軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

302.いつもと違う考え方

「ありがとう、こっちも伸ばしていくことにするよ」

「ふふっ、お前の事だ、どうなるのかが楽しみだな」

ラードーンは腰に片手を当てたまま笑った。

一見して尊大な感じに見えてしまうポーズだし、それをやっているラードーンの姿が幼げで本来ならちぐはぐになるはずだが、まったくそうはならないで当たり前のようにみえる。

それどころか威厳さえも感じてしまうのがラードーンのすごい所だ。

それに見とれる一方で、脳裏にある事が浮かんできた。

「そうなると、まずは判断する方法を決めないと」

「判断する方法?」

ラードーンは腰に手を当てたまま首をかしげた。

片手を当てて、首をかしげながらの立ち姿は綺麗な「S」の字になっている感じで嫋やかさが更に増していった。

「ああ。同時魔法は数っていうわかりやすさがあっただろ? でも全力の一発分だと前に比べて伸びたのかどうかがわかりにくい」

「ふむ……たしかに言うとおりではあるな。そのための方法、いや判断の基準を定めようというわけか」

「そうだ」

頷き合う俺達、俺は更に続けた。

「ある程度までは同時魔法と比例するだろうけど、でも同時魔法で2から11に増えたのなら一目で分かるが、2から3じゃ増えたかどうかがわかりにくい」

「うむ。成長をしていけば行くほど『割合』でみれば小さくなっていくことだしな」

「そう、だからちゃんとした判断基準がほしい」

「腹案はあるのか?」

「……例えば」

俺はそういい、まずは無詠唱で魔力を放出した。

そこそこの魔力が放出され、空中の一点で凝縮され、結晶化した。

結晶化した魔力、魔晶石ブラッドソウルになった。

それを作った後、何も言わないまま前詠唱をして、高まった魔力で同じことをした。

無詠唱に比べて爆発的に膨れ上がった魔力が同じように放出され、同じように凝縮して結晶化した。

最初のに比べて10倍近く大きいブラッドソウルが出来た。

その二つを両手でそれぞれもって、突き出すように見せた。

「物質化が一番純粋な魔力量に影響される。こうやって出来たものの――そうだな、重さを比べることである程度は計れる」

「うむ。しかし結晶化はある程度神経を使うのではないか? ロスもでる」

「……その通りだな、泥団子を作る時みたいに大きさ次第で労力と神経もちがうし、手にくっつく分も違う」

細かい所まで突き詰めれば違うが、両者に共通する現象が多くある。

「我が受けてやろうか?」

「ラードーンが?」

どういうことだ? と訝しむ視線をラードーンに向けた。

ラードーンは尊大なポーズと態度のまま答えた。

「お前が純粋な魔力弾を我に向かって放つのだ、我がそれを受けて計るのだ」

「それはいいけど……ラードーンに好不調の波はないのか?」

「……うむ、なくはない」

ラードーンは苦笑いした。

たぶん、俺達人間からしたら分からない程度のものなんだろう。

好調でも普通でも絶不調でも、どんな調子であろうとも人間よりは遙か高みにいる天上人なんだろう。

だけど、好不調は感覚にかなり影響するはずだ。

好調でも絶不調でも俺の全力を易々と弾くだろうが、弾くときの感覚が調子によってちがってそれで答えも変わってしまう。

「感覚じゃなくて、もっとちゃんとしたのがほしい」

「絶対的な基準というわけだな。賛成だ」

「問題は……どうやるかなんだけど」

俺とラードーンが顔をつきあわせて、頭を悩ませていた。

俺はもちろん、ラードーンも始めの頃と違って困った顔をしている。

「あの……」

そんな困っている俺達を見かねてか、それまで黙って見守っていたアメリアが口を開いた。

「なんですかアメリアさん?」

「その、魔法の事は私にはよく分からないのですが」

アメリアはそう前置きをした上で、更に続けた。

「陛下はたしか魔法を創作できるとお聞きしています。魔力の測定? のための魔法を創作することはできないのでしょうか?」

「――っ!!」

ガツン! と脳天をハンマーで殴られたかのような衝撃を受けた。

アメリアの言葉はそれほどに痛いところをダイレクトについてきた。

一方で、それをいった当の本人は俺の反応をみて慌て出した。

「あ、あの! 何か間違ったことを言ってしまったのでしょうか?」

「ふふっ、何も間違ってはいない。盲点を突かれて衝撃を受けているだけだ」

「盲点……ですか。あっ……」

ラードーンが口にした「盲点」という言葉をかみしめる様につぶやいたアメリアは、やがてその言葉の意味するところを理解してはっとした。

「うむ、極めて正しい指摘だということだ」

「ああ! ありがとうアメリアさん! 気づかせてくれて本当にありがとう」

「そんな、私はただ感じた事を……」

「うむ、これに関しては我らのほうがバカだったな」

「ああ」

ラードーンの言葉に全力で同意した。

もちろん言い訳をしようと思えばできる。

ラードーンから「今までとは違うこと」を示された直後だから、今までやってきた「なんでも魔法で解決する」という発想に結びつかなかった。

だがそれはただの言い訳だ。

実際思いつく事ができたはずのことで、何も難しい事はない発想で。

それを思いつく事が出来なかった俺とラードーンの方がバカだ。

「ありがとうございますアメリアさん」

そうやって、もう一度アメリアにお礼を言ってから。

俺は測定のための魔法をどうするか、どういう形で実現させるか。

その事に頭を巡らせるのだった。