軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

82.剛柔一体

「だ、だけど。魔力が増えてる様には感じないぞ」

あまりのパワーアップに、すぐには受け止めきれなかった。

「効率化だけで、こんなに違うのか?」

「ふふ、わかるよな」

「え?」

「今の一連の訓練で、お前はより魔力の把握・感知能力があがった。自分の魔力がほとんど増えていないのがはっきりと分かるようになった」

「あ、ああ」

「そう、実際に増えてない。問題はお前が今までにやってきたことだ」

「え?」

「お前は今まで、ほとんど独学といって良いくらい、自分で魔法を学んできた」

ラードーンは、まるで見てきたかのように言う。

「我は全てを見ていたわけではないが、察しはつく。我と出会う前は、とにかく『努力』の二文字だったのだろう?」

「魔法ってそういうものだろう?」

「魔法はな」

「はな?」

ラードーン流の言い回しがまたしてもでた。

俺は少し考えた。

魔法はな、の先に続く言葉を。

「……魔力は?」

「ふふ」

ラードーンは満足げに笑った。

「お前は、柔よく剛を制する、という言葉を知っているか?」

「え? いきなり何を……知ってる、けど?」

いきなり話が飛んだ、俺はちょっと困った。

「その言葉は前半分だけ、という事は知っているか?」

「前半分だけ?」

「そうだ。後ろ半分は、剛よく柔を断つ、だ」

「そんな言葉があるのか……」

「今でも、人間は前の方――柔よく剛を制すの方が好みなのだろう?」

「そう……なのかな?」

好みかどうかはわからないけど、そっちはよく聞く。

逆に「剛よく柔を断つ」は今初めて聞いた。

「人間はこの地上で、力だけでいえば弱い方だ。そのコンプレックスから柔よく剛を制す――技術で圧倒的な力に勝てるというのを無意識に望んでいる」

「はあ……えっと、その話をするって事は、後半の、剛よく柔を断つの方が正しいってことなのか?」

「お前は今まで力任せにパワーアップしてきた、我はそれに、効率化を加えてやった」

「え? あ、ああ」

またしても話が飛んだ。

というか、戻ってきた。

「剛柔一体」

「剛柔……一体」

俺は少し考えて。

「力と技術、どっちかがより正しいとかはない。両方が大事……ってことか」

「ふふっ……」

ラードーンは満足げに笑った。

そのまますぅ……と薄くなって、俺の中に再びもどった。

きっと、今のが正解なんだろう。

力と、技術。

剛柔一体。

これからは、それを意識しよう。

アナザーワールドの外に出た。

中は昼も夜もなくて、いつでも明るいままだが、外は真っ昼間で、太陽の光は目が痛くなるほどまぶしかった。

ずっと明るいと思っていた空間でも、やっぱり太陽の光に比べると暗い方だったようだ。

目の前に手の平をかざして、目が慣れてくるのを待つ。

しばらくすると、視界が戻ってくる。

「あれ? スカーレット?」

建設ラッシュ中の街の入り口に、スカーレットが立っているのが見えた。

彼女は何者かを見送っていて、そのものは馬に乗って立ち去ったところだ。

「スカーレット」

「主」

「誰だあれは……なんかあったのか?」

こっちを振り向いたスカーレットの表情が若干優れない事に気づいた。

複雑そうで、苦虫をかみつぶした様な表情だ。

「私の部下です。少し、良くない知らせを持ってきたところでした」

「良くない知らせって?」

「ジャミールのアイジーという地方が、今年に入ってから一度も雨が降ってなくて、ひどい干ばつに見舞われているらしいのです」

「アイジー」

「母方の実家の領地です」

「ああ……」

スカーレットの実家。

定期的に王室に血を――妃を供給する貴族の家。

その貴族の家が持っている領地ってことか。

「申し訳ありません、主に仕える身で、あっちの話を持ち込んでしまって。今後は持ってくるなとキツく言っておきました」

「いや、それはいい。それよりも……」

俺はあごを摘まんで少し考えた。

「干ばつか。さしあたって水があればいいのか?」

「え? それはまあ……必要は必要……ですが……」

どういう事だ? って顔で俺を見つめるスカーレット。

「なら水を支援する」

「え?」

「普通なら水なんて輸送しようと思ったら大変だが、アイテムボックスとテレポートを組み合わせればいくらでも運べる。海水とセルシウスを組み合わせればいくらでも作れる」

「ど、どうして……」

驚くスカーレット。

その驚きは分かる。

スカーレットの実家とは言え、今は別の国。

ジャミール王国内で起きた出来事だ。

「隣国だ、仲良くしておいた方がいいだろ?」

「それは……そうですが……」

「なにか問題が?」

「えっと……陛下にお伺いを」

「じゃあお前が使者になって。その話を持ってってくれ。水ならいくらでも持っていく。災害だから、見返りもいらないって」

「わ、分かりました」

スカーレットは慌てて動き出した。

彼女が立ち去っていく後ろ姿を見つめていると。

『なんだ、やけに気前がいいな』

「お前の教えじゃないか」

『我の?』

俺の中で訝しむラードーン。

「剛柔一体」

『む?』

「スカーレットの提案で、貨幣を造って、技術力――力をアピールした。威圧っていってもいい」

『……ふむ』

「威圧しっぱなしにするよりも、その技術は協力しあうためにも使えるってした方がいい」

『……応用したのか、これに』

「ああ」

『……ふふ、お前はやっぱり、賢王の素質があるよ』

ラードーンの言葉に俺はこうして正解だ。というお墨付きをもらったような気分になった。