軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

89.街の魔導書化

俺はハイ・ミスリル銀の採掘を始めた。

道路の舗装は石を敷き詰めるまでは引き続きやらせて置いて、街から更に動員をかけて、鉱脈を採掘させた。

魔力の感知で探り当てたハイ・ミスリル銀の鉱脈はかなりのものだった。

「この分だと、魔導戦鎧数百――いえ数千は作れると思うわ」

サポートを頼んだレイナが、現状をひとまず整理した上で、俺に報告した。

「ちょっとだけ ふいて(、、、) みたけど、本当に戦闘員全員分作れそうだな」

「リアム様の精錬技術が高いのも影響してます」

レイナはそう言って、横を向いた。

いくつか採掘してきた鉱石で試しに作ってみた、ハイ・ミスリル銀のインゴット。

さんざんやって豆粒大のものしか取れなかった頃と比べれば天と地ほどの差がある。

「時間がかかるのだけが難点だな」

「リアム様でもですか?」

「体は一つしかないからな。それに、今こっちをやってるせいで、道路の舗装が止まってるだろ?」

「あっ……」

賢いエルフのリーダーはハッとした。

「すみません、私達がふがいないせいで。もっと、リアム様のお手伝いが出来ればいいのですけど」

「魔法の素質を持った子がそこそこいるんだろ?」

「はい。リアム様と使い魔契約を結んだ後は才能に目覚める者が結構いました。エルフに限らず、各種族に」

「ふむ」

「ですが、魔導書が……」

「だよなあ」

こればかりはどうにもならない。

魔法を覚えるには、魔導書を長い間所持してなきゃならない。

普通、一つの魔法を覚えるまでに数十日から数ヶ月かかるもんだ。

その間、魔導書は実質持ち続けてないといけない。

俺が師匠から譲り受けたマジックペディアは三桁の魔法が入っている魔導書だが、それが逆に、誰かに貸すのが非効率になる。

三桁を越える魔法を持つ魔導書を、誰か一人が独占してしまう。

現状、それはもったいないと言わざるを得ない。

「そうだ、リアム様」

「うん?」

「このハイ・ミスリル銀で、リアム様が魔導書をつくることはできませんか?」

「これで? ああ、魔導書って言うか、古代の記憶だな」

「はい」

「出来なくは無い――いや、出来る」

俺は確信して、言い直して頷いた。

今までの経験から、「覚えている魔法を魔導書にする」というのは、新しい魔法を生み出すよりも簡単だと確信する。

「でしたら、このハイ・ミスリル銀を使えば」

「なるほど。今までそうしなかったのはハイ・ミスリル銀自体なかったからだし――いや待て」

俺はひらめいた。

頭の中にある事を思いついた。

「個別に作るんじゃなくて、あの地下祭壇みたいにすればいいんだ」

「地下祭壇、ですか?」

「ああ」

俺は頷き、ラードーンの地下祭壇の事を話した。

それ自体が一つの古代の記憶になっている、地下祭壇。

「なるほど! でしたらそういう建物を作れば、そこに鍛錬に行けばいいのですね」

「……いや、ちがうな」

「え? 何がですか?」

「……レイナ、お前はなにか魔法の素質はあるか?」

「はい、検査した結果、氷結魔法に少し」

「よし」

俺は精錬したばかりのハイ・ミスリル銀のインゴットを手に取って、レイナを連れて、テレポートで街に戻った。

「りあむさまだ」

「りあむさま、あそぼう?」

街中に飛ぶと、そこに丁度いたスラルンとスラポンがじゃれついてきた。

小動物的で可愛らしい二体のスライムを少し撫でてやってから、改めてレイナの方をむく。

「ちょっと待ってて」

「はい」

不思議そうに小首を傾げるレイナだが、俺の言うことならなんでも従う――と言わんばかりに頷いて、すんなり受け入れた。

俺は両手をかざした。

まずはサラマンダーを二体召喚して、溶かす。

持ってきたハイ・ミスリル銀と地面――舗装した道路を。

道路を溶かして、表面を剥がす。

剥がしたそこに、同じように溶かしたハイ・ミスリルを金箔くらいに薄くのばして、敷き詰めていく。

そして、ハイ・ミスリル銀に魔法をかける。

魔導書。

マジックペディア。

地下祭壇。

様々な物体に、空間。

今まで接してきた魔導書の「種類」の多さが、俺に古代の記憶の理解を深めさせた。

それを基に、ハイ・ミスリル銀を古代の記憶に作り替えた。

そしてその上に、一度剥がした舗装を元に戻す。

見た目は、元の道路に戻った。

「……よし。レイナ」

「は、はい」

「そこに立ってみて」

「わかりました」

何が起きるんだろう、と若干不思議そうな表情をしながらも、やっぱり俺の言うとおりに従ってくれたレイナ。

舗装し直した道路の上に立つ。

「なんか感じるか?」

「……はい! アイスニードル、ですか?」

「そうだ」

俺は深く頷いた。

道路の下に埋め込んだハイ・ミスリル銀、古代の記憶。

それを、レイナに素質があるかも知れない、氷結系の初級魔法、アイスニードルを込めた。

その上に舗装を被せたが、地続きだからよかったのか、その上に立っているだけで、レイナには魔導書を持っていると同等の効果が得られた。

「成功だな」

「どうしたらこんな風に?」

「建物を作るよりも、こうして、街全体の道路に張り巡らせた方が、だれでも魔法を覚えられるだろ?」

「なるほどそういうことだったのですね。すごいですリアム様!」

瞳を輝かせるレイナ。

改良のために、街の中の道路を再舗装しなきゃな。