軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

348.いまこそ商機

応接間の中、ソファーに座っている俺の前に数冊の本が積まれていた。

そのうち一冊は中開きされてて、綴じるところから光の柱が立ち上っている。

それを数十分待っていると、光が一段と強まって、中から契約シーラが出てきた。

「お疲れ、どうだった?」

「 これも(、、、) 文句なしですわ」

本から「帰って」きた契約シーラは満足げな表情をうかべつつ、俺の向かいのソファーに腰を下ろした。

出てきた本をとじて、それを手に持って眺める。

「疑似的な世界で遠慮無くいろいろ試せるのはもちろん、何よりも構成が素晴らしいですわ」

「構成?」

「こういう状況ではこの魔法が役に立つ――という形がいいですわね」

「ああ」

「それにこっちの応用編? あるいは中級編かしら。前に覚えたものが次のを覚えるのに役に立つ、という形も素晴らしいですわ」

「じゃあ学校の、留学生の役に立ちそうか?」

「ええ、大いに。さすがですわね」

「ならよかった」

初めての試みだったから、たぶん大丈夫だろうとは思いつつも、ダメかもしれないという思いもちょっとだけあった。

それを契約シーラが実際に試していいというのならそれ以上の事はない。

「しかし……」

「うん? なんか問題があるのか?」

「ええ、魔法の覚え方、活用法などに関しては完璧ですわ。ただ」

「ただ?」

聞き返すと、契約シーラは何故かちょっと呆れたような表情になって、持っている本をかざしてヒラヒラさせた。

「この中の……登場人物? とのやり取りはどうにかなりませんでしたの?」

「やり取り?」

「会話や台詞がいちいち不自然ですわ。説明過ぎるといいますか……いいえアレはトムですなどはまったく意味不明でしたわ」

「そんなにダメだったのか……」

普通だと思うんだが……。

「……ふふ」

契約シーラはにこりと微笑んだ。

「まあ、これでいいのかもしれませんわね」

「どういうことだ?」

「これほどの大魔法使い、その上創作の才能まであったらやり過ぎですわ」

「あー……あはは、まあ、その才能はゼロだな」

自分で言うのもなんだが、物語を作る才能はまったくない。

契約シーラの指摘もよくよく考えたらごもっともなものばかりだ。

「それをどうにかした方がいいか?」

「いいえ、このままでも構いませんわ。魔法を教えるための教科書ですわ、多少物語が不自然であっても目的さえはたせればいいのですわ」

「わかった。だったらこのままにする」

俺は少し考えて、更に続けた。

「もういくつか作って、街の魔物たちにも体験して意見を聞いてもらう。シーラの所の留学生が来るまでにもうちょっと改良しておく」

「感謝しますわ。ついでといってはなんですが、二つほどオーダーよろしくて?」

「ああ、なんだ?」

「いまあるものは全てが『教科書』ですわね。アドバイスやヒントがない『テスト』もほしいですわ」

「あー……そりゃそうだ。うん、それはいるよな」

当然の話だが、それに気づかなかった自分がうかつに思えた。

「それは可能ですの?」

「もちろんだ。テスト用ならすぐには必要ないが テスト用(、、、、) に作っておく――ああいや」

「どうかしまして?」

「まずは失敗させるという形もいいか。ヒント無しのでやってもらって、生徒が各々自分で課題や問題点をみつけて他から学んで、学んだあとに挑戦してクリアする――って感じの」

「それはいいですが、上級編ですわね」

「上級編?」

「あなただからこそ出来ることですわ。基礎を学ばなければ何が魔法でできるのかも分からないですわよ?」

「……あー」

なるほど、それもそうか。

「ですが上級編としては申し分ない発想ですわね。例えば留学が仮に三年間だとして、三年目の最初に課題として出しておいて、一年掛けてクリアするように――という形ならば」

「ああ、それはいいな。さすがだシーラ」

「あなたほどではありませんわ」

契約シーラのアドバイスで改良、改善点が見えてきた。

図らずも色々やれそうな形で、それを考えているとちょっとワクワクしてくる。

その後も、契約シーラといろいろ意見を交わして、異次元教科書のアイデアに手を加え、まとめていった。

「陛下! お願いでございます!」

数日後、自分の部屋で魔法の練習をしていると、ブルーノが血相を変えて飛び込んできた。

「どうした兄さん、まあ落ち着いて、すわって話してくれ」

めちゃくちゃな勢いで飛び込んできて、本人が立場を気にしている、「わきまえている」形にしてなかったら俺の肩を掴んでガックガック揺らしていたであろうものすごい剣幕だった。

そのブルーノをとりあえずなだめつつ話を聞こうとするが――。

「何卒! あの本を私に!」

ブルーノは座ることなく、むしろ更なる剣幕で俺に詰め寄った。

「あ、あの本って?」

「中の異次元にはいって色々体験できる本です!」

「ああ、シーラのオーダーで作った魔法の教科書のこと? なんであれをそんな剣幕で?」

不思議がって聞き返すと、ブルーノはこの日一番の剣幕で。

「陛下の発明で一番売れるものだからです!」