軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

372.腹が減っては

次の日、俺は宮殿――自分の家にスカーレットとブルーノを呼び出した。

宮殿の応接間に呼び出された二人は何をいわれるのだろうか、という顔で俺を見ている。

「二人の意見がほしくて、シーラの――というか、ジャミールとキスタドールとの戦争に確実に勝つにはどうしたらいいのかを聞きたいんだ」

俺がそう来るかと、スカーレットとブルーノは一度かおをみあわせてから。

「陛下が直々に敵軍を殲滅すれば」

「主が直々に敵軍を殲滅すれば」

と、声を揃えて答えた。

「えっと、それは無しで」

勝てるかどうか分からない、とは言わなかった。

「あくまでシーラの戦争ってことにしたい。俺が裏にいるのはいいけど表にはシーラを立たせたい」

「それでしたら……」

「……食糧、でしょうか」

二人は考えて、ブルーノが先に答えた。

「どういう事だ兄さん」

「私もブルーノ様と同意見です」

「スカーレットも? そんなに大事な事なのか」

「腹が減っては戦ができぬ、とは古来よりある言い回し。どの時代のどの国でも似たような言い回しが存在していたほど大事なことです」

ブルーノがそう言い、俺は「なるほど」と頷いた。

「兵の腹を満たすのは最低限の条件として、それ以外でも温かい物を食べさせること、食べた物で腹を下さぬ事。これらが大事です」

「保存食の中には、長持ちするけどしっかり処理せずに食べてしまうと腹を下す物もあります。炊いた米を干した物などが代表的な物です」

「そうなのか?」

「はい、腹を下せばそれだけで体力がおちますし、それによって疫病がまわりに蔓延することもあります」

「ですので、腹が膨れ、かつ、腹を下さないものを安定して大量に用意することが重要な事でございます」

ブルーノとスカーレットはまったくの同意見だったから、二人は息の合った語り口で食糧に必要な事とその重要性を力説してきた。

「そういった意味では、陛下が開発された乾麺――即席麺は完璧に近いものでした」

「あれか」

「かなり長きにわたって保存でき、食べるときはゆでて温かくなる」

「そうだったな」

「そうですね、あれはほぼ完璧です。ゆでればいい、という誰でも出来るのも大きいです。大量に水が必要なのが玉に瑕ですが」

「水が大量にいるとダメなのか?」

「水の運送の問題がでてきます」

「……ああ」

なるほど、と思った。

確かにそうだろうな、と言われて納得した。

戦争において水が大事なのは聞いた事がある。

水がなくなってまける話も聞いたことがあるし、そもそも水の運びづらさは前世の時から知っている。

あの即席麺だと大量に水がいる。

日常ならば問題ないが、戦地ではそれがかなり大変になってしまう。

「つまり――」

俺は二人から聞いた話をまとめた。

「長く保存ができて、食べるときは温かい状態に簡単になる、ものがいいんだな」

「主はその事を解決しようとしておいでですが」

「うん? うん」

「実際に使う時は魔法なしで食べられるようにすることが重要になると思います。末端の兵士で魔法を使える者の方がすくないですし、魔法が使えてもその魔力を食事ではなく魔法に使った方がいいとなります」

「ああ、なるほど。それも即席麺のいいところか」

「はい、火をおこして湯を沸かす――のは大抵の人間ができますので」

「そうか……」

追加の条件を頭のなかでまとめた。

複数の条件を満たすもの――それをまず頭の中で形にしていく。

「連日で来てもらって申し訳ない」

次の日、同じ宮殿の応接間の中。

前の日と同じように、ブルーノとスカーレットの二人を呼び出して、向かい合って座った。

「私達を呼び出したということは、もしや……」

「ああ、試作品ができたんだ」

「おお、さすがは陛下」

「主ならばすぐにと信じておりました」

二人のむずがゆくなってしまう言葉に苦笑いして、俺は手の平に載る程度のちいさな箱を二つ、二人の前に差しだした。

「これがそうでございますか?」

スカーレットが聞いてきた。

「ああ、まだ試作段階だから適当な箱に、炊いただけのメシを詰めただけだ」

「……ということは」

「この箱が重要で、中身がどうこうではない、ということでしょうか」

「兄さんの言うとおりだ」

「開けても大丈夫でしょうか」

「ああ。作ってからダストボックスで一時間おいたヤツだから、これで一年保存したもの、ってことになる」

「かしこまりました」

「拝見致します」

スカーレットとブルーノはそういい、箱をあけた。

箱を開けた瞬間、パリーン、と何かが弾ける音と、魔力の粒子があたりに飛び散った。

そして、箱の中から白いメシが顔をのぞかせた。

いま湯気が立ちこめている白いメシ。

「おお、これは!」

「湯気が……一年間放置したとはとても思えない!」

「さすがは主!」

二人は口々に箱のこと、俺が作った試作品のことを褒めちぎった。