軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

336.感謝の気持ち

次の日、街の入り口。

ガイとクリスがいて、新たに保護されてやってきたバンシィと対面していた。

昨日のバンシィ達、グレース達が最初にやってきた時と同じように、頭からすっぽり被せたローブ姿だった。

ローブはボロボロだが――。

「ケガは……なさそうだな」

「追いかけられていたから急いで助けたでござる」

「脳筋のくせに偉そう。あたし達がいなかったら危なかったんだからね」

ガイが得意げに言ったところに、いつものようにクリスが突っ込みをいれた。

俺は驚いた。

「危ないところだったのか?」

「うん」

「ガイとクリスがいて危ないところだったって……そんなに強い人間が追いかけてたのか?」

にわかには信じがたかった。

ガイにクリス、この国の三幹部とされている内のふたりで、戦闘能力でいえば他を圧倒的に引き離してる二人だ。

その二人がいるのに危なかっただなんて――。

「あっ、違うよご主人様」

「え?」

「脳筋の足が遅かったから、助けるのが間に合わないところだったのが危なかったって意味だよ」

「……ああ」

なるほど、と思った。

「ち、違うでござる。普段は赤い壁を越える事がなかったから少しだけためらったでござる」

「そのためらいを差し引いても足遅かったじゃん」

「ぐぬぬぬ」

珍しくガイがクリスに言い負かされていた。

いつもなら「イノシシ女にいわれたくないでござる」とか何とかいいだして、無理筋でも何でも反論をしてたガイだ。

それが完全に言い負かされている。

よほどガイの中でも失態に思っている――。

「イノシシ女とは違うでござる」

――なんて事はなかったようだ。

一瞬「ぐぬぬ」って感じが言い負かされそうになっていたが、すぐにいつものようにクリスに食ってかかった。

「何がよ」

「あの時の事を思い出すでござる。拙者が駆けつけた瞬間人間達が一目散に逃げ出したでござる」

「そ、それは」

今度はクリスが言い負かされそうになって、ものすごく悔しそうな顔をした。

「どういうことなのだ?」

「拙者、どうやらますます人間たちの間で有名になったでござる。イノシシ女と戦っていた相手も拙者の顔をみたらすぐさま逃げ出したでござる」

「そうなのか?」

クリスの方に聞いてみた。

何か反論は? って感じで聞いてみた。

するとクリスは悔しそうな顔で反論しだした。

「そんなの偶然知っている相手だったからじゃん。あたしだって危険度SSSの賞金首なんだから、そこは脳筋と同じなんだから」

「ほほう、ならばイノシシ女は姿を見せただけで人間達が逃げ出したことがあるでござるか?」

「あ、あるもん。たまにだけど……ちゃんとあるもん!」

よほどガイに有利な内容だったのか、珍しくガイが一方的にせめて、クリスが悔しそうにしながらも必死に反論するという感じになった。

それでもいがみ合う二人は見てて楽しかった。

それを眺めながら二人の言葉を思い出す。

二人とも「危険度SSSの賞金首」になった事を自慢げに話していた。

すこし聞かないうちにまた懸賞金が上がったのか。

『前の戦争で張り切ったからであろう』

「ああ……」

『魔王に忠実で、命令一つでなんでもする、というのも評価されているのであろうな』

「そういうものなのか」

『そういうものだ』

なるほどと思いながら、いがみ合う二人を放置して、バンシィ達の方をむいた。

改めて視線をむけて、数を数えてみる。

ガイとクリスが救出してきたバンシィは二十人くらい。

昨日よりもちょっとだけ増えた。

「す、すまない」

「ん?」

声の方に振り向く。

街の中からダークエルフのグレースがやってきた。

グレースは昨日と同じ、黒を基調にしたドレスを纏っている。

慌てて駆けてきたのか額に大粒の汗が浮かんでいる。

「知らせをうけたけど街の構造がまだ覚えていなくって」

「それはしょうがない。【リアムネット】をつかって連絡してくれればよかったのに」

「え? あ……それもすまない。まだ……分かっていなくて」

「そうか」

それもしょうがない、とおもった。

一応、グレース達ダークエルフ達にも【リアムネット】が使えるようにはしたが、「使える」のと「使おうと思う」のは別だから、慣れてないうちは無理だろうな。

「とにかく気にするな」

「あ、ああ」

俺にそう言われて、申し訳なさが大分減ったグレース。

そこで気を取り直してって感じでバンシィ達をみた。

「今日逃げてきたみんなだ」

「はい」

「ここまで逃げてきたから大丈夫だとは思うけど、一応この国にいるのと、あと【ファミリア】の事を説明して、聞いてみてくれるか?」

「わかった」

グレースはバンシィ達に話しかけた。

ダークエルフのグレースに話しかけられたバンシィ達は最初訝しんだり警戒していたりしたが、【ファミリア】の事も説明するとほとんどが半信半疑って感じになった。

そんななか、好奇心が強いであろう一人が先に承諾して、俺の【ファミリア】をうけた。

【ファミリア】を掛けられて、バンシィからダークエルフに姿をかえる。

その光景を間近でみていた他のバンシィも警戒をといて、次々と【ファミリア】を受け入れた。

その間、グレース以外のダークエルフも駆けつけてきて、仲間達のことを見守った。

全員が【ファミリア】を受け入れると、ダークエルフの数が30人を超える数になった。

迫害されて逃げ込んだ先で安心感と仲間を得て、ダークエルフ達は固まってお互いに言葉を掛け合った。

そんな中、一人俺に近づくグレース。

「あの……ありがとう、ございます」

「きにするな」

「やっぱり何か、お返しに出来る事は無いだろうか」