軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

45.ドワーフとの契約

昼前にテレポートを完全にマスターしたので、俺はその足で街に出て、大工ギルドに向かった。

夜までかかってたら明日にならざるを得なかったところだけど、早めにマスターしたからすぐに来た。

大工ギルドは、ハンターギルドと違って、普通の商店のようだった。

ハンターギルドは酒場のような造りで、ハンター達がたむろって酒を飲んだりくつろいでたりしたが、大工ギルドはマスターっぽい老人が一人カウンターの向こうにいるだけで、他に人はいない。

その日暮らしのハンターと違って、大工は一度仕事に入れば大抵は長期的なものだから、ギルドにたむろってる事は少ないためこういう形になってるらしい。

そんな大工ギルドにやってきた俺は、一直線にカウンターのマスターっぽい老人のところに向かって行った。

「これはこれは、ハミルトンのおぼっちゃま。何かご用ですかのう」

「俺の事を知っているのか?」

「それはもう。何度かお屋敷の修繕をさせていただいた事がありますので」

老人は揉み手しながら、明らかな商売スマイルを浮かべながらそう言った。

なるほど、屋敷の修繕をしたときに俺を見かけた事があったということか。

もちろん俺にはそんな記憶は無い。

貴族の五男に乗り移ってから、屋敷が修繕された事はないからだ。

「それで……おぼっちゃまがわざわざおいでになったのは……」

俺はギルドマスターの老人に事情を話した。

ある土地に一から村を作りたいが、そのための大工がほしいという話をした。

それを聞いたギルドマスターは難しい顔をした。

「無理なのか?」

「そうですな……大工というのはなかなか、住み慣れた街から離れようとしませんので」

「そういうものなのか」

「土地ごとに家の建て方が違いますし、その……」

「うん?」

「長く同じ土地にいれば、新築だけでなく、修繕などの仕事が入り続けますから……」

ああ、そういえばギルドマスターも、さっきは屋敷の修繕とか言ってたな。

「うちの屋敷も、マスターが?」

「はい、若い頃に取り立てていただきました」

「なるほど……」

俺は少し考えて。

「まったく心当たりはないのか?」

「申し訳ありません……」

「分かった。悪かったな、無理を言って」

ギルドマスターに別れを告げて、大工ギルドをでた。

さてどうしよう。

ギルドから大工を見つけられたらって思ったんだが……。

「男爵様」

「ん?」

真横から呼ばれた。

振り向くと、一人の男が少し離れたところで、恭しい感じで俺を見つめていた。

「あんたは……?」

「殿下の使いの者です。今すぐに会いたい、と殿下が」

「殿下……」

って事はスカーレット王女か。

そういえばラードーンの話を聞いて慌ててどこかに行ったんだっけな。

「今すぐにか?」

「はい」

「わかった。案内してくれ」

男に案内されてやってきたのは、前と同じジェームズの屋敷だった。

今度はジェームズはいなくて、部屋でスカーレット王女だけが待っていた。

「よく来たな、座るがいい」

「はい……えっと、何ですか? 俺を慌てて呼んだのは」

「一つ聞きたい。魔――じゃなく、竜から『約束の地』という言葉を聞かされていないか?」

魔竜と言いかけて、それを飲み込むスカーレット王女。

考え方が変わってきている……?

それはそうとして。

「約束の地?」

「うむ」

「えっと……封印の地、ならあるけど。それかな」

今までのラードーンがらみの事を思い起こせば、スカーレット王女が言ってるのはそれかもしれないと思った。

「封印の地?」

「ああ。見に行きます?」

「場所を知っているのか?」

「はい――テレポート」

完全にマスターしたテレポートを使って、スカーレット王女ごと封印の地に飛んだ。

広い草原にいきなり飛んだことを。

「な、何が起こった!?」

スカーレット王女は大いに慌てた。

「上級神聖魔法、テレポート。一度行ったことのある場所に瞬間で飛べる魔法です」

「これが!? 名前は聞いたことがあるのだが……実在していたとは……」

へえ、神聖魔法としてのテレポートの知識はあるのか。

「それで、あっちが封印の地です」

俺は彼女の背中の、あの豊かな土地を指さした。

スカーレット王女は振り向き、土地を見つめた。

やがて。

「ま、待て!」

「え?」

「遠くにあるあの山の形、太陽の場所。ここは、ガラールの谷だった場所ではないのか?」

ああ、あの崖ってそういう名前だったのか。

「あれは嘘で、これが本当らしい。ラードーンはこの土地を封印して、崖に見せていた、って言ってた」

「……や、やはり、ここが約束の地……」

驚き、言葉を失うスカーレット王女。

何となく状況が飲み込めてきた。

「魔竜」の「封印の地」は、ピクシー達にとって「神竜」で、王国に取っては「約束の地」という風に言い伝えに差があるってことか。

「実は、ここを開拓したいんだ」

「開拓?」

「ラードーンから頼まれたエルフ達の村を」

「エルフ!? 竜から……?」

「でも、大工が見つからないんだ」

「……」

スカーレット王女は「約束の地」を真顔で見つめた。

しばらくして、おれの方を向き。

「そなたが、魔法でなんとか出来ないのか?」

「建築系の魔法は覚えてないから……ん?」

「どうした」

「魔法……」

俺は少し考えた。

大工達は大抵、住み慣れた街から離れたがらない。

それを無理強いするのは俺も望まない――が。

一つ、上手く行きそうな魔法があった。

「……殿下、殿下は腕の良い大工を知ってますか?」

「腕の良い大工?」

「紹介して下さい。腕さえあればいいです、断られてもいいです、とにかく腕のいい大工を」

「ふむ」

ラードーンと封印の地ではなく、俺の話になった途端、スカーレット王女は落ち着き払って、俺をじっと観察するように見つめてきて。

「いいだろう」

と、俺の願いを聞き入れてくれた。

次の日、ジェームズの屋敷。

もはや通い慣れた部屋の中に、スカーレット王女ともう一人の男がいた。

男は背がものすごく低く、ヒゲがぼうぼうで。

目つきも鋭くて、力強さの塊――岩みたいな人だった。

「紹介する、宮廷技師のゴラク。見ての通りドワーフだ」

「ドワーフって、あの!?」

俺は驚いた。

噂には聞いていたドワーフにまさか会えるとは。

「どうしてもっていうから来てやったが……何の用だボウズ。わしは忙しい、とっとと話せ」

「忙しいんですか?」

「陛下の離宮の新築でな」

「なるほど」

「というわけで、そなたの注文通り、腕はあるが話を受けられないものを呼んできたが……」

どうするんだ? って顔をするスカーレット王女。

「使い魔にされると困るぞ」

「それなら大丈夫です……いきます」

俺は手をかざして、ゴラクに突き出した。

ゴラクは身構えたが。

「契約召喚――契約」

魔法の光がゴラクを包み込んで、収まった。

「契約召喚:ゴラク」

そしてもう一度唱える。

ゴラクの幻影を本人の前に召喚した。

「んな!」

「こっちを借りていきます」

「なるほど……考えたな」

スカーレット王女は称賛の口調と視線を俺に向けた。

宮廷技師であるドワーフ、その幻影を召喚出来るようになった。

これで、村は作れそうだ。