軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

48.人狼のクリス

「じゃあ、先にエルフ達のところに戻るから」

「はい。修復が終わりましたらすぐに追いかけます」

ガーディアン・ラードーンの横に立つスカーレットが真剣な顔でそんな事を言う。

「急がなくていい、ラードーンの文字が完全に自己修復されるまでは、支配力が定着しないんだから」

「神竜様がそうおっしゃったのですね」

俺は深く頷いた。

ガーディアン・ラードーンの額の文字を削って、ラードーンから服従に変えてスカーレットの命令を聞くようにしたはいいが、文字が自己修復して再びラードーンに戻るまでは安定しないってラードーンに言われた。

鉄の巨竜はじっとしてれば自己修復するから、しばらくこの場にとどまっていればいいとも言われた。

「無理をする必要はない、気長にそばについてあげるといいさ」

「分かりました……ありがとうございます」

「じゃあな」

俺はスカーレットに別れを告げて、地下空洞をでて、階段を上って地上に出た。

そろそろ、日が暮れようとしていた。

今日の「掃除」はここまでで良いだろう、と、俺はエルフ達の元にテレポートで戻った。

「――っ!?」

瞬間、驚く。

そこは何者かに襲われていた。

朝でかけるときは大枠を作っていかにも建設予定地って感じで、村の形になってきたそれは、ところどころ壊されて、一部炎上している。

「きゃあああ!!」

「!?」

考えるよりも早く、悲鳴の方に向かって駆け出した。

駆けつけた先で、一人のエルフがモンスターに襲われていた。

二足歩行のオオカミ――ウェアウルフだ。

ウェアウルフはエルフの細い腕をつかんで、そのまま持ち上げている。

「彼女を放せ!」

「なに――ぶへっ!」

こっちに振り向いてきたウェアウルフの横っ面にマジックミサイルをたたき込んだ。

クリーンヒットするマジックミサイル、ウェアウルフは吹っ飛ぶ。

つかまれていたエルフの体は投げ出され、そのまま地面に叩きつけられそうだったが――キャッチする。

すんでのところで、お姫様抱っこの形で抱き留める。

「大丈夫か?」

「リアム様!?」

エルフは俺に抱きついてきた。

首に腕を回してきた。

柔らかくて、いい匂いで、ちょっとどきっとした。

「ど、どうしたんだこれは?」

「あっ! そうなんです、いきなり狼男たちに襲われたんです」

「理由は?」

「わかりません」

「……そうか、みんなを助ける。君はこの中に隠れていろ」

そう言って、アナザーワールドを呼び出す。

一度入った事のあるエルフは、何の疑問も持たずに中に入った。

そしてアナザーワールドを消す、これでエルフの安全は確保した。

俺は再び走り出して、村(予定地)の中を駆けずり回った。

別のウェアウルフを見つけた、うろうろしてて、獲物を探している風だった。

こっちに気づく前に、先手を打ってマジックミサイルを撃ち込む。

完全に無防備なところに喰らったウェアウルフは吹っ飛んで失神する。

駆けずり回って、ウェアウルフを倒して、エルフを助けてアナザーワールドに保護。

そうやって十体くらいのウェアウルフを倒した直後。

「くっ!」

目の前にいきなり黒い影が現われた。

とっさに腕をクロスさせてガード。

腕の上からものすごい衝撃と、焼けつく熱さを感じた。

それで吹っ飛ばされる俺、空中で体勢を立て直して、ぐるっと半回転してどうにか着陸する。

腕を見る、鋭利な爪に引き裂かれて出血していた。

「ヒール」

下級の治癒魔法をかけて、傷を癒やす。

そして襲ってきた相手を見る。

同じウェアウルフだったが、今までのやつらに比べて纏っている空気が違う。

「お前がリーダーか?」

会話が成り立つかどうかは分からないが、とりあえず聞いてみる。

すると。

「穢れた異邦人め、聖地からすぐに出て行け」

「聖地?」

「出ていかぬと言うのなら――」

ビュビュッ! っという音がして、ウェアウルフのすぐそばにあった、骨組み状態の家が引き裂かれて崩壊した。

それをやった手を――爪を見せつけるように突き出してくる。

「五体、ばらばらに引き裂いてくれる」

「待て、話を聞いてくれ」

こいつは聖地といった。

それはつまり、ラードーンの息がかかった関係者とか、それに近い存在とかの可能性が非常に高い。

ならば話を――と思ったんだが。

「立ち去らぬか、ならば力尽くで!」

ウェアウルフは地を蹴って突進してきた。

とっさにマジックミサイル17連をはなった。

17連発のマジックミサイルが飛んでいく。

ガガガガガガガ――。

ウェアウルフはそれを全てはじいた。

「はあああ!!」

小さく跳躍して、爪を振りかぶって飛んでくる。

テレポートを使う。

「なに!?」

消えた俺に、飛びかかってきたウェアウルフが驚愕する。

更にテレポートを使って、ウェアウルフの背後に出現。

密着し、ゼロ距離から。

「ライトニング!」

下級電撃魔法・ライトニングを放つ。

電流がウェアウルフの体を突き抜けていく。

ビクッ! って硬直して、そのあとけいれんする。

無防備な状態で電流を喰らったウェアウルフはその場で崩れ落ち、両膝を地面につけてしまった。

「くっ、こ、これしき……異邦人などに負けはせぬ」

「話を聞けって――これでどうだ」

俺はラードーンジュニアを召喚した。

ラードーンとほぼ同じフォルムでありながら、中型犬サイズの竜の子。

それを見たウェアウルフは目を見開かせて。

「そ、それは……」

「やっぱりラードーンの関係者だったか」

村の中心に全員を集めた。

片方はレイナを始めとするエルフたちで、もう片方は襲撃してきたウェアウルフたちだ。

ウェアウルフも数十体いて、結構な大所帯だ。

エルフと、ウェアウルフ。

両方のけが人に治癒魔法をかけて。元気な状態にもどす。

最後に倒したあの強いウェアウルフはやっぱりリーダーだったみたいで、他のウェアウルフを代表するような形で聞いてくる。

「神竜様は本当にお前の中に?」

「もっと他に何か証拠がいるか? 言ってみろ、ラードーンに聞いて、それを証明するから」

「……いや」

ウェアウルフは俺が出したままのラードーンジュニアをみて、ゆっくりと首を振った。

「それだけで十分だ」

「そうか。お前達はずっとここに住んでて、外部から侵入者が来たらその都度追い出してる。ラードーンに従ってる一族、ってことでいいのか?」

「そうだ」

「じゃあ彼女達と似ているな。彼女達はラードーンに保護された側だが」

「そうだったのか……」

ウェアウルフはそれを聞いて、レイナ達エルフに向き直って。

「そうとは知らず、悪いことをした」

他のウェアウルフたちも頭をさげた。

「ううん、そういうことならしょうがないよ」

同じラードーン縁の者だからか、レイナは気にしてないと言い、他のエルフ達も同じ表情だ。

「それよりも、あなたたちもリアム様と契約したら?」

「契約?」

「私達は契約して、リアム=ラードーン様に忠誠を誓ってるんだ。あなた達もそうしてもらえばいいじゃない」

「なるほど」

ウェアウルフは頷いて、今度は全員、こっちを向いてきた。

「我らを、そうしてもらえないだろうか」

「わかった」

断る理由はない。

ラードーンに忠誠を誓う者達ならなおさらの事だ。

俺はひとりひとり、ウェアウルフたちにファミリアの魔法で使い魔契約をした。

エルフ達と同じように、ウェアウルフたちも進化した。

ほとんど二足歩行の狼から、より人間に近い、人狼の姿に進化する。

その中でも特に――

「じゃあお前は……クリスだ」

他のと同じように、名前をつけながらファミリアの魔法をかける。

みるみるうちに変化していくクリス。

他よりも遙かに人間っぽく――耳としっぽがある事以外、ほとんど人間と変わらない姿になった、のだが。

「え? 女の子だったのか、お前は」

「そうだけど?」

狼の耳をつけた美少女が、「何を今更」って感じの顔で俺を見つめていた。