軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

422.遠回りの理由

『お前よりも強い?』

「ええ。厳密に言えばクリムゾンローゼをもったわたくしよりも、ですわね」

『ああ、魔剣リアムじゃなくて魔剣クリムゾンローゼの方か』

なるほど、と思った。

そりゃそうだ、とも思った。

魔剣リアムを持っているときってほとんど俺の力を使って戦っている。

つまりは俺が戦っているのとほとんど変わらない。

力の強さもそうだがそれは自分じゃないというのも分かる。

だからシーラはクリムゾンローゼを持っているときの自分よりも強いんだといった。

「つまるところ、侵入者からすれば侵入した直後にクライマックス、入り口にラスボスがいたようなことになりましたわ」

『ちょっとやり過ぎたか』

「いいえ、問題はありませんわ。今回の場合撃退さえできればいいのですわ」

『なるほど。それはよかった』

「しかし……あなた」

『うん?』

「また、強くなってません?」

シーラは呆れ混じりに訊いてきた。

『魔力ならまあちょっとだけは』

「やはり」

『鍛錬してるからな』

「いつもわたくしのためにいろいろやって下さってますのに、いつ鍛錬の時間なんかありましたの?」

『ああ、俺じゃなくて本体の方』

「本体? 魔法都市にいる方ですの?」

『ああ』

答えてから、 これ(、、) は説明しないとわかりにくいなと思って、する事にした。

『ここにいる俺は【盟約召喚】で呼び出した俺の分身』

「ええ」

『【盟約召喚】と大元になった【契約召喚】のちがいって、盟約召喚の分身は常にオリジナルと繋がっていることだ』

「……なるほど。そしてオリジナルのあなたは常に鍛錬を怠らない、と」

『そういうことだ』

魔法都市にいるオリジナルの俺はラードーンと一緒にあれこれやって、それで魔力が更に強くなった。

オリジナルと繋がっているからその事はいつも頭に入ってくるが、シーラは――他人にはそんな事分かるはずもないか。

「その事がわかっているということは、オリジナルがしている事はいつも分かってらっしゃるということですわね」

『ああ。必要ならいつでも動くっていってる。ラードーンも、シーラのために動くのに結構前向きだ』

「ラードーン様が? 意外ですわね、あの方が人間に、あなた以外の人間に関わるのを前向きに思っているなんて」

『ツボってるらしいんだよ』

「ツボる?」

シーラはきょとんと首をかしげた。

『オリジナルの俺とラードーン、それとすごく似てる形のシーラと魔剣リアム。ラードーンは自分と同じことをしてるこっちの俺がどうなってるのか、何をしてるのか、それが結構気になって、なんなら関わりたいとか思ってる』

「そういうことでしたのね。本当に神竜様に好かれてるんですのね、あなた」

『そういうことになるのかな』

シーラにそんな事をいわれて、かなり面はゆかった。

ラードーンに気に入られているのは嬉しいことだし光栄なことでもあるけど、それを改めて指摘されると恥ずかしさもかなり感じてしまう。

『えっと……どうする?』

「何がですの?」

『ラードーン。あの様子だとたぶん呼べばすっ飛んできそうだけど』

「うーん」

シーラは思案顔で、深く考え込んだ。

しばらく考えてから、

「丁重にお断りしますわ」

『そうか。別にいいけど、逆にいいのか?』

「たしかにラードーン様が参戦すればすぐに方がつくでしょう。あの方、かつては七日間で世界征服してしまったようなお方ですから」

『そんな事をやってたのか?』

俺はびっくりした。

今のラードーンか、前世のラードーンか、はたまた前々世のラードーンか。

どのラードーンなのかは分からないが――まあ、やっていてもおかしくはない、むしろ妙に納得するなと思った。

「ええ、やってましたわ。ですのですぐに方がつくでしょう――けれど」

『けど?』

「それでは面白くありませんわ」

『面白くない?』

「ええ。ふふ……白状してもよろしくて?」

『え? 何を?』

「わたくしがいま、傍から見て迂遠なことをしている理由。気になりませんでした?」

『うえん?』

「遠回りしていると言う意味ですわ」

『そういうことか。それは……いや、ないな』

気になるかならないか、っていったら……今まで気にしたことはなかった。

「あら、そうなんですのね」

『理由が他にあるってことだろ? それを感じた事もなかった』

「なぜですの?」

『だってシーラ、いつも目的はっきりしてるだろ? 目的がはっきりしてるから迂遠? だとか思った事は一度もないな』

「あら」

シーラはクスッとわらった。

「なんか褒められたような気がしますわ」

『すごいとおもってるよ。いつも』

「あらあら……」

シーラはますます笑顔になった。

「悪い気はしませんわね」

『そうか。まあ、そういうことならラードーンには出番はないって伝えとくよ』

「ふふっ、本当に興味が無いんですのね」

『え? ああ……遠回りしていることか』

俺は苦笑いした。

シーラに指摘されるまで気づかなかった。

彼女が遠回り――迂遠なことをしている理由。

話の途中で忘れてしまうくらい、本当に思った事もなければいまは正直気にしてない。

が、ここまで来たら聞いた方がいいというのもさすがにわかる。

『なんでなんだ?』

「あなたのせいですわ」

『俺のせい?』

「ええ、びっくり箱のように次から次へと魔法を生み出すあなた。次はどうするのかな、また新しい何かがでてくるのかな。その興味が」

『そうだったのか』

それをそんなに期待されているとは思いもしなかった。

それならもっと、期待に応えてやらねばとおもったのだった。