軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

381.白は200種類

宮殿の中庭。

今や優に百人は超す数のダークエルフを全員集めて、バラを渡した。

ダークエルフ達に一人ずつ、手ずから白いバラを渡す。

それを受け取った瞬間、それぞれがそれぞれの色に変化した。

「綺麗……嬉しい……」

全員が、もらったバラに感動し、心の底からの嬉しそうな顔をした。

そうやってほぼ全員に渡して、今やクリスやレイナと同じように、押しも押されぬダークエルフのリーダーとしてのポジションを固めたグレースだけが残った。

グレースと向き合って、まったく同じように用意したバラを差し出す。

「最後になったけど……はい」

「あ、ありがとう」

既に同族達が受け取っている所を見ているグレースは、見るからに緊張した面持ちで、胸を押さえて深呼吸してからバラを受け取った。

緊張と期待の中受け取ったバラは――。

「白い……まま?」

何故か白いままだった。

どんな色なのかを期待していたっぽいグレースはその結果に驚き、戸惑った。

「こ、これは……?」

驚きと戸惑いが先に来て、やがて焦りも加わって後から追いついた感じで、グレースが俺に聞いてきた。

俺も困っていた。

「失敗作か? じゃあこれ」

失敗したつもりはないがそうかもしれないと思い、多めに作った予備の一つを渡した。

新しい白いバラを受け取ったグレースだったが、それも最初のものと同じで、白いまま変化しなかった。

「なぜ……」

絶句して、泣きそうな顔をしてしまうグレース。

するとそれまで各々が自分のバラで嬉しそうにしていたダークエルフ達が何事かと集まってきた。

「どうしたの?」

「グレースのバラが白?」

「自分の色になってないの? なんで?」

俺とグレースが感じた疑問を代弁するかのように、口々に騒ぎ出すダークエルフ達。

「私では……ダメなのか?」

「いや、そんな事はない。各々の才能を判別診断する魔法を応用したものだから、良い悪いじゃない、何かしらには変わるものだ」

「で、では!?」

才能判別の魔法はグレースも受けていてしっている。

それをベースにしたものなら、自分も何かしらの変化はあるだろうと理解できたが、その分余計に今の「変化のない」状況への疑問が深まったようだ。

『ふむ、そういうことか』

「何かしってるのかラードーン!?」

ラードーンが口を開いた。

今の俺達にはまるで天啓のような言葉で、俺はすぐに食いつき、俺がラードーンとこういう風に話せることを徐々に飲み込みつつあるダークエルフ達も、一人残らず固唾をのんで俺とラードーンのやり取りを見守った。

『人間が行った色の分類はかなり雑なものだ。一言に白とか、黒とか、赤青黄とか言葉にした所で細かい違いはあるのはわかるだろう?』

「ああ」

『中でも白は特に多くてな、我の――ドラゴンの目では白は200種類あると見分けられる』

「白が200種類!?」

『ふふっ、おかしいか? 人間より感覚が鋭いだけの話なのだが』

「ああ……なるほど」

そう言われるとなるほどとしか言いようがなかった。

ドラゴン――神竜であるラードーンが人間より「見えるものが多い」と言われては納得以外しようがない。

「まてよ……ってことは」

俺はすこし考えて、グレースに振り向いた。

「グレース!」

「な、なんだ?」

「じっとしててくれ」

「え? ああ、わかった……」

何をされるのか分からないが、それでも俺のいう事ならば、と。

そういう感じがはっきりと分かる顔で頷いたグレース。

俺はもう一本、変化前の白いバラを取り出しながら、魔法を唱えようとする

「【チェンジオルガン】……ええい全員だ!」

グレースに、と思いかけて、ダークエルフ達全員に魔法をかけた。

俺の手から放たれた魔法の光がみんなのからだを包み込んだあと、その光がそれぞれの目に吸い寄せられるように集まっていった。

ほとんどのダークエルフは何が起きたのかわからないままきょとんとしていた。

「ああっ!?」

グレースが真っ先に声をあげた。

悲鳴のような、しかしその中にはっきりとした歓喜の声が混ざっている叫び声だった。

グレースが自分が持っている「白いバラ」と、俺が持っている「白いバラ」を交互に見比べた。

見比べて、呆然として、やがて徐々に嬉しさが顔にで始める。

『何の魔法だ?』

「変身系の応用だ。全身を変化させるんじゃなくて、体の一部を――今回は目をドラゴンのと同じものに変化させた」

『なるほど、我と同じ見え方にしたのだな』

「ああ」

ラードーンに説明していると、グレースに少し遅れて、他のダークエルフ達も俺とグレースが持っている白いバラをみて驚き、ざわめきだした。

俺は魔法をかけていないから違いが分からないが、そもそもラードーンが言っているから違うのは分かっている。

「リーダーの白、綺麗……」

「いいな、そんなのをもらって」

「ちがう、リーダーの本質を王様が見せてくれたんだ。綺麗な白はリーダーだから」

口々にそんな事を言い合うダークエルフ。

全員が嬉しそうか羨ましそうな顔をしていて。

グレース本人はといえば、自分の「白」に感動して涙をぽろぽろと流していた。