軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

389.ラードーンにそっくり

「腹案はもう思いつきまして?」

『ああ、実用性のあるものだと4種類くらいは』

「さすがですわね」

シーラはそういいながら、魔剣リアムの力の一つ、綺麗な髪を黒く染め上げた。

『あれ? なんでそれを?』

「わたくしもいま思いついたのですわ」

シーラはそういい、またにやり、と口角を持ち上げる。

「魔王のしもべ、魔王軍の別働隊。そのように認識されるために振る舞ってはいますが、兵はただの人間」

『そうだな』

「であれば味方の兵にも恐怖をある程度もっていてもらった方がいいですわ。少なくとも『敵じゃなくて良かった』と心から思われる程度には」

『なるほど、すごいな、すぐに思いつけるなんて』

「……あなたのそういう所が本当ずるいですわ」

その事を一瞬で思いつけるシーラの事を本当にすごいと思ってそういったが、何故かそれでシーラは唇を尖らせ拗ね顔になってしまった。

『どういう意味なんだ?』

「褒めるのが下手という意味ですわ」

『そりゃ……下手だと思うけど』

自分で言うのもなんだけど、魔法以外の取り柄がない男だ。

褒めるのが上手いか下手かは今まで考えた事もなかったけど、そういう意味じゃ下手で当然だと思う。

思う……が。

シーラの口調からしてどうもそれは額面通りの言葉じゃなさそうだなとも感じる。

一体何だろうか……。

「それよりも、あなたが思いついた中で一番自信があると思うのはどんなものなのです?」

『え? ああ、いくらやっても殺せない技か武器――兵にも配ればいいけど、それじゃこっちの被害が大きくなるからシーラだけが使える技の方がいいだろうな』

「どういう事ですの?」

『結果的に殺さないから、重傷をおっても反撃されるからこっちの被害がちょっと増えるんじゃないかって』

「そっちはわかりますわ。いくらやっても殺せない技というのはどういう事でして?」

『ああ。わるい』

やっぱりシーラは賢いと思った。

俺の説明を聞いて、一瞬でそこまで理解ができたみたいだな。

『そうだな……あくまでイメージだぞ?』

「ええ」

『肉を長時間煮込んだとして、肉はとろとろに崩れるけど、骨は大して変わらないだろ?』

「そう……ですわね」

『うん?』

なんだその間は、と思ったがシーラはすぐに。

「見栄を張りました。料理はしないので分かりませんわ」

と、すぐに言い換えた。

『そりゃそうか。姫様だもんな』

「ええ、しませんわ」

『じゃあ……別に火でもいい。火葬って肉は燃えるけど骨は残るだろ?』

「それはそうですわね」

『つまり火は骨に効かない、ああ――』

「あくまでイメージ、ですわね」

わかってましてよ、とシーラはにこりと微笑む。

『そう、つまり肉はやれて骨はやれない技。生命力を数値にしたとして、重傷の所まではやれるけどそれ以上は致命傷の所まではやれない、って感じのヤツ』

「それを私が使ったとして……いくら全力を出しても――」

『致命傷は与えられない。シーラは手加減に神経をすり減らさなくてもいいってこと』

「それでいてわたくしが斬り伏せた兵は常に重傷止まりで、足手まといになる」

『そういうことだな』

「つくづく……すごいですわね」

『シーラの強さがあってこそだ。いっただろ? 一般兵にまで下ろすと被害が増えてしまうって。その分シーラなら重傷までいった相手の最後っ屁にやられるほどヤワじゃないだろ?』

「中々の殺し文句ですわね。そう言われると是が非でも応えたくなってしまいますわ」

『シーラの力なら普通にやってれば大丈夫だろ』

「……あなたは本当に褒め方が下手ですわ」

シーラはまたあの妙に意味深な言い方をした。

本当になんなんだろうなと疑問がますます深まった。

「それはどれくらいで作れるんですの?」

『もうできてる』

「……呆れた、話している間に作っていたんですの?」

『ああ』

「あなた、ますます魔力とか上がっているのではなくて?」

『そりゃそうだろ』

「あら?」

『だれでも同じことをつづけてたら慣れてくし上手くなる。魔法も例外じゃない』

「そういうレベルの話ではないのですけれど……まあいいですわ」

じゃあどういう意味なんだろうかとおもったが、シーラはそれ以上なにか言うつもりはなさそうだから俺も訊かない事にした。

「早速それを下さいまし」

『ここでいいのか?』

「善は急げ、といいますわ」

シーラはそういい、完全に立ち止まった。

髪の色も元にもどして、魔法習得に全力を注ぐ態勢にはいった。

それならやめさせる、やらせない理由もないと、俺は作ったばかりの魔法を指輪という形の古代の記憶にして、シーラにわたした。

シーラはそれを受け取って、両手で大事にかかえ持つようにして、目を閉じて意識を集中させた。

おそらく外部への意識を完全に遮断している状態だろう。

俺もそうだけど、一点に集中すると自然とそういう感じになってしまう。

そういう時は本当にまわりの事は何も目に入らなくなってしまう無防備な状態だ。

だから俺はシーラの代わりにまわりを警戒した。

何があってもいいように、何が来ても良いように。

そう、まわりを警戒した。

『むっ……これは。兵だな、数は300。武装は……このかんじはジャミール軍か』

警戒の為に全方位に広げた索敵の魔法に敵の一団が引っかかった。

数キロ先にいる敵兵で、今はまだ肉眼では見えないが、こっちにまっすぐ向かってきている。

進み方からして戦う気にはなっていないが、それでもシーラと遭遇したら自然とそうなるだろう。

シーラをみる。完全に魔法習得に意識が向いていて外の声が聞こえないであろう様子。

念の為に索敵を更に広げたが、その300人の部隊しかいなかった。

『帰ってもらうか』

俺はそういい、 外に出た(、、、、) 。

魔剣リアムから外に出て、人間の姿になった。

【盟約召喚:リアム】という人間の姿にもどって、それで敵兵300人を追い払おうとした――が。

「そうか、恐怖か」

そのキーワードを思い出した。

シーラがここしばらくこだわっているキーワード。

俺でも――いや、俺だからこそ。

そのキーワードに乗っかった方がいいとおもった。

魔法陣を広げ、無駄に魔力を放出して、見た目をおどろおどろしくする。

魔王リアム。

魔剣リアムから顕現した魔王リアム。

そのイメージで敵の部隊に向かって飛んでいった。

300人程度の部隊だったから、簡単に追い払えた。

作ったばかりの手加減魔法【ホールバック】を乗せて、巨大な【パワーミサイル】をたたき込んだ。

その結果、一撃で300人の部隊は纏めて吹っ飛んで壊滅したが、魔法の効果で全員が重傷者に留まった。

「……ああ、そうか。回復もつけた方がいいのかもしれないな」

全員が重傷者、つまり救助できるものはいない。

普段使いでも救助が間に合わないこともある。

攻撃そのもので死ななくても、重傷が元で死ぬ事もある。

ならば、重傷で止める効果と、重傷から「先」に行かない効果、回復効果もつけた方がいいと思った。

そしてそれは見えないように、悟られないようにした方がいい。

「……よし」

やっぱり実際に使ってみないと分からないよな。

と、俺は魔法の改善点を見つけて、身を翻してシーラの元に戻る。

戻ってくると、さっきまで魔法の習得に専念していたシーラが、はっきりとした眼差しでもどってくる俺をみつめていた。

「どうしたんだ?」

「さすがに気づきますわ」

「ああ、そうか。わるかった」

「いいえ、いいものを見せてもらいましたから」

「いいもの? 戦うところみえたのか?」

「そうではありませんわ」

「?」

「あなたがわたくしのところから出ていくすがた、あなたのところからでていってフォローをするラードーンの姿にそっくりでしたわ」

「なるほど」

それならハッタリと恐怖という意味では大成功だったな、と。

俺はその事に満足した。