軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

41.瞬間移動

俺はアナザーワールドの中にはいった。

同時魔法の最大数が増えたように、アナザーワールドの中の広さも一段と広がっていた。

今なら、外にいるエルフ達が全員入る位広くなっている。

もちろん入るだけだ、全員が住んだり、くつろいだりするには程遠い。

それでも、魔力の上昇がはっきりとした形になって見えるのは嬉しいことだった。

俺はアナザーワールドから出た。

表では、エルフ達が家を建てている。

木を地面に突き立ててとんがり帽子のような形にしてから、その上に草を束ねたものを置いていくという。

家と呼ぶにはあまりにもお粗末なものだった。

「レイナ」

俺は指揮をしているレイナに後ろから近づき、呼びかける。

レイナは慌てて振り向いた。

「使者様!」

「あー、その使者様はもういい。俺の名前はリアム、名前で呼んでくれ」

「わかりました。みんなー、これからはリアム様ってお呼びするのよ-」

「「「はーい」」」

家を建てているエルフ達が一斉に返事をした。

みんな、かなり素直だ。

いやそれよりも――俺は一応完成したっぽい、目の前の家に目を向けた。

「こうなったか」

「すみません……家を建てるのはどうしたらいいのか分からなくて……」

「いや、謝る事じゃない。家を建てるのは大工の仕事だからな、専門家じゃなきゃこうなるってわかるべきだった」

俺はあごを摘まんで、考えた。

さすがにこんなところに住まわせてしまうのはかわいそうだ。

家を建てたりするのは金がかかる、さて、どうしたもんか――

「きゃああああ!? やめてええええ!」

「――っ!」

いきなり悲鳴が聞こえてきて、ビクッとなった。

まわりのエルフ達もだ。

全員の体が強ばって、おそるおそるって感じで悲鳴の方に一斉に視線を向けた。

俺はかけ出した。

悲鳴の方に向かって走っていく。

「あっ! リアム様!」

レイナの声を振り切って、悲鳴の方に向かって行くと、一人のエルフが、数人の男につかまっているのが見えた。

男達は武装している。冒険者のような風体だが、なんというか……下品な感じだ。

「へへへ、ここでおっきな戦いがあったから、金目の物を拾いに来たが、こんな値打ち物に出会えるとはな」

「まったくだ、このエルフ一匹で、ハンターどもの落とし物100人分に匹敵する金になる」

「売り飛ばす前に味見してみねえか」

男達はそういって、一斉に下卑た笑いをして、森の中に大声をこだまさせた。

どうやら、戦場跡で遺品を漁る類の、ハイエナのような人間達だ。

「その子を放せ」

「ああん?」

男達がこっちに目を向けてきた。

「なんだ? ガキか?」

「おいボウズ、正義の味方ごっこならよそでやんな」

「これは大人の世界の、仕事なんだよ」

男達はまた一斉に笑った。

つかまってるエルフを放すつもりはまったく無いようだ。

「リアムさまぁ……」

つかまってるエルフは泣きそうな顔をした。

「そんな顔をするなスージー、すぐに助けてやる」

「は、はいっ」

俺につけられた名前を呼んでもらえて、恐怖が大分引っ込んだスージー。

一方で、ハイエナ達は逆上した。

「おいガキ、大人を舐めるなつったろ――」

「マジックミサイル!」

会話が成立するような相手じゃない、俺は速攻で魔法をぶっ放した。

無詠唱からの、マジックミサイル17連。

17本のマジックミサイルが一斉に男の一人を吹っ飛ばした。

「ぶごえっ!」

男はふっとび、空中でキリモミして回転した後、地面に叩きつけられた。

手足が曲がっちゃいけない方向に曲がって、泡を吹いてけいれんしている。

「てめえ!!」

「舐めやがって!」

残ったハイエナ達がスージーを突き飛ばして、一斉に俺に飛びかかってきた。

二人とも、安物っぽいロングソードを抜いて斬りかかってくる。

「契約召喚――リアム」

俺は自分の幻影を召喚した。

「なっ!」

「ふ、二人になっただと」

「「マジックミサイル」」

二人同時に、無詠唱マジックミサイル17連を放って、残ったハイエナの二人をぶっ飛ばした。

圧倒的な数のマジックミサイルが男達に次々と当って、その体は空中で踊るように跳ねて、地面に墜落して、泡を吹いてけいれんした。

「すごぉい……」

ハイエナが全員倒れたのとほぼ同時に、他のエルフ達も駆けつけた。誰かがそうつぶやいた。

俺はエルフ達を見た、そして、倒れているハイエナ達を見た。

「ここは……危険だな」

エルフはお金になる、というのを俺は何となく知っている。

奴隷市場とかだと、エルフは常に「時価」だからだ。

彼女達の村を作らせようと思ったが、ここに置いていくのは危険すぎる。

連れて行くしかない。

俺は少し考えて、自分の幻影を解いて、代わりにアナザーワールドを使った。

「みんな、ここに入ってくれ」

「えっと……どうしてですかリアム様」

エルフ達を代表して、レイナが俺に聞く。

「ここは危ないみたいだ、安全なところに連れて行くから、入れ」

「わ、わかりました」

ハミルトンの屋敷に帰宅して、いつもの林に戻ってきた。

そこで、再びアナザーワールドを開いて、中に首を突っ込む。

広くなったアナザーワールドの中に、エルフ達がわらわらいた。

「着いたぞ、出てこい」

「着いたって……」

不思議がりながらも、率先してアナザーワールドから出てくるレイナ。

「ええっ!?」

彼女は驚愕した。

まわりを見回して、何故か鼻をスンスンとかさせたりして。

「ぜ、全然違うところ……どうして? なにがどうなったの?」

驚くレイナ。

他のエルフたちも同じように、アナザーワールドから出てきて、環境の変化に驚いていた。

「わかるのか、場所が変わったのが」

「はい、全然違うところです……」

「その魔法でみんなを運んだんだ。ここなら安心だから」

貴族の屋敷、その敷地内だ、少なくともハイエナに狙われる心配はない。

「私達を魔法一つで運んできたの……?」

レイナを始めとする、エルフ達全員は。

アナザーワールドを応用した、彼女達からしたら瞬間移動のような出来事を。

驚きと、感動の目で俺を見つめていた。