軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

251.追加注文

「……」

『何を考えている』

足元に広がっている空と雲を眺めながら考えごとをしていると、ラードーンがそれを聞いてきた。

「これは続けるものなのかっておもって」

『うむ、続けるぞ』

ラードーンは即答した。

「続けるのか」

『そもそもの話をしよう。今回はパルタ公国を締め上げるためにあれこれやっている』

「ああ」

『どこまで締め上げるのか――覚えているか?』

「どこまで……えっと」

俺は考えた。

「分かるか」じゃなくて「覚えているか」だ。

それはつまりラードーンが俺に話していることで、頭がどうこうじゃなくて純粋に記憶力の問題だ。

だから考えた――けど。

「……わるい、思い出せない」

『ふふっ、まあいい。和睦したあとも、講和条件がきつすぎて、耐えかねて反発してくるまで、が今回の目的だ』

「あっ、そうだったそうだった」

ラードーンにいわれて思い出す俺。

聞いた事のある話だから言われれば思い出すことができた。

「そうか、じゃあスカーレットが今やってる交渉が終わった後も続けるものなんだな」

『正解だ』

「じゃあこれも自動で出来る様にした方がいいよな」

『いいや、逆だ』

「え? でも長くやるんだろ?」

『長くやるが、こっちがやったこと、というのを見せねばならん。単に干ばつを起こしただけでは神を恨むだけで終わりかねん』

「そっか、あくまで俺達が締め上げている、だからか」

『そういうことだ。だからお前が今腐心しているような、インフラの全自動みたいな仕組みはまったく必要が無い。むしろ簡単でもみて分かるような形が最善だ』

「じゃあ簡単な魔法にするか……いや」

俺は少し考えると、すぐさま自分の言葉を否定した。

『どうした?』

「新しい魔法は別にいらないって思ってさ」

『ほう?』

「雨を降らせるこの方法。要するに雲のある高さまでとべて、氷魔法が使えればいい訳だから、飛べる魔物もいるし、そのもの達に氷魔法を使わせればすむ事だ――って思ってさ」

『……すごいな、お前は』

「へ?」

いきなりなんだ、と、ちょっと間抜けな感じの声がでてしまった。

今の話から「すごいなお前」が出てくるのは全くの予想外で、聞いても何でそれが出てくるのかピンとこなかった。

『我はまだ、少しお前を見誤っていたようだ』

「どういうこと?」

『お前の事だから、新しい魔法を開発するだろうと思っていたのだ。そう……必要が無い時でも』

「……」

『必要が無ければ既存の組み合わせでやれる。考え方が凝り固まっていない証左だな』

「それって……」

俺は首をひねって考えた。

「……すごいことなのか?」

『凡百どもは己の成功体験に引っ張られるもの。しかも至近のものにな』

「うーん、分かるようなわからないような」

『ふふっ、お前はそれでいい。我が思っていたよりも一段階上の男だったというだけのはなしだ』

「はあ……」

『魔法を本当に知悉していなければその発想もないだろうが』

「あっ、それは嬉しい」

ラードーンの言葉から「魔法を本当に知悉している」、つまり本当によく知っているっていう評価が出てきたことは素直に嬉しかった。

いったのがラードーンで、内容は「魔法」。

二重に嬉しい評価だった。

『それはそうと。必要はないが、もしも作ろうとすればどのようなものにするのだ?』

「そうだな……ぱっと思いつくのが一個あるけど……」

『けど?』

「実際にやって見せた方が話が早いだろ」

『ふむ』

俺はまわりを見回した。

雲が雨になって降りだしたから、「使える」雲が近くにはなかった。

少し高く飛んで、離れた所にまだ降り出していないであろう雲を見つけて、そこに向かっていった。

その雲の真上にやってきて、ピタッととまる。

「【アイテムボックス】」

魔法でアイテムボックスを呼び出して、中から白い物をとりだした。

『それは……なんだか懐かしいな。例の木炭か?』

「ああ、魔法を覚えて最初の頃につくった白炭だ」

『それをどうするのだ?』

「こうする」

俺は白炭を粉々にして、真下にある雲に撒いた。

粉々になった炭が雲に撒かれていった。しばらく経つと、その雲からも雨が降り始めた。

「予想通り……いや、上手くいってよかった」

俺は少しホッとした。

さっきのとはまったく違うやり方だったから大丈夫かって思ったけど、上手くいってよかった。

それでホッとしていたら、すかさずラードーンがきいてきた。

『ほう? これはどういうことだ?』

「ガラスと同じだよ。雲だけじゃなくて、水気が何かにくっつけば水に戻る」

『なるほど、その媒介――いや種のようなものか。それを灰を振りかけることでやったわけだな』

「そういうことだ」

『ふふ、よく考えつく』

「アオアリ玉を包むために使った【オブラート】を応用すれば、地上から灰を簡単に打ち上げられる。そうなれば飛ぶための魔法も特性もいらなくなる」

『うむ、地上から打ち上げられるのは一つのメリットだな』

「あとは……コントロールがめちゃくちゃ難しくなるけど」

『ふむ?』

「ちっちゃい粒をここまで届かせればいい訳だから、のろしを上げるような魔法でもいいのかもしれない」

『なるほど。しかしそれはコントロールが難しそうだな』

「確かに」

『ほかには?』

「そうだな――」

空の上で、俺はラードーンの質問に答えるべく、必要の無くなった新しい降雨魔法の方法を考え、説明し続けたのだった。