軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

341.案ずるよりも

「……おお」

なるほど、と手を打った。

そんな俺の反応にラードーンはやや呆れたような反応をした。

『本当に考えもしなかったのか』

「シーラから俺が請け負った仕事だったからな。数も多かったし」

『数が多いから自分でやろうとしたのか』

「ああ」

『ふふっ、そうか』

また笑うラードーン。

その笑みの意味はよく分からなかったが、ラードーンの気配が 引っ込んで(、、、、、) 話が打ち切られた。

「あ、あの……」

「え? あ」

グレースがおずおずと声をかけてきた。

ラードーンとのやり取りでほっといてしまった彼女に改めて向き直った。

「わるい、ほっといちゃって」

「いえ……」

「すぐにじゃないけど、そのうちたぶんやってもらいたい事ができた」

「本当に!?」

「ああ、だからそれまではこの街の生活に慣れつつ体調をととのえて置いてほしい」

「わかった!」

一気に表情が明るくなったグレース。

恩返しが出来るとしるやいなやテンションが急上昇したような感じだ。

今までは思ってなかったけど、これだけ嬉しそうになるんなら、ラードーンの言う通りにグレース達に魔法の矢を作る仕事を任せた方がいいと思った。

新しいダークエルフのことはグレースに任せて、またバンシィが逃げ込んできた時に呼ぶようにいってから、俺は宮殿の自分の部屋に戻ってきた。

部屋の中で一人っきり、【アイテムボックス】から取り出した、ストックのアオアリ玉をじっと見つめて考え込んだ。

『それをどうつかうのだ?』

「使えないと思う」

『ほう?』

「使えないけど参考にする。このアオアリ玉は熱をいくらでも溜めておける物質。これと同じように魔法を溜めておける仕組みを考えてるんだが――」

そういえば、と思ってラードーンに確認をとった。

「これと同じ感じで魔法を溜めておける物質はしってる?」

『残念だがそのような都合のいいものはしらんな』

「そうか」

『熱という純粋なエネルギーをため込むだけとはいえ、アオアリの巣は実は奇跡レベルの産物だ』

「そうだよな」

『純粋なエネルギーではなく魔法という複雑な代物をためておく、しかも触れたら放出ではなく使いたいときに使う、なおかつダークエルフどもに任せるからには簡単にできるようにしたい――ふふっ、なんとも欲張りだな、んん?』

「欲張りってわけじゃない」

ラードーンがあげてくれた要件。

今回のことで必要な条件を全部わかりやすく列挙してくれたから、それを思い浮かべながら考える。

「そもそもシーラの注文が百万本だ。大量に何かをつくるんだったら簡単にしなきゃ話にならないだろ?」

『道理だな。さて、何か思いついたか?』

「方法だけならざっと7通りくらいは」

『ほう、さすがだな』

「問題はどれが一番簡単なのか」

『簡単というものにもいくつか種類がある』

「どういうことだ?」

『たとえばだ、人の心を揺さぶるような歌を歌ってみろ、そう言われたらお前はどうする?』

「は? いや……そんなの、どうやっても無理だけど」

『それをあの娘、アメリアだとどうだ?』

「アメリアさん? 当然普通に出来るだろ」

『そういうことだ。誰にとっても出来る簡単と、人を選ぶ簡単の二種類がある』

「ああ、なるほど。だったらここは迷うことなく誰にでも出来る簡単だな」

ラードーンにそう答えながら、さらに考える。

今回は100万本の魔法の矢の生産、つまり多くの人手をつかっての大量生産。

当然、だれにとっても簡単な方法じゃなきゃ意味がない。

攻撃魔法である【マジックミサイル】を何かの形に留めておく魔法。

「……む?」

『どうした?』

「いや、そういえば……」

俺は少し考えた後、まずは立ち上がった。

俺の部屋は家具が少ない。

魔法を考える時間が多く、試すことも多い。

だからソファーとテーブル、それに最低限の調度品があるだけで、かなりがらんとした部屋にしてもらってる。

そのがら空きのスペースに立って、手をかざした。

「【アイスニードル】」

魔法を唱えると、人差し指程度の太さに、足ほどの長さをもつ氷の針ができて、それが床に突き刺さった。

「……ふむ」

『氷の針がどうかしたのか?』

「ふと思ったんだけど、魔法ってものによっては何か物体を作り出すものもあるよな、って」

『うむ、この氷の針とかがそうだな』

「【マジックミサイル】っていう魔法を物質化する魔法をって考えたけど、二つの魔法じゃなくてマジックミサイルの道具をつくる魔法をって感じで考えたほうがいいんじゃないかってふと思ったんだ」

『なるほど、盲点になりがちだが突飛ではない。が』

「が?」

『それは簡単にできるのか?』

「わからない」

『わからない?』

目の前にラードーンが立っていれば眉をひそめて首をかしげたであろう、そんな感じの声色だった。

「俺も初めて思いついた事だし、まずは試してみないことにはわからない」

『……ふふっ、道理だな』

「まずはやってみよう――アメリアエミリアクラウディア」

前詠唱して、魔力を高める。

そしてすでにある【マジックミサイル】をベースに、マジックミサイルの道具を作り出す魔法をイメージする。

「【マジックシード】……むっ」

『今度はどうした』

「予想以上に……簡単にできた」

拍子抜けするくらい魔法が簡単にできた。

魔法を唱えた瞬間、手の平に 投げやすい(、、、、、) 事をイメージした手の平サイズのボールが出来た。

それを放り投げると、途中でボールがきえてマジックミサイルになって飛び出した。

魔法自体は成功、問題は――。

「【マジックシード】」

次の日の夜。

話をして、半日かけて。

それで早速魔法を覚えたグレースが同じようにマジックミサイルのボールをつくった。

俺にとってだけじゃなく、グレースにとっても簡単に魔法になったようだ。