軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

274.光と影

街のすぐ外に建築を始めた建物の中に俺はいた。

ブルーノが連れてきた職人を中心に、力仕事はギガースら、繊細な作業はノーブルバンパイアら、他の特殊な作業はその都度特性を持った魔物達らが分担し、アメリアのための会場は急ピッチで仕上がっていった。

そんな建造中の建物の中で、俺は様々な位置からステージを確認した。

本番のことを想像して、なにか問題が起きそうならそれを前もってつぶしたい。

そのためにいろいろ見て回って、思考を巡らせた。

それをラードーンも協力してくれた。

『本番には一万をこす魔物たちがはいってくるのだな?』

「ああ、みんなに聞いてもらうつもりだ」

『国のまもりはどうするのだ?』

「俺がやる。契約召喚で呼び出した俺を国境近くにいさせる」

『 分身(、、) の方をか』

「ああ、こっちの方も当日予想しきれなかった何かがおきるかもしれないからな」

『ふふっ、そうか』

ラードーンは愉しそうに笑った。

付き合いが長くなってきて、何となく分かってきた事がある。

ラードーンの笑い方は何種類かあって、今のは「他の何かの要素で楽しんでいる」場合の笑い方だ。

「なにかあるのか?」

『あの魔法の出来は悪くないが、分身体はオリジナルほどの力はない』

「ああ、持続力が特に問題かな。それ込みなら総合力は術者の6割ってところだろうな。…………」

『ふふっ、改良でもしたくなったか』

「ああ。だけどいくつか方法が頭に浮かんだけどどれも時間がかかりそうだ……『出来のいい魔法』から更に詰めるのは時間がかかるんだよな」

一から作り直した方がいいのかもしれない、そんな事を思っているとラードーンが真剣なトーンでいってきた。

『人間の画家がいっていた事を思い出したよ』

「画家?」

なんで今画家の話なのか? と不思議がったが次の言葉で納得した。

『うむ70点の作品は1の労力で出来るとすると、そこから80点にしあげていくには追加で10の労力がいるし、さらに90点までもっていくには追加で100の労力がいる』

「ふむ」

『95点ともなれば1000の労力をつぎこんでも行けるかどうかはわからなくなるし、99点は10000の労力をつぎ込んでもほとんど辿りつけない』

「あぁ……」

うめきにもにた同意の言葉が口から漏れた。

何となくその感覚がわかる気がする。

「…………その感覚だと、100点は全くの運任せだな」

『ふふっ。まったく同じことをいう。そうだ、1の労力で出来る事もあれば、後には引けず、一生涯かけて数百数千万の労力をかけてようやくできることもある』

「わかる気がする」

『巨匠どもと同じことを言う』

「巨匠?」

の話だったのか、とちょっと驚いた。

「……っていうか、その話じゃなかったよな」

『うむ、脱線がすぎたな。国境の防衛、人間どもの相手は六割程度の力で事足りる。それよりも演奏会の方に全力が必要になる――というお前の感覚が面白かったのだ』

「それはそうだ。だってアメリアさんの演奏だから」

『ふふっ、そうだな』

その事の何が面白いのか今ひとつ分からなかったが、言葉で説明されてもまだ理解できないってことは、そもそも俺には理解できないような話なんだろうと思って、だったら忘れることにした。

俺は気を取り直して、工事中の会場内を見回した。

「……」

ふと、何かが気になって、上を見あげた。

まだ骨組みの途中だが、徐々に天井ができつつある。

その骨組み段階の天井から差込まれる光が減って、半室内ともいえる会場は影が出来ている。

それである光景が頭に浮かんだ。

俺はまっすぐステージに向かっていった。

会場の中央にたって、360度客席を見渡せる造りのステージ。

それは一番最初に造られて、細かい仕上げは残っているが9割方完成している状態だ。

そこにあがった俺は【アイテムボックス】を唱えた。

アイテムボックスの中に手を入れて――。

「これでいっか」

と、数本の木の棒を取り出した。

木の棒を自分の前に立ててから、【ライト】の魔法を唱える。

前方に光が発せられ、俺を照らした。

俺の体に、木の棒の影が落ちた。

「……最悪だな」

『ふむ?』

「琴でアメリアさんの体に影が出来る。想像してなくてうかつだった」

『ふむ、たしかに見栄えはよろしくないな』

「出来れば避けたいな」

『全方位から光をあてて影を打ち消せばよかろう』

「そうだな――【ライト】11連」

多重同時詠唱で周囲に光を照らす魔法を放った。

するとラードーンのアドバイス通り、全周囲から光が照らされることで影は消えた――のだが。

「これじゃまぶしくなる。アメリアさんに変な負担をかけるのはだめだ」

『ならどうする?』

「……アメリア、エミリア、クラウディア」

『む? 数をふやすのか?』

俺は答える代わりに実際に魔法を使った。

「【ライト】――101連!」

ライトの魔法を放った。

本来の明るさの100分の1位のものにして、そのかわりに101連にして、周囲に満遍なくはなった。

弱く調整した魔法だが、101連同時のため前詠唱をつかった。

めちゃくちゃ弱いあかりも、101も集まればそこそこに明るくなる。

なによりも、101連になったおかげで、「101方向」から放たれた光で影が出来なくなった。

『ほう、上手いな』

「……これ一つの魔法にまとめる」

【ライト】101連だと前詠唱がいるが、何かの魔法一つに練り上げ、完成させれば普通に使える。

101――いや無数の微弱な光を放つ魔法を頭の中で改めてイメージしていった。