軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

342.なんでもする

あくる日の昼下がり、宮殿の中庭。

俺と契約シーラがいて、更に二十人ほどのエルフメイド達がいた。

エルフメイド達は横一列にならんでいて、足元に一人一台ずつのワゴンがつけられていた。

ワゴンの上にはマジックミサイルのボールがそれぞれ10個ずつ置かれている。

そのエルフメイド達から少し離れた所で、俺と契約シーラがいわば「観賞」するような形でならんで立っていた。

「やるぞ」

「ええ、よろしくてよ」

契約シーラに確認をとってから、俺はエルフメイド達に合図をおくった。

エルフメイド達はその合図を受けて、ワゴンからマジックミサイルのボールをとって、前方に軽く投げ出した。

あらかじめ言いつけた適当な投げ方。

小石で十メートル飛ぶか飛ばないかくらいの無造作な感覚で投げてもらった。

二十人のエルフメイドが一斉にそうやって投げて、マジックミサイルのボールが緩い山なりの曲線を描いて飛んでいく――その途中。

山なりの軌道が、緩やかに山の頂点に達したあと、ボールが光とともにはじけ飛んで、魔法の矢へと変わった。

するとそれまでとはうってかわって、全力でものを投げたくらいの速度で魔法の矢が前方に飛んでいった。

一斉に放たれた二十本の矢――だけでは終わらなかった。

魔法の矢が何かに当るよりも早く、エルフメイド達が次のマジックミサイルのボールをとって、また同じようになげた。

それはまた山なりの曲線を描いて、途中で魔法の矢に変わって飛んでいく。

そうやって、エルフメイド達は次々と投げて、あっという間にマジックミサイルのボールを投げ尽くした。

投げ尽くした後、全員が俺に振り向いて、見つめてきた。

「お疲れ、よくやった」

ねぎらいの言葉を掛けると、エルフメイド達は全員嬉しそうに破顔した。

そんな中、俺は契約シーラの方をむいた。

「どうだ? これで」

「……凄まじい、予想以上ですわ」

「予想以上?」

「ええ、魔法の矢なのはもちろんのこと、それ以上に連射の速度がとんでもないですわ」

「そうなのか」

「わたくしの想定では通常の弓矢に替わって用いるものですわ」

「まあそうだな」

「その通常の弓矢の……控えめに見積もって連続で撃てる速度のざっと三倍ですわ」

「そんなになのか?」

「矢をとって、つがえて、目一杯弓を引いてはなつ。それに比べてこの魔法の矢はとって投げるだけですわ」

「なるほど、確かに比べものにならないくらい早い」

「それに弓矢だと後半になればなるほど弓を引く力が低下しますし、放ったときの弦でケガをする事もありますわ。速度をあげて連射をさせようとすればするほどそうなりますわ」

契約シーラは興奮気味にいった。

メイドエルフたちが投げた200発の魔法の矢は、庭の先に設置した大きな岩を粉々にした。

それ自体もかなりの成果だが、契約シーラは破壊力よりもなによりも、連射出来る事にテンションが上がっていた。

予想よりもテンションがあがっているし、予想していたのと違うところを評価されたが。

「なにはともあれこれでいいってことだな?」

「ええ、文句のつけようもありませんわ」

「じゃあこれで作っていく」

いいながら密かに考えた。

ダークエルフ達はまだこの街の生活に慣れていないから、とりあえず数千から一万発、最初に シーラ(、、、) に渡す分は俺が頑張って作ろうと思った。

「……ちょっと、よろしくて」

「うん? ……どうした、そんなに真顔になって」

「相談がありますわ」

「相談?」

「ええ、単刀直入に申しあげますわ」

「……なんだ?」

俺は首をかしげつつ聞き返した。

契約シーラ――シーラは元々回りくどさとは無縁の女だ。

そんな契約シーラがわざわざ「単刀直入に」って宣言した話の内容が気になった。

「しばらくの間でいいですわ、このボール――いえ、この武器をわたくしだけに売って欲しいですわ」

「シーラだけに?」

「ええ」

「それはいいけど……なんでまた」

「……」

契約シーラは目を見開き、驚いた。

「え? なにか変な事をいったか? おれ」

「変……といいますか。本当にわからないんですの?」

「えっと……そんなに簡単な話か?」

「ええ、まあ……」

おずおずと頷く契約シーラ。

俺は考えた。

簡単な話だったら分かるだろうと思って考えたが……分からなかった。

『ふふっ、やめておけ。お前にはむりだ』

「むりなのか?」

『うむ。まあ、あれだ』

ラードーンは愉しげな中に、わずかないたずらっぽいニュアンスを混ぜた笑いをしつつ更にいう。

『そのままの君でいて、というやつだ』

「……?」

ますますなんの事か分からなかった。

ラードーンがちょっとした意地悪でいってるのは分かるが、その言い回しでますますわからなくなった。

そのラードーンとちがって、契約シーラは彼女らしく、ストレートに答えてくれた。

「これはすごい兵器ですわ」

「え? ああ、まあ……」

そうなのかな、いやまあそうだな、と思った。

「簡単に扱える強力兵器、独占すればそれだけで戦が優位に。逆に双方がもてば被害が無視できなくなりますわ」

「ああ、だからシーラだけに」

契約シーラははっきりと頷いた。

なるほどそういうことか、と納得した。

「お願いしますわ。もしわたくしだけに渡して下さるのなら――なんでも致しますわ」

何でもする、と話すシーラの目はものすごく、真剣そのものだった。