軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

280.ラードーンのうっかり

『…………』

「ラードーン?」

できる、と力強く言いきってから一変、ラードーンは急に黙り込んでしまった。

ラードーンは俺の体の中にいて、寄生――いや共生的な形になっている。

普段は、姿は見えないが、長く一緒にいる事で、言葉に出さなくてもある程度の感情の違いが分かるようになった。

ラードーンは力強く言いきった後、後ろ向きな感情になった。

迷っているような、後悔しているような。

そういった類の感情だ。

『うむ、これは我の手落ちだな。すまない』

「どういうことだ? そんなに難しいことなのか?」

俺がいうと、スカーレットは驚き、焦った表情になった。

ラードーンの言葉を直接聞けない彼女は、俺の言葉で間接的に状況の変化を察した。

それでもスカーレットはこういう時、 俺(主) と ラードーン(神竜様) の会話に割って入ることはなく、聞きたいがそれをぐっとこらえる表情で押し黙る。

俺はそんなスカーレットでも分かるように、若干説明口調になるよう意識しつつ、ラードーンとのやり取りを続けた。

『やり方自体はそう難しくはない。確かにある程度の難易度はあるが、時空間魔法や神聖魔法を自在に操るお前ならさほどの障害にならない』

「俺の能力が問題じゃないって事は……何が障害になるんだ?」

『うむ、あの封印は元々、我ら三人の争いの副産物ともいうべきものだ』

「三竜戦争の副産物ということだな?」

『そうだ。そこで我らが気にも留めない事が一つある。それは時間の感覚だ』

「時間の感覚……」

『人間とは異なる時間の感覚で生きているという事だ』

「人間と違う時間の感覚だとどうなるんだ?」

『結論から言おう。あの封印を一度施してしまえば、数十年は解除不可能な状態になる。いや、ほぼほぼ百年といっていいか?』

「百年間も解除できない!?」

「――っ!!」

びっくりして、思わず目を見開いた。

俺の言葉である程度話が理解できたのか、スカーレットも同じように驚いた。

「それって、その間は何が何でも解除できないのか?」

『出来ないはずだ。が』

「が?」

『お前なら無理矢理なんとかなるかもしれない。ただし保証はない』

「……」

『その間何人たりとも出入りは不可能になる――あの娘をずっとこの地に縛り付けておくなど望んではいないのだろう?』

「ああ」

俺ははっきりと頷いた。

アメリアのことだ。

あの「約束の地」状態にして、国ごと封印してしまうと誰もでられなくなってしまう。

俺や魔物達はまだいいが、この国の人間じゃないアメリアをこの土地に閉じ込めてしまうなんて事はあってはならないこと。

『人間の尺度を持たぬが故に失念していた、すまない』

「いや、ラードーンは悪くない。というか、それだけのものなら時間があるときにじっくりと研究したいって思う」

『ふふっ、お前らしい。まあ、今回は使えぬという事だな』

「そうだな」

俺はふっ、と肩をすくめた。

アメリアの演奏会が終わって、彼女を送り帰したら本格的に研究しようと思った。

ラードーンが作り出した約束の地の魔法。

この国になっている土地を丸ごと封印してしまう大魔法。

それがどういうものなのか、どうなっているのかはものすごく興味があった。

終わった後にやることにして、ひとまず脇にどけておくことにした。

「あの……」

スカーレットがおずおずと切り出した。

いかにも、俺とラードーンが話しているから発言をひかえていた、といった様子だったが、俺達の話が終わったのを察してから会話に参加してきた。

「どうしたんだ?」

「約束の地そのものの再現ではなく、現象の再現……ではどうでしょうか」

「現象の再現?」

「はい」

スカーレットははっきりと頷き、俺をまっすぐ見つめながら、更につづけた。

「はったり――と申しますか」

「はったり」

「はい。主様とともに約束の地にやってきた時のことは今でもよく覚えています」

「ふむ」

俺は小さく頷いた。

元々約束の地はスカーレットが持ってきた話で、最初は彼女と一緒にここにやってきた。

「目をつむると、今でもあの時の光景はまぶたの裏に浮かび上がってくるくらいです」

「そうなのか?」

「はい。それほどに第一印象が強烈でした。ここにはなにもない、あったとしても人間が足を踏み入れることが出来る場所ではない。と強く感じました」

「ふむ」

「その『見た目』のみ再現出来れば、ハッタリとして機能出来るのではありませんか?」

「……そうか、半日もてばいい訳だ」

「はい」

頷くスカーレット。

俺も同じように頷き返した。

彼女にしかできないアドバイスだった。

あの時、俺と一緒に約束の地に来たスカーレットからしか出てこないアドバイスだ。

「精霊召還:サラマンダー」

俺は少し考えて、炎の精霊を呼び出した。

サラマンダーに頼んで、俺とスカーレットから少し離れた所の何もない空間を炎でねっしてもらった。

熱された空気が揺らめき、光景が歪んで見える。

「陽炎……」

「ぱっと思いつくのはこれだけど……見た目だけ変えるのならいろいろやりようはある。ありがとうスカーレット」

「もったいないお言葉」

スカーレットは嬉しそうに、深々と頭を下げた。

あの時みた約束の地の光景。

それを見た目だけ再現するのなら半日もかからない。

今すぐにやってしまおうとおもったのだった。