軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

91.リアムの存在感

家の中はパアァ――と明るくなった。

窓を閉め切った昼間の室内は暗かった。

その暗かった室内――その天井に出現した白い光。

白い光は室内を明るく照らした。

窓を全開にして太陽光を採り入れるよりも下手したら明るくなると思わせる位の明るさだった。

「す、すごい……これが……魔法」

自分が(、、、) 発動した魔法に絶句するフローラ。

パルタから輿入れしてきた形の彼女は、今や普通にこの街に住んでいる。

そして、俺とファミリアで使い魔契約をしている。

その使い魔契約で、発動した照明魔法に驚いていた。

「消してみることは?」

「やってみます」

フローラはそう言って、古代の記憶から読み取って、照明魔法を消す魔法を使った。

まだまだ完全マスターする前だから、消すのにも数分かかったが、部屋自体は締め切った状態の暗さにもどった。

「どうやら問題ないみたいだな」

「はい……すごいです、リアムさん。これって、みんなが使える魔法なんですよね」

「ああ。照明魔法は道路だけじゃなくて、道路からそれぞれの家に伸びるようにハイ・ミスリル銀を敷設していく予定だ」

「すごい……」

「照明と、後は簡単な火起こしの魔法と、水の魔法だな。攻撃には使えないレベルでの、かまどの火起こしとか、井戸から水を汲む代わりの魔法を開発する予定だ」

「火と水も?」

「せっかくのハイ・ミスリル銀の鉱脈だ。戦いだけじゃなくて有効活用したいからな」

「有効活用なら、もっと他に使い道があるんじゃないですか?」

「いや、これでいいんだ」

俺はそう言って、この肉体――貴族の五男の体に乗り移るまでの生活を思い出す。

「明るさと、火と、水。この辺が便利になれば、みんなの時間はもっと他の事に使うことが出来る。使える時間が増えれば出来る事はもっと増える。これはやるべき事なんだ」

「はぁ……」

『ふふっ』

「どうした二人とも――いや、フローラ?」

ラードーンの言葉はフローラには聞こえないから、この場はまずフローラの反応の理由を聞くことにした。

「あっ、その……ここって、まだ街を作り始めてからそんなに経ってないのに、もうパルタの都よりも、みんな便利な暮らしをしているなって、思ったんです」

「そうなのか?」

「はい。リアムさんの事も……パルタでは王――大公や貴族が、民の生活の事を考えるなんて、あり得ない話でしたから」

「それはなんか……住みにくい国だな」

分からなくはないけど。

俺もリアムの体に乗り移る前の事を思い出す。

貴族やお上が俺達の生活の事なんて一切考えない――というのはよく分かる。

「それをリアムさんが……すごいです」

「俺はやりたいようにやってるだけだから」

「謙遜しなくても――」

「いや、それは本当だ。魔法を編み出す、練習する、活用する。憧れの魔法に関する事をたくさんやっていきたいだけなんだ」

「……はい」

フローラはそういい、小さく頷いたあと、きらきらする眼で俺を見つめた。

どういう目なんだろう、これって。

『ふふっ』

「また笑った。今度はなんだ?」

『彼女の今の心境を言い当ててやろうか。「そんな事いっても、みんなの生活をよくするためにやってるからやっぱりすごい。パルタじゃ自分の生活をよくするためにしかしないはず」――とな』

「な、なるほど」

ラードーンのそれは、多分当らずとも遠からずだ。

尊敬の眼差しで見つめてくるフローラに、ちょっとだけむずがゆくなった。

何か言ってその目を普通に戻そう――と考えていたその時。

『主、聞こえるでござるか?』

「その声はガイか?」

タイミングよく、ガイがテレフォンで話しかけてきた。

テレパシーと違って、テレフォンは「声」が出るもの。

その声は普通にフローラにも聞こえて、彼女はちょっとびっくりした後、 伝声魔法(テレフォン) に対して面白そうな表情をした。

憧れの目線が消えてちょっとほっとしつつ、ガイに聞く。

「どうした、何かあったのか?」

『こちらに主との会見をしたいと申し出ている者達が現われている』

「会見? 何者だ?」

『キスタドールのドラグーン、その隊長と名乗っている』

「ドラグーン!?」

話を聞いて、驚くフローラ。

「知っているのかフローラ」

「はい、すごく有名です、キスタドールのドラグーンは。ドラゴンを乗り回す竜騎兵の部隊です」

「竜騎兵……すごそうだ」

「すごいですよ。ドラゴンが強いのはもちろんですけど、そのドラゴンをすごく手懐けてるんです。普段は犬のように従順、戦場ではライオンの様に勇猛で」

「それはすごい」

というか……普通にすごすぎる部類だろ。

フローラの部屋から、テレポートで合流地点に飛んだ。

いくつかある、テレポートで決めた合流地点。

そこにとんで少し待つと、ガイと他数人のギガースが、ぞろぞろとドラゴンに乗った人間達を連れてきた。

なるほど、これが竜騎兵、ドラグーンか。

うん、見た目もすごく勇ましくて、格好良い。

多分、キスタドール国内でも人気なんだろうな、と想像にかたくない。

その竜騎兵だが、俺が見えるくらいの距離にやってくると、いきなり動かなくなった。

それまで普通に進んでいたのに、急に動かなくなって、伏せてしまっている。

「一体どういう事なの、これ!」

「分かりません! 竜どもが命令を聞きません!」

「こら暴れるな!」

「こっちのは怯えてます!」

怒鳴り声がささやきくらいの音量に聞こえる程度の距離で、ドラグーンはパニックを起こしていた。

どうしたんだろう。

向こうから来られなさそうだから、こっちから近づいてみるか――。

「きゃああ!」

先頭の隊長らしき女が乗っているドラゴンが「起き上がった」。

馬で言うところの棒立ち。

前足をあげて、後ろ足だけで立っている、驚いたときの仕草だ。

それを、ほとんどのドラゴンがしている。

「で、殿下! 彼です! 竜どもは彼に怯えています!」

そう言って、俺を指す女の部下。

「えっと……俺?」

なんだかよく分からないが、とりあえず離れてみよう。

そうおもい、数十メートルほど下がると、遠目にも分かる位、ドラゴンたちが落ち着いたようだ。

「えっと……本当に俺に怯えてる? なんで?」

『ふふっ、トカゲどもの――そうだな、生存本能を刺激したようだな』

「生存本能?」

『強者に怯える、獣によくある反応だ』

「はあ……」

そういう怯えられ方は……複雑だ。