軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

309.挑発と殺意

「あのねダーリン、あたし、昔あいつらと殺し合いをしてたじゃんか」

「あ、ああ……」

いきなり何をいいだすんだ、と、俺はちょっと困ってしまった。

確かにその話は何度も聞いたし知っている事だけど、こうやって改まって、しかも真っ正面から向き合って真顔で言われると何事!? って戸惑ってしまう。

「あたしはあいつらを殺そうって本気で思ったし、向こうも殺意は本物だったのね。力はしょぼいけどさ」

「そ、そうか?」

俺はちらっとラードーンの方に視線をむける。

挑発にもにたこの一言でラードーンがまた激昂するのではないかと心配になった――が。

意外な事に、ラードーンも真顔で怒り出すそぶりはまったく見られなかった。

それはそれでなぜ――と思ったがデュポーンは思考の暇を与えてくれることなくさらに続けた。

「その時にぶつかり合ったあたし達の力で変なものを産み出したんだ」

「変なもの?」

「あんた覚えてる?」

デュポーンは振り向き、肩越しにラードーンに聞いた。

「うむ、そのようなものもあったな。あれはなんなのだろうな、まったく新種の物質なのはまちがいないが」

「あれって金属だった?」

「いいや、もっと純粋な何かだった」

「そ」

それが満足のいく答えだったからなのだろうか。

デュポーンはラードーンから視線を俺の方に戻してきた。

「あたしとあいつらの力がぶつかりあって出来たあれ、あいつの言う通りあたしも新種の物質だと思う。それがめちゃくちゃ硬いものだったの」

「めちゃくちゃかたい……」

「その後あたし達三人の力をぶつけても全然壊れなかったの」

「そうなのか!?」

これが本題だと一瞬で理解した。

本気で殺し合うラードーン、デュポーン、ピュトーンの三人の力を受けても「全然壊れない」物質。

それはもう何をやっても壊れないものなのは間違いなと確信する。

「それはどこにあるんだ?」

「わかんない。あの時殺し合いだったしいつの間にかどこかに行ってたし。……あんたは知ってるの?」

「知らぬよ、あの時はその程度のものは」

「ま、そうだよね」

「そうか……知らないのか」

「でも平気」

「え?」

「だってダーリン、アレはあたし達が作ったようなものだから、もう一回作ればいいんだよ」

「あ、なるほど」

「ダーリンのためにだったらあたし頑張っちゃう」

デュポーンはそういい、両手を挙げて小さくガッツポーズをした。

その仕草は俺の目から見ても可愛らしかった――が。

「それって……殺し合いをするって事だよな」

デュポーンの説明から、俺は一つの想像をした。

そしてそれは正解だった。

「うん、ダーリンのためならあいつらを殺す気でやっちゃう。そして勝つよ」

「……ふっ」

デュポーンがそういい、彼女を挟んだその向こうにいるラードーンは鼻で笑った。

「やっぱりそうか……殺意が大事なのか」

「たぶんね。ダーリンと出会ってから何回かあいつらを殺そうとしたけど、力はあの時と同じくらいだけど、殺意はちょっと足りてなかったんだ」

俺はちょっとこまって、どう反応していいのか分からなかった。

彼女達の意地の張り合いを何度も見てきている。

それを知っているからこそ、「殺意が足りない……あれで?」と舌を巻くしかなかった。

が、それはそうと。

かつての、それこそ歴史に残る三竜戦争レベルの殺意が必要だと分かってしまった以上。

「いや、それはやめてくれ」

彼女達にやらせる訳にはいかなかった。

「どうして、ダーリン?」

「そこまでの殺し合いだっていうのならそれはやめてくれ。どっちかが必ず死ぬだろうしどっちも死ぬかもしれない。だったらだめだ」

「ダーリン…………やっぱり大好き!」

デュポーンは俺を見つめ、目をうるうるさせてきたとおもったらぎゅっと抱きついてきた。

彼女の愛情表現はたまに困る事もあるけど、これに限って言えば殺意を跡形もなく消し去っているような愛情表現は有難かった。

「でもいいのダーリン?」

「ああ、ダメなら他の方法を探すだけだ。魔法は奇跡のちから、つけられる道筋は一つだけじゃない」

「さすがダーリン! すごく格好いい!!」

そういってますます俺に抱きついてくるデュポーン。

殺意を消し飛ばせるのならやらせて置こうと思った。

「とはいえ」

ラードーンがそう切り出しつつ、ゆっくりと歩いてきた。

俺の方にむかって歩いてきつつ話した。

「それが一番の方法であるのは間違いなかろう」

「まあ、現時点では」

「ならばやって見せよう」

「ダーリンが殺し合いダメっていうからやらない。べーだ」

デュポーンは俺に抱きついたまま、まなじりを指で引っ張り舌をだして挑発した。

ラードーンの挑発にもデュポーンは 燃え(、、) なかった。

「我はいいように言われてそれなりに腹を立てている、残りはアヤツへの興味で補える程度にはな」

「あたしはやらないもん」

「宣言しよう、一手で十分だ」

「やらないっていったらやらないの――」

「……」

瞬間、目の前がくらくなった。

ラードーンの顔が迫ってきて、いきなりキスをされた。

まったくいきなりの事で避けようがなかった。

「ふふっ、我の方が心地よかったろ?」

「え? いやあの――」

何をどういってどう反応するのか――と、考えるまでもなく。

――プチッ

この世で最も不吉で不穏な音が腕の中にいるデュポーンから聞こえてきた。