軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

84.魔法でメイク

魔物の街の、迎賓館。

国として、そして(俺が)王として。

この先アナザーワールドを使わないのなら、賓客や他国の使者をもてなすための建物が必要になる。

という、スカーレットの提案で建てたこの建物の中の広間。

ジャミールの使者が退出した後、一人になった俺は、一人座って首をひねっていた。

『さっそく 鈴(・) をつけてきたな』

ラードーンは面白がってる様な口調で言ってきた

「やっぱりそうか?」

『うむ。王女の輿入れの調整だなどと言ってはいるが、お前がアイジーに手を出さないようにここで見張るつもりなのだろうな』

「そこまでするのか」

『人間のプライドというものだろう。一度言い切ってしまった事を覆すのはどうにも難しいらしい』

ラードーンはやれやれ、って感じで言った。

そういう人間をたくさん見てきたんだろうか。

「困ったな。もう数日来るのが遅かったらな」

俺はため息をついた。

ラードーン曰く「鈴をつけにきた」。

俺がこの街から離れていないかを監視する役割の、ジャミール王国の役人。

俺には上級神聖魔法「テレポート」がある。

見張られていても、一日中張り付かれているとかじゃなければどうにかなる――のだが。

テレポートは、一度行った事のある場所にしか行けない。

今回の一件のアイジー、もしくはその近くに行った事はない。

監視されている以上、ゆっくり移動することもできない。

「ここは幻影に――」

「失礼いたす」

ギガースのガイが部屋に入ってきた。

「どうした」

「ご報告でござる。連中の手のものが各地に散ったでござる」

「連中の手のものって……ジャミールの使者の部下か?」

ガイは深く頷いた。

「王女の輿入れ、実際に来た時のルート調査って言ってるでござる。どうするでござるか?」

「……わかった、好きにさせろ。最低限の監視をして、変なものを設置とか、そういうのじゃなければ放っておいていい」

「かしこまったでござる」

ガイはそういって、もう一度頭を下げて、部屋をでた。

「わかりやすく監視してるな」

『そのようだな』

「となると俺の幻影も使えないか」

俺自身がここにいて、幻影が出かけていく――というのをやろうとしたが、幻影も見つかれば問題になる。

俺は考えた。

やりたいことは主に二つ――いや条件付きの一つか。

俺自身がここに残ったまま、幻影が誰にも見つからずにアイジーに向かう。

これだけだ。

つまり、幻影が俺の見た目をしてなければそれでいい。

俺は少し考えた。

一つ、方法があるかも知れない。

それをする前に、手持ちの魔法の性能を再確認しなきゃいけないな。

俺はそう思いながら、手をつきだし。

「契約召喚:リアム」

魔法を使って、俺の幻影を召喚した。

目の前に現われた俺自身の分身。

見つめ合って、頷きあった。

「じゃあ、いくぞ」

「ああ」

幻影は頷き、初級魔法ウインドカッターを使って、自分の髪をきった。

貴族の五男――庶民にくらべて栄養が行き届いてるために艶やかな髪を全部切りおとした。

魔法でざっくり切ったから、かなりとんでもない見た目になった。

その幻影と頷きあって、俺は彼を消した。

そして――。

「契約召喚:リアム」

もう一度、幻影を召喚した。

召喚された幻影は、髪型が元の姿で召喚された。

「うん」

頷いて、さらに消す。

今度は俺自身――オリジナルの髪をちょっと切った。

慎重に、おかしくないように。

でも、一目で分かる位違う様にきった。

そして、三度幻影召喚。

召喚された幻影は、俺が髪をきった後の姿だった。

「やっぱり、召喚する瞬間の姿をベースにしてるな」

「ああ、そして幻影に起きた出来事は解除すると全てなかったことになる」

「こうじゃなかったらなあ。残っていれば、アイテムボックスに手紙、なんて事もしなくてよかったんだが。再召喚で直接話せばいいんだから」

「だなあ」

俺と幻影は微苦笑しながら言い合った。

うすうすと気づいてはいた幻影召喚の特性。

それを今、はっきりとさせた。

普段は不便に思っていたこの特性を、今回は逆手に取る。

幻影に向かって、手をかざす。

「魔力は互角だから、詠唱した方がいい」

「だな――アメリア・エミリア・クラウディア」

俺は頷きつつ詠唱して、手を幻影にかざす。

「ハイ・ファミリア――アメリア!」

魔法をかけた瞬間、幻影の姿が光に包まれて変わっていく。

使い魔契約の魔法、その上位版となる、俺のオリジナル魔法。

自分のイメージ通りに、使い魔を進化させる事ができる魔法を、記憶の中に克明に残っている姿をイメージしてやった。

幻影は、憧れの歌姫・アメリアの見た目に変化した。

「どう?」

「完璧だ、声もそっくり」

「そうなのか」

自分ではわからないのか、幻影・アメリアは自分の手を見つめる。

「魔法はどうだ?」

「アイテムボックス――でた」

幻影・アメリアはアイテムボックスを唱えて、問題なくそれをだした。

「すごいな、これ」

「最終チェック、行くぞ」

もう一度消す。

そして幻影を召喚。

俺の姿に召喚された幻影を見て、「いける」と確信する。

そして、もう一度ハイ・ファミリアをかける。

再びアメリアの姿になった幻影に。

「じゃあ、頼むぞ」

「うん――ええ、任せて」

幻影は女性になりきった。

俺がここにいて、幻影はアメリアの姿で、俺の魔法をそのまま使える。

これなら、バレずに幻影でアイジーに水を運べるぞ。