軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

435.次の段階

シーラは舞う。

散った火花、その一瞬に確認したのは魔法剣を持つ男と、猛獣の腕に変化した男。

そして弓矢をつがえる女と、魔法使いらしき杖を構える男女の二人組だ。

放って来た矢を魔剣リアムで切り払ったシーラは「ふふっ」と笑みをこぼした。

『どうした』

「毒ですわ」

『わかるのか?』

「魚の腐った臭いがしましたわ」

そう言いながら、今度は魔法障壁を張って、魔法を弾く。

見えはしなかったが、魔力の流れで氷魔法の類だと感じた。

『そうか、奇襲だから氷魔法か』

それに無詠唱か、と思った。

さっきのシーラの話で、この事に納得した。

これが炎か雷の魔法だったら放った瞬間分かるし、詠唱魔法なら威力は高いけど高まった魔力光でこれまたバレる。

そうならない為の氷魔法なのだろうと思った。

そして――。

『気をつけろシーラ、もう一人いる』

俺はシーラに警告した。

剣戟の閃光で確認したのは五人だが、魔力で感じ取れたのは六人だ。

どこかに一人潜んでいるはず、それを警告した。

シーラは舞った。

笑みを浮かべたまま剣士と切り結び、獣腕を避け矢を払う。

飛んできた氷魔法は魔法障壁で防いだ。

その場で、小さな範囲の中で円を描くように、舞うように戦った。

それは美しく思えた――が。

俺は不思議に思った。

シーラの戦い方らしくなかった。

彼女と初めて会ったとき、そして二回目に襲われた時。

その後も何回か小規模な戦いをみているが、こんな戦い方じゃなかった。

『何を――』

口に出した瞬間だった。

シーラはグンッ! と地面を踏み込んで急加速した。

前衛二人の「ーーっ!」という驚きの息づかいが聞こえた。

シーラは二人の前から消えたのだ。

そうだ、これだ。

はじめて会ったときも、その後も。

シーラは疾風迅雷とも言うべき超スピードを活かした戦い方をしていた。

それが一カ所にとどまっていることを俺は不思議におもった。

そんなシーラが急加速して向かった先は――魔法使い。

二人の魔法使いの背後に回って襲った。

瞬間移動に匹敵する速さに劣らぬ、超スピードの斬撃。

直後、ガキーン、と金属音がぶつかり合う音がした。

火花が散る、一瞬だけ映し出す。

そこにいたのは、全身黒ずくめの小男で、その男は逆手に あいくち(、、、、) をもっていた。

「見つかりましたわ」

『……おおっ』

一瞬考えて、状況を理解した。

どこかに一人潜んでいるのは分かっていた。

シーラは魔法使いを奇襲することで、そいつをあぶり出したのだ。

『今の一撃を防いだから、凄腕かな』

「ええ、ですが、ちぐはぐですわ」

『ちぐはぐ?』

シーラはまた超スピードで前衛二人のところに戻って、その二人と切り結んだ。

そうしつつ、俺に答える。

「光る魔法剣、威嚇にならない猛獣変化、見えない矢と魔法、私の命が最優先なのに仲間をかばう――全てにおいてちぐはぐですわ」

『あー……なるほど』

「一人一人は実力者ですが目的に最適化された組み合わせではありません――」

そういいながら、シーラがまだグンッ! と踏み込む。

魔法使いたちの緊張が高まる、剣士と獣腕の意識も向こうに一瞬移る。

そして――シーラは飛び出さずに、体勢を崩した前衛二人を袈裟懸けにきった。

剣士には切り下ろして、返す刀で振り上げて獣腕をきった。

一瞬で二人を切り伏せた。

「――敵ではありませんわ」

まるで勝利宣言のように、シーラは言い放った。

前衛が倒れてしまっては魔法使いも弓兵も満足に戦えない。

シーラは本来のスタイル、超スピードで襲撃するスタイルに戻って、魔法使いと弓兵を襲った。

初撃こそ黒ずくめの男に防がれたが、シーラのスピードはその男を遙かに上回り、正面で防がれた瞬間には背後に回って、魔法使いの二人を切り伏せていた。

そのあと激しく動揺した弓兵をも斬り伏せたところで、剣を下ろしてたちどまった。

見えないが、魔力が一人分、遠ざかっていくのを感じる。

『逃げていく』

「でしょうね、そういうスタイルの者でしたわ」

『それもわかるのか』

「直接攻撃に長けたタイプではありませんわ。闇に潜んでひたすらチャンスを待つか、全滅にならぬように一人生還するように動くタイプですわね。通常であればもうしばらくは警戒するべきなのですが」

『ああ、確実に遠ざかってる』

「すごいですわ、あの手の者は完璧に気配を消せるものですが、それもあなたにかかれば意味がなかったですわね」

『まあ、人間である以上は魔力が存在するから』

「決して消せない物ですわね。それもあなたしか出来ない事なのですけれど」

『この後どうする?』

「そうですわね……」

シーラは魔剣リアムを下ろしたまま、考える。

東の空が白み始める。

オレンジ色の太陽がその頭頂部をのぞかせる。

微かな光に照らし出される思案顔のシーラは、返り血を一切浴びておらず、綺麗なままだった。

「そろぞろ、次の段階に進むころですわね」

シーラは、確信めいた口調でそう言い放った。