軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

364.超合金

あくる日の昼下がり。

街が地平線の向こうで霞むほど離れた距離の岩山の中にやってきた俺は、朝から様々な鉱物や原石を掘り出しては、それをそのまま試したり、あるいは魔力を加えて性質が変化するかどうかを試したりしていた。

それを朝から没頭し続けた。

『そろそろ日没だな』

ふいに、ラードーンがそんな事を言ってきた。

掘り出した新しい原石を一通りテストしおえたところで、集中力がちょっと切れたところでその言葉が聞こえてきた。

「日没?」

ラードーンの言葉に反応して顔をあげる――が、日没なのかどうかまったく分からなかった。

山を掘り進めていった結果、気がつけば山の「中」にいた。

まさしく炭鉱といった感じで、地中深くまで掘り進めてて、日没かどうかがまったく分からない状況だ。

「【リアムネット】――ああ、本当だ」

【リアムネット】の応用で、街の景色が、今の光景がどうなのかを見ることができる。

ここ最近すっかり人間の街に遜色のないレベルでいろんな建物が建ってきた町並みは、夕焼けの茜色にそまっていた。

「半日近くやってたのか」

『何をしていたのだ?』

「アオアリのアレみたいなものを探してたんだ」

『アオアリのアレ……熱を蓄える性質の事か?』

「そう」

そういいながら【スプラッシュ】と魔法を唱えて、湧き上がった水流で土に汚れた手を洗った。

「アオアリの土は熱をほぼ無限で蓄えられる性質をもってるだろ? あんな感じでほかのものとか力とか、それらを蓄えられるなにかがないかなって」

『ふむ……掘り出したものにいちいち力を加えていたのはなぜだ?』

「実は……【アイテムボックス】」

魔法を唱えて、何でもため込んでおける空間のなかから備蓄分のハイ・ミスリル銀を取り出した。

『ハイ・ミスリルか。それがどうした』

「このハイ・ミスリル銀って魔力をある程度溜めておける性質がある」

『うむ、多少はあるな。アオアリのアレにくらべれば微々たるものだが』

「で、ため込んだはいいものの、溜めたのを使う時はため込んだ分より大分目減りするんだ」

『うむ、それに限らずほとんどの「備蓄」はそうなるものだ』

「この前偶然気づいたんだけど、こいつが冷たいとき、目減りの度合いが減るんだ」

『ほう?』

おもしろい、とラードーンが言ってそうな、そんな反応だった。

「それでかなり頑張って冷やしてみたら、冷やせば冷やすほど、溜めた分に対して使える分の割合があがっていった。最終的に全力で冷やせば目減りが一切なくなる、100%で使える状態になった」

『なるほどそれは面白い――が、使い物にならんな』

ラードーンは愉しげに、からかい混じりにいった。

『お前クラスの魔法使いが全力をだすようでは、目減り分よりも冷やすための魔力のほうが大きかろうな』

「そう。でも、それはいいんだ。問題は冷やしたり熱したりすると性質が変わることがあることだ」

『それで掘り出す度にあれこれ試していたというわけか』

「そういうこと」

説明が終わって、ラードーンも理解できたから、俺はハイ・ミスリル銀を再び【アイテムボックス】の中にしまった。

「残念だけど今日は何も見つからなかったな。一日程度じゃそんなもんだろうけど」

『純粋な物質はむずかしいだろうな。合金なども視野に入れるべきだろう』

「合金?」

俺は訝しんだ。

聞いた事のあるような、ないような言葉がでてきてややとまどった。

『複数の物質を混ぜてつくる金属のことだ』

「そういうのがあるのか」

『相変わらず魔法以外の事になると途端に能力が低下するのが面白いな』

「あはは」

『人間で一番身近なものだと鋼だな、アレは鉄に純度の高い炭を混ぜ込んでつくるものだ』

「そうだったのか!」

『あれこれまぜて別の性質のものを作り出すことは珍しい話ではない。お前が知らないだけでさまざまな合金が身近にあるし――』

「あるし?」

『合金以外でもいろいろあるぞ。卵の黄身と白身を混ぜたり、小麦粉も水と混ぜたり場合によっては繋ぎになる何かを入れたり』

「……おお」

『酒なんかも、純度次第で味がまったくことなるだろ?』

「たしかにそうだ……そうか、混ぜるのか」

その発想はなかった。

いや卵だったり小麦粉だったり酒だったりと、ラードーンが半ば冗談っぽい声色であげた例はどれもこれも普通に日常生活の中で接する機会があってなんとなく知ってたものだけど、それとこれとはつながってなかった。

「……」

俺は少し考えて、また、【アイテムボックス】を唱えた。

【アイテムボックス】の中から再びハイ・ミスリル銀と、アオアリの巣を取り出す。

ハイ・ミスリル銀を粉々にくだき、同じように粉々にしたアオアリの巣――土と混ぜた。

ただ混ぜただけじゃお互いボロボロとこなの状態だったから、水を加えて混ぜた。

「なんか粘土みたいになったな」

『ならば焼成してみるのがいいのではないか』

ラードーンは愉しげにそういってきた。

それをうけて、今度は【精霊召還:サラマンダー】と【精霊召還:ノーム】を唱えた。

魔法を覚えたてのころ、このコンビでいろいろと焼いたのを思い出す。

「ノームはこれを包み込んで、サラマンダーは焼いてくれ」

あの時と同じように頼むと、召喚された二体の精霊は言われたとおりにハイ・ミスリル銀とアオアリ土を混ぜたものを密閉して焼きはじめた。

合金というものは焼くのにどれくらいの時間がかかるんだろうか。そもそもこの焼き方でいいのだろうか。

と、そんな事をおもっていると。

『……ほう』

ラードーンが、さっきまでとは違うタイプの「面白そう」な声をもらした。