軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

58.ギガースへ進化する

「我々ニ、ナニヲノゾム」

落ち着いたあと、トロールボスが俺に聞いた。

俺の前であぐらを組んで座っていてもなお、二メートル近くの高さで、見あげるしかなくて首がちょっと痛くなってくる。

トロールボスを見あげる体勢で説明をする。

「この土地に新しい村を作ってる。今のところエルフと人狼がほとんどで、人間は俺を入れて二……いや四人かな」

「村ヲ……?」

「そこに一緒に来てほしい」

「何故、我々ヲ?」

「理由はいくつかある」

俺はちょっとだけ考えて、一番当たり障りのないものを言った。

「この先、この土地には人間が多くやってくるかもしれない。お前達は放っておくと、最悪討伐される。そうなるのは見たくない」

「……」

トロールボスは俺をじっと見つめた。

本心を見極めるかのような視線だ。

まわりで、他のトロール達が固唾を飲んで見守っている。

「……先ニ」

「うん?」

「先ニ、村ノ様子ヲ見セテ欲シイ」

「ああ、わかった」

トロール達を連れて、村に帰ってきた。

もちろん徒歩とかじゃなく、テレポートだ。

「コ、コレハ!?」

「上級の神聖魔法、テレポートというヤツだ。いったことのある場所に瞬間移動する魔法だ」

「てれぽーと……」

トロール達は全員ざわついていた。

一瞬でまったく違うところに飛んだことを未だに受け入れられてないようだ。

「あー!!」

女の声がした。

振り向くと、クリスがそこにいた。

クリスはこっちを――俺じゃなくてトロールボスを見ている。

「ナンダ、コノ女ハ」

「なんであんたがここにいるのよ脳筋!」

「ソノ呼ビ方……イノシシ女カ」

「猪じゃなくて狼って言ってるでしょ!」

逆上したクリスは、トロールボスに飛びかかっていった。

猛ダッシュしてからのジャンプ、そのまま飛び蹴り。

トロールボスは防ごうとしたが、蹴りは想定よりも速かったようで、ガードをすり抜けてあごに綺麗に入った。

グラッ……とトロールボスの巨体が揺れて、後ろ向きに倒れ込んだ。

トロール達が一斉にボスのまわりに集まった。

一方で、クリスは。

「ふふん!」

と、腰に手を当てて、得意げにふんぞりかえった。

「クリス」

「え? なに?」

「あいつとどんな関係なんだ?」

そもそもの事の発端も、レイナがクリスから話を聞いたからだった。

今のやりとりを見ても、単なる顔見知りを越えた何らかの関係なのは間違いない。

「うーん、むかつくバカ?」

「いやそれは関係じゃない」

「よくわかんない。むかつくから、昔から会ったらとりあえず殴り合ってるんだよ」

「ケンカ友達ってことか? とりあえず殴り合ってるって、どれくらいやってるんだ?」

「今ので306勝378敗くらいかな」

「やり過ぎ! もう腐れ縁だろ!」

お前ら結婚しろ! って言葉が喉まで出かかった。

「っていうか脳筋、あんた弱くなったんじゃないの? なんであたしに一発でのされてるのさ」

「弱くなったんじゃなくて、クリスが強くなったんだよ」

「え?」

「ファミリアでウェアウルフから人狼に進化しただろ」

「……あ、そっか」

言われて初めて思い出した、って感じのクリス。

一方で、仲間のトロール達に支えられて、ようやく体を起こすトロールボス。

「強クナッタナ」

「当たり前じゃん。あたしはご主人様の使い魔で、強くしてもらったんだから。あんたみたいな脳筋に負けてらんないのよ」

ついさっきまでファミリアで進化したからという事も忘れていたのに、今はもうそれを自慢の種にしている。

クリス自身、嫌味の無い性格だから、悪い気はしない。

「ソウカ……」

「っていうか、あんたもご主人様に契約してもらいなさいよ」

「契約?」

「そっ。ご主人様いいよね」

「ああ、まあ。そのつもりだけど……彼ら次第だ」

「それなら問題ないよ。ちょっと脳筋、あんたあたしに負けたんだから、いつも通り一個命令聞きなさいよね」

「……分カッタ、何デモ言エ」

「って事でご主人様」

やっぱり仲が良いな、この二人は。

まあいいや、それは置いといて。

「じゃあ契約するぞ」

「アア」

俺はファミリアの魔法をトロールボスにかけた。

同時に、名前をつけてやる。

「お前の名前は、ガイだ」

頭に浮かんだ、彼らしい名前を告げると、魔法の光がガイを包み込んだ。

ガイは、みるみるうちに小さくなっていった。

三メートルを超える巨人が、一メートル八十センチくらいの、ガッチリとしたマッチョになった。

ものすごいマッチョだ、脂肪はまるでついていない、筋肉の鎧を纏った男。

「これが……それがしでござるか」

そして、言葉もさっきまでの片言じゃなくて、人間っぽい流暢な喋り方になっていた。

何故か語尾がござるになってるが。

サイズこそ小さくなったが……体に内包する力は間違いなくさっきまでより上。

ざっと三倍は強くなっていると感じた。

「よし、続きやるよ!」

クリスがガイにしかけた。

さっきまで跳び蹴り一発で沈められていたのが、完全にクリスの動きに反応できるようになった。

飛び蹴りを軽く受け止めて、うなりを上げる裏拳を放つ。

それをクリスが軽やかな身のこなしで躱す。

二人は戦った。

関係性を知っているとじゃれ合っているように見えそうだが、かなりハイレベルな戦いだ。

ガイの攻撃は一撃一撃が必殺級で、俺を地中深くに叩き込んだあの一撃よりも力強い。

一方のクリスは素早く、攻撃も鋭く。

体を外からではなく、内側から破壊するような鋭さの攻撃だ。

そんな二人の戦いを、トロール達がポカーンと見つめていた。

「ぼす……スゴク強イ」

「前ヨリモズット」

「マサカ……伝説ノぎがーす、カ?」

トロール達のつぶやきと、人狼やエルフに進化した今までの事から。

トロール達は、ファミリアと名付けで、ギガースという種族に進化するみたいなのがわかった。

残ったトロール達にも次々とファミリアをかけて、ギガースに進化させる。

こうして、心優しい巨人達が進化したギガースが加わり。

この先必要となる、防衛力――戦力に目処がついたのだった。