軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

350.恋する女の子

次の日、宮殿の応接間の中。

ブルーノを呼び出した俺は、昨夜急いで作った「本」を五冊渡した。

「とりあえず昨夜作ったものだ」

「ありがとうございます!」

「内容は全部ちょっとした冒険というか、バトルというか、そういうものだ」

言いながら、俺は眉をひそめた。

眉間にめちゃくちゃしわができて、眉がくっつきそうな位だった。

「昨日ラードーンと話してた恋愛? のものはどう作っていいのか分からなくて……」

『ふふっ、恋愛が特に苦手そうだものな』

「ああ」

ラードーンがからかい混じりにいってきて、俺も苦笑いでこたえる。

ラードーンとのやり取りをブルーノも慣れているから不思議には思わず、逆に申し訳なさそうな顔をした。

「もうしわけございませんでした!」

「兄さんが謝ることじゃないよ。恋愛ものに需要があるのはさすがに俺でもわかるけど、どうやったらいいのかが……」

「陛下のサポートをする人間を間に入れるのはどうでしょうか」

「俺のサポートをする人間?」

「はい、物語を作る事ができる人間か、あるいはいま現在大恋愛をしている人間か」

「なるほど、実体験を聞けば再現出来るな」

「はい」

「そうなると……物語を作るのはこの国にはたぶんいないよな」

少し考えて、そう結論づけた。

この国は魔物の国、住民の9割9分が魔物だ。

魔物だから向いてないのか、それともまだ出来る魔物が現われていないのか。

俺が 覚えている(、、、、、) 【ファミリア】で使い魔化した魔物たちの中にそういうのが得意な者は一人もいなかった。

「そうなるといま恋愛してる――デュポーン?」

『やめておけ』

心あたりとして真っ先デュポーンの名前が挙がったが、ラードーンが即座に俺の意見を否定した。

淡々とした口調だけど、かなりはっきりとした否定だ。

「デュポーンはだめなのか?」

『我らのそれは人の子の恋愛とは似て非なるもの、人間が楽しめる内容にはならんよ』

「そういうものなのか」

『人間におきかえれば――そうだな、ペットの犬に恋をして犬に転生するようなものだ』

「それは……うん、たぶんだめだな」

ラードーンのたとえで、恋愛に詳しくない俺でもさすがにそれはないな、と思った。

たしかに、デュポーンは神竜で在りながら、俺のために「人間になる」と言っている。

それは彼女の情の深さでもあるが、同時に人間には理解できない感情なのかもしれない。

『それでもよいのなら我が手伝うが?』

「いや、大丈夫だ。すまない兄さん、ラードーンの突っ込みが入ってしまってな。俺にはもう心あたりがなくなった」

「さようでございましたか。……アメリア様はどうなのでしょう?」

「アメリアさん?」

「はい」

「なんでアメリアさんが?」

ブルーノの口からアメリアの名前が出てきたが、俺は不思議に思い首をかしげた。

今は「恋愛の話を作る」という話をしている。

アメリアさんはめちゃくちゃすごい歌姫だが、そういうのが得意だとは知らなかった。

俺には知らない、ブルーノが知っている何かがあるのだろうか。

そう思い、ブルーノを見つめ視線で答えを求めたが。

「……」

「?」

ブルーノはじっと俺を見つめた。

何かを観察する時の様な目で見つめて、しばし黙り込んでしまった。

なんでそんな風に見つめてくるんだろうかと首をかしげた。

「兄さん?」

「……失礼致しました」

ブルーノはそう言って頭をさげた。

顔を上げると、さっきとはまったく違う、いつもの表情にもどっていた。

「陛下のご厚意からアメリア様の歌の販売をさせて頂いております」

「ああ。たくさん売ってくれてすごく有難い」

俺はそういって、ブルーノに心の底から感謝した。

音を――録音した音を再現する魔導具を開発して、それにアメリアの歌を録音して、ブルーノに売ってもらってる。

ブルーノが売れば売るほど、アメリアの歌と名前が世界中に広がっていく。

アメリアの歌に惚れて、熱烈なファンである俺としては感謝以外の感情はありえない状況だ。

だから心のそこからお礼をいった。

「それなのですが、アメリア様の歌、特に恋を歌ったものが特に評判がよいのです」

「そうなのか?」

「他の倍――いえ、三倍近くの売上がございます」

「そうなのか!?」

驚きのあまり、つい同じ言葉を繰り返してしまう俺。

言葉自体は同じだったが、そこに込められた感情はまったく違うもので、強さもケタ違いだった。

「はい」

「そうだったのか……」

「ですので、私はアメリア様は『恋に詳しい方』だと認識しております」

「なるほど……それだと確かにそうおもうよな……」

俺は納得しつつも、自分のうかつさに苦笑いした。

アメリアのファンだといいつつも、そんな事さえも分かっていなかったのかとおもった。

「そんな事もきづいてなかったのは恥ずかしいな」

「……陛下が」

「うん?」

「陛下がきづいてらっしゃったのなら、それはそれでアメリア様が困っていただろう、と思います」

「……?」

どういう意味だ? と不思議だったが。

「ともあれ、是非アメリア様に」

「ああ、話をきこう」

ブルーノがそういい、俺は頷いて。

二人でとりあえずアメリアに話を聞こうと決めたのだった。