軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

299.魔力ゼロの女

翌日、街の中。

ギガースがメインになって、新しい家を建てていた。

様々な種族の魔物がその特 長(、) を活かしてものすごいペースで家を建てていく。

「これなら明日くらいにはもう出来そうだな」

俺は建てている家を少し離れた所から眺め、ぼつりといった。

ほとんど独り言のようなつぶやきだったが、側にいるアメリアの耳にしっかり届いたようで。

「すみません……」

と、申し訳なさそうにしてきた。

「何がですか?」

「私のためにこんな、みんなの手を煩わせてしまって……」

「気にしないでくださいアメリアさん。それに、魔物総出でこうしてるのは俺が命令したからってだけじゃないんです」

「え……?」

アメリアは目を丸くして驚いた。

魔物達の王、魔王。

その魔王である俺が一言命令を下せばなんでも――という風に思っていたようで、だから俺の言葉に驚いたようだ。

「あの演奏会のおかげですよ。あそこでアメリアさんの歌を聴いたみんなが、アメリアさんが移住してくるための家なら喜んで! って感じなんです」

「そんな……」

「あめりあのうたすきー」

「すきすきー」

アメリアがなおも謙遜しようとしたが、近くにいたスラルンとスラポンが子犬のごとく人なつっこく彼女にちかづいた。

「あっ……」

それに驚き、少し戸惑いながらも、スラルンとスラポンの可愛らしい見た目も相まってか悪い気はしない、という表情に少しずつシフトしていった。

俺は再び建てられている家の方に視線を向けた。

これまで、アメリアはゲストだった。

ここが魔物の「国」で、俺がそこの王。

魔王が一番憧れているゲストだから、大仰な言葉を使うのならアメリアは「国賓」だ。

その国賓は今まで迎賓館に泊まっていた。

しかしこれからは違う。

もちろん憧れな事に変わりは無いが、アメリアはこの国への移住を、住民になる事を承諾してくれた。

だったらいつまでも迎賓館にっていう訳もいかず、ちゃんとした「家」をって事で、今こうしてみんなに家を建ててもらっている。

ちなみにここはアスナ、ジョディ、スカーレットの家の近くでもある。

この街、この国は人間の住人が少ない。

アスナ達はもう慣れているだろうが、アメリアはそういうわけにもいかないだろう。

この先引っ越す事もあるかもしれないが、せめて最初のうちは人間が近くに住んでいる場所の方がいいだろうと思ってのこの場所だ。

「何か必要なものはありませんか?」

「え?」

「いわば『宿』から『家』に移るのですから、自宅としてすむのに何か必要な事はありませんか? なんでも用意します。この街にないものでも、兄さんに頼めば大抵は手に入ります」

「えっと……」

「遠慮はしないでください。兄さんは商人ですから、ちゃんと取引をさせてあげた方が向こうもたすかると思います」

なんとなく、アメリアがまだまだ遠慮をしていると感じたから、彼女がいろいろ頼みやすくする様に言ってみた。

それが効いたのか、アメリアは相変わらず遠慮がちながらも、おずおずとした様子で口を開いた。

「実は……一つだけ」

「なんですか?」

「その、この街の魔法……です」

「この街の魔法……生活魔法の事ですか?」

「はい」

アメリアは重々しく頷いた。

表情がほんのりと変化した。

さっきまでの100%遠慮な表情から、50%位は困ったような、あるいは恥じらうような、そんな表情の色が混じってきた。

「生活魔法がどうかしたんですか?」

「今まではメイドの方がしてくれたんですけど……つかえないんです」

「つかえない?」

「はい、私、魔法をまったく使えないらしくて」

「まったく?」

「まったく……」

アメリアはためらいがちに頷いた。

表情が完全に切り替わって、ほぼほぼ100%恥ずかしさによるものに変わっていた。

「おかしいですね、街の生活魔法は『魔法』そのものが使えなくても使える様にしたはずだけど……」

実は生活魔法の仕様は二段階に分けている。

【リアムネット】みたい重要なのは【ファミリア】の魔法で使い魔契約をしたものだけ使える様にしている。

【ライト】といった別の意味で日々の生活に重要なのはそういうのも関係なく、誰でも使える様にしている。

さらに魔法は誰でも使えるものじゃないから、そういうものでも使えるようにしている。

例えるのなら火熾しだ。

上手い人は枯れ木を渡せばそれで火をおこせるだろう、だけどそれは普通の人にはむりだ。

そこで火打ち石を用意すれば出来る人が増えるし、火打ち金もセットで用意してあげればさらに火熾しが簡単になる。

俺がやったのは、いわば火打ち金まで用意してみんなにできる様にしたということだが――。

「……まさか」

「陛下?」

「アメリアさん、お手を」

「て?」

「失礼します」

アメリアが不思議そうに伸ばした手を取って、目を閉じて「感じとる」。

「へへ、陛下!?」

アメリアの中を感じる。

直ぐに分かった――推測が当ったと分かった。

俺は目を開けて、アメリアをみる。

なぜか赤面しているアメリアに伝えた。

「アメリアさんには魔力がないみたいですね」

「魔力が……ない?」

「はい、珍しい形です。普通の人はなんだかんだで魔法はつかえないけど『ほんのちょっと』魔力はあるんです。そうですね、たとえは悪いですけど水筒を飲み干しても中はしっとり濡れている――あんな感じです」

「はあ……」

「それがアメリアさんにはまったくありません、水筒の中が空でした」

「そうなのですか……」

アメリアは意気消沈――落ち込んだ。

魔力が全くのゼロと聞かされてそれで落ち込んでしまった様子だ。

「ではこの街に住めませんね。陛下にご迷惑が――」

「なのでこれをお持ちください」

「――え?」

驚くアメリアに、俺は【アイテムボックス】を呼び出して、中から小さい粒状のものを取り出して、アメリアに手渡した。

驚きながらも、俺が手をさしだしたからアメリアも手の平を揃えつつ上向きにしてうけとった。

アメリアの手の平に、10個の小さな粒がのった。

一つ一つがヤマブドウ位のサイズの小さな粒だ。

「これはなんでしょうか?」

「魔力が完全に0の人もいるって本で読んだ事がありましたので、そういう人のためにあらかじめ作っていました。それをつぶせば――水筒の内壁が湿る位の魔力をだせます」

「魔力が……」

「それをつぶしてやってみて下さい」

「こう……でしょうか」

アメリアは俺に促されたまま、粒の一つをつぶした。

直後、彼女のまわりで明かりが灯った。

この街の生活魔法の一つ【ライト】だ。

「あっ、つきました!」

「はい。これで問題はないですね」

俺はほっとした。アメリアのちょっと嬉しそうな表情をみて、ホッとした。

今まではゲストと言うこともあり、メイドエルフに任せっきりだったから気づかなかったこと。

それを解決できてこころからほっとした。