見知らぬ兵士もいた。部屋に置かれたテーブルを囲うようにして、座っていた彼らの視線がこちらへと向くと、彼らは立ち上がりすっとお辞儀をしてきた。
護衛の兵士たちは先ほども顔を合わせてはいたが、そちらの兵士たちは知らない人たちだ。
アリシアが一歩前に出ると、片手を俺のほうへと向けてきた。
「こちらは、私の婚約者のフェイク」
婚約者、と聞いて兵士たちの視線がより一層強まった気がした。
嫌な感じの視線ではない……ように感じる。
俺は軽く会釈を返してから、アリシアの後ろをついていく。
一番奥の席に座ったリガードさんは、両肘をテーブルにつき真剣な眼差しでこちらを見てきた。
「アリシア、フェイク。よく来てくれた。席についてくれ」
そういってリガードさんは近くの席を示した。
リガードさんの両隣の席だ。
俺とアリシアは僅かに頷いてから、彼の隣を挟むようにして腰かけた。
共についてきていたレフィは、使用人として会議室に残るようで部屋の壁際についた。
皆の視線がリガードさんに集まったところで、彼はゆっくりと口を開いた。
「それじゃあ早速迷宮についての打ち合わせを行いたい。まず、迷宮についての状況についてだがアリシアとフェイクの二人が理解できるように改めての説明をお願いしてもいいか?」
先ほどもそうだったが、書斎で会ったときとはまるで別人だ。
リガードさんの迫力に驚いていると、席についていた兵士がすっと立ち上がった。
年齢は三十近いだろうか。
会議室にいる以上、兵士の中でもそれなりの立場の人であろうことは伺える。
「迷宮についてですが、中の調査を行った結果、EランクからDランク相当の力を持った魔物がいるというのを確認済みです」
EランクからDランク相当の力、か。
例えば、ゴブリンなどの魔物が出現するとしても、迷宮ごとによって能力が違うことが多い。
同じゴブリンでも、別の迷宮ではAランク相当の能力を持つこともある。
これは迷宮が生み出す魔力による影響が大きい。
立ち上がった兵士はそのまま言葉を続ける。
「最奥まで行ったわけではないため、ボスモンスターを確認こそしていませんが、これまでの似たような迷宮から恐らくはDからCランク相当のボスモンスターが出現するのではないかと考えています」
Cランク、か。
初めに聞いていたときよりも思ったよりも大変な仕事なのかもしれない。