軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

400.方向性

『どういうものだとシーラにとって都合がいい?』

「そうですわね……」

頬に指をあげて、思案顔のシーラ。

少し考えて、探るような口調できりだした。

「今までの水車小屋の問題点は――大きくは二つありましたわ」

『ふむ』

「一つは領主――つまりはわたくし側。設置し、利用税を取っているとはいえ、支払いが滞っていてもそれなりに使い続ける事ができましたわ」

『ああ、確かに』

そういう話を聞いたことがあるのを思い出す。

「税が滞納されているからといってすぐに使えなくするのは難しいですわ。監視をずっと置いておくわけにもいきませんし、破壊してしまうなんてのはもってのほか」

『ふむ』

「ですから、税が滞納されている――いいえ、天災の場合もありますわね。とにかくこちらの一存で止められるような仕組みがいいですわね」

『なるほど』

シーラの言葉を頭の中でかみ砕いて、魔法で実現する形を考えて行く。

「いかがです?」

『ざっと三つくらいやり方を思いついた』

「もうですの? 相変わらずすごいですわね……」

シーラは目を丸くした。

感心したやら、呆れたやらのそういう感じの顔だ。

『もう一つの問題点は?』

「これは使う側、領民側の話なのですけれど……水車小屋となると、どうしても川の水量に影響されますの」

『あー……』

なるほど、と思った。

その先の話は俺にもわかった。

『確かにな。雨が少ない季節だと使い物にならないよな。増水したらしたで微妙につかいにくくなるし』

「よくご存じですのね」

『あー、まあ。なんとなく』

リアムになる前の事をいうわけにも行かないから、適当にごまかしておいた。

『そうだな、季節や天気に影響されることなく、ずっと同じ力でまわり続けるのがいいな』

「それはどうですの?」

『すでに半分できてる。むしろ上限をつけなきゃって感じだ』

「上限?」

『今の人造精霊だと、例えば収穫祭とか、住民が日常よりもハッスルした時に、その力の分回る力もはやくなってしまうんだ』

「なるほどですわね」

『そういうのも関係なく常に同じ力で、ってのがいいんだよな』

「ええ、そうですわ」

『そうか……』

なるほどと思った。

それの改善はすぐにできる。

何か新しい事をするわけじゃない、新しい発想が必要な訳じゃない。

必要以上に回らないようにブレーキをかけるだけの話だ。

片手間ですぐに出来てしまう程度の修正だ。

「難しいんですの?」

『え? いや、そんな事ないけど』

いきなりなんだ? と不思議がった。

すると、シーラが俺――魔剣リアムをのぞきこんできてるのが見えた。

身を屈んで、斜めしたからのぞきこむ。

まるで小柄な子供をしたからのぞきこむような態勢だ。

シーラの体格に合わせて作った剣だから、自然とこの魔剣リアムのサイズはシーラよりも小さくて、子供くらいの大きさしかない。

サイズ感から「のぞきこまれる」のはおかしくないが、それが「剣」に対するリアクションというのがちょっと面白かった。

そんな風に俺が面白がっているのを知ってか知らずか、シーラは不思議そうな顔でのぞき込み続ける。

『普通にできるぞ、むしろ片手間でできる程度だ』

「ですがなにやら考え込んでいましたわ?」

『え? ああ……』

確かに考え込んでいた。

シーラがのぞきこむというのに気づかないくらい考え込んでいた。

しかし、考えていたのは魔法の事じゃなかった。

『そうじゃなくて、有難いなって思って』

「ありがたい……ですの? 何に対して」

『シーラに』

「わたくしに?」

きょとん、と不思議がるシーラ。

まるで幼子のようなキョトン顔、彼女が普段中々見せないような顔だ。

『ああ。普段の俺はまずやって、それで失敗して、修正して微調整をやってきたんだ』

「さきほどもそうだと?」

『ああ』

「あれは別に失敗というわけではありませんが……それがどうしたんですの?」

『シーラがいると、最初から方向性が絞られる。例えばそうだな……』

俺はそういい、魔法の腕を伸ばして、地面から土を掴んだ。

そしてもう一本の腕をだして、少し離れた地面に丸を描いた。

その土を俺の真上に放り投げた。

真上に放った土は拡散して、俺の周辺360度にひろがって、地面におちる。

土の一部が、丸の中に入る。

『普段の俺はこう』

そういって、もう一度同じ分量の土を掴む。

それを今度は、丸を描いた方角にむけて投げる。

土が同じように空中で広まって、地面に落ちる。

投げる方向を絞った分、丸の中に入った土の量が先よりも多くなった。

『シーラが方向性を絞ってくれるとこんな感じになる』

「当てずっぽうよりはいいということですのね」

『そう感じてる』

「ラードーン様はそうしてくれなかったんですの?」

『ラードーンはむしろ、無軌道なのを面白がって見てる』

「そうですの」

『シーラのおかげで新しい魔法の方向性が絞りやすくなって、たすかってる』

「礼を言うのはこちらなのですけれど……どういたしましてですわ」

シーラはほほ笑みながらそういう。

そうして、俺はシーラの言葉を基に精霊を改善する。

シーラの言葉で、水車小屋に変わる完璧なものを作り出す事に成功した。