軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

08.鉄の薔薇

レククロ草を探して林の中を探索していると、一メートルくらいの段差の断面が、やけに黒くなっているのが目に入って、それが気になった。

なんだろうだかと近づいて断面の土を手に取ってみる――

「ちがう、土じゃない。これは……砂鉄か?」

むしり取ったらつぶつぶになっているそれを一粒だけ試しに舌の上に乗せてみる。

ちゃんと鉄の味がした、やっぱり砂鉄だ。

断層を見る、結構な分量の砂鉄が埋まっていた。

鉄か……。

昔から野外でたまに砂鉄の層を見かける。

大抵は商業的に採掘する価値のない量だが、個人でなんとかつかえれば生活はかなり助かるって量でもある。

まあ、大抵の場合それを掘って、街に持っていってお小遣いに変えてしまうんだが。

目の前の砂鉄は、ざっと目測で庶民の家一軒分くらいの量はある。

いわゆる商売にはならないけど、放っておくのももったいない。

鉄作りって……高熱が必要、だよな。

一旦屋敷に戻って、書庫で書物を探してきた。

さすが貴族の蔵書、庶民には秘密にしている製鉄の方法を書いてある本がちゃんとあった。

五男とはいえこの肉体はれっきとした貴族。

俺は誰にもはばかられることなく、製鉄の方法を読んできた。

そして、見つけた砂鉄の層に戻ってきた。

「ノーム!」

まずは、下級精霊のノームを召喚した。

現われたモグラのような見た目をした土の精霊に命じる。

「土で巨大な鍋を作って、テーブルの高さにうかべろ」

ノームは頷き、地面から土をとって、風呂桶くらいのサイズの大鍋を作った。

俺はその鍋の中に砂鉄を放り込んだ。

まずはざっと、人間一人分の体積の量を。

「サラマンダー!」

今度は火の下級精霊、サラマンダーを召喚した。

サラマンダーは全身が炎で出来た、巨大なトカゲのような外見だ。

見た目は意外と愛嬌があるんだが、いかんせん炎で出来ているから、触って愛でたりする事はできない。

「鍋の中の砂鉄を熱しろ。徐々に温度をあげていけ、俺が止まれと言ったらその温度を保て」

サラマンダーは無言で鍋の中に飛び込んだ。

鍋の中の砂鉄が徐々に赤くなっていく、やがて溶けて、粒と粒がくっつき合い、どろどろしたオレンジ色の液体になった。

「止まれ」

温度が上がると、色も変わる。

俺の命令でサラマンダーは温度を上げるのをやめて、色がそこで固定された。

ファイヤーボールじゃなくてサラマンダーを使ったのはこの温度調整の為だ。

レククロの結晶の時は、とにかく温度を上げるだけでよかった。

土が溶ける温度になったらそこでやめて冷やせばいい。

しかし製鉄はそうは行かない。

今回の場合、鉄が溶けて、土がとけない温度に保たないといけない。

そうするには、ファイヤーボールじゃなくて、火の精霊を使う必要があった。

「ノーム」

同時三体目の精霊、ノームを呼び出した。

ちなみに魔法同時使用の判定は、精霊召還の場合、精霊が存在している間は「同時」という扱いになる。

つまりかなり間が空いたが、今のこの瞬間は魔法を三つ同時に使っている状態だ。

それもあって、一定以上の魔力を持つ召喚士は下級精霊じゃなくて上級精霊をメインで召喚して使役する。一度に一体しか呼べないから、下級より上級って事になる。

閑話休題。

「土で『型』をつくれ」

俺は二体目のノームに命令した。

型の形の詳細を伝えた。

二体目のノームは早速それを作った。

二十センチ四方の土のブロックを作って、上方に穴を開けて、中を空洞にする。

それを鍋の真下に置いて、今度は一体目のノームに。

「鍋底に穴を開けて、鉄をこの中にたらせ」

一体目のノームは言うとおりにした。

鍋の底に穴が空いて、鉄がドロッと溶けてきた。

このあたりは、自身が司る物をほぼ完全に操作できる精霊ならでは。

鉄は、一分の狂いなく型に流れ込んだ。

「ストップ」

そして、号令すると、鍋の底が綺麗に塞がった。

型に流れ込んだ鉄は急速に冷えていく。

やがて、灼熱のオレンジいろじゃなくて、普通の鉄の色合いになった。

「型を外せ」

二体目のノームは綺麗に型――土を剥がした。

一欠片も残ることなく、土がパージされた。

そこに残ったものは支えを失って、地面にガラン、と音を立てて落ちた。

土を浮かせられても、鉄には何も出来ないのがノームだ。

「ウンディーネ」

仕上げにノームを還し、ウンディーネを呼び、すぐに触れられる様にそれを冷やす。

そして、拾い上げる。

綺麗な薔薇だった。

花びらの一枚一枚まで良くできている、今にも 薫(かお) ってきそうな、リアルな作りの薔薇だった。

「こんな精巧な鉄細工、見た事ないな」

思わず声にだしてつぶやくほど、我ながらの出来映えだった。

これができる鍛冶屋か細工師がいれば、その土地の名産になるくらい素晴らしいものだ。

本にも書いてあった。鉄を溶かすだけなら誰でも出来る、かまどの中に鉄鉱石や砂鉄を入れ大量の木炭をくべて燃やせばいい。

問題なのは溶けた物――手ではとても触れない物を、意の通りの形にする事。

俺は土を容器にした。

それは本で書かれていたこと。

だが、土だと表面が凸凹になったり、形は斧とかの刃先とか、シンプルなものしか作れないとも書かれていた。

それを、俺はノームを駆使して、見た目も素晴らしい鉄の薔薇を作り出した。

完全に成功だ。

これが出来るんだ、黄金の薔薇だって――いや。

あらゆる金属で、望んだとおりの形に出来る。

五男貴族だからこそ、これを頑張って。

このスキルだけで、俺は一生食っていけるはず。

そう確信した。