軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

247.予想外

「……にしても」

「うむ? どうした」

「この……アオアリ? は普通のアリなんだよな」

「そうだな。別の蟻塚を見つけて巣穴に水攻めでもしてみるか?」

「そんな子供みたいなことしなくても」

俺は苦笑いしたが、ラードーンがいいたいことは何となく分かった。

子供の頃、アリに限らず、いろんな虫で「遊んだ」事がある。

それは俺に限らず、まわりの同年代の子供とか、大人になってからみた年下の子供たちとかも同じような事をやっていた。

家の近所とか、すんでいる地域とか、そういうレベルじゃなくて、普遍的にやられてる事みたいだった。

そんな、アリの巣穴の水攻め。

ラードーンがそれを持ちだしたのは、子供の水攻めでどうにかなってしまう程度には「普通の虫」という事がいいたいからなんだと理解した。

「そんな普通の虫が、なんでこんなすごい……素材? を作ってるんだ?」

「さあな、諸説はあるが、そもそもどんな生き物だろうが、巣作りをする時は好みの材料ばかりどこからともなく探して集めてくるものだ」

「……ふむ」

「アオアリのこれは今まで活用のしようがなかったが、人間基準だと確かシロアリのはかなり価値が高かったと記憶しているぞ」

「シロアリ? なんで?」

「シロアリが好む土は粘土としての質が高いそうだ。陶器作りには最適と聞いた事がある」

「へえ……そうなんだ」

目の前にはないけど、シロアリのその話はアオアリのよりも簡単に想像が出来て、納得も出来た。

「燕の巣もあるし、人間にした所で、貴族の家を探したら何故か黄金が大量に集まっているではないか」

「あはは、確かにそうだ」

生き物は巣の中にそれぞれ特定の物をかき集める、と言う意味ではアオアリのこれも人間の黄金もそう変わらないってことか。

「これってどれくらいの熱まで耐えられるんだろ」

「さあな、我がかなり本気になっても溶かせなかったのは確かだが、しゃかりきになってやり続けた訳でもない」

「そうか、じゃあ明日試すか」

「あした?」

「予想よりも更に長時間熱に耐えられるんなら、朝一から始めた方がいいだろ」

「なるほど」

ラードーンは頷き、話はおしまいだ、といわんばかりに姿をけした。

姿が消えた直後、体の中に圧倒的な存在感を感じた。

その圧倒的な存在感で静かに入ってくる。

俺は何となく、巨漢が体を小さくして狭い扉をくぐって通った――そんな光景を想像してしまって、ちょっと面白く感じた。

「【アイテムボックス】」

アイテムボックスを開いて、常に大量にストックしてある水を取り出した。

アイテムボックスをアオアリの蟻塚――もはや「骨組み」しか残っていないそれの少し上であけて、水を直接ぶっかけた。

すると――爆発がおきた。

水を受けた蟻塚の骨組みは一気にその水を蒸発させて、一瞬で膨張した水蒸気がまるで爆発を引き起こしたかのように広がった。

いや、まるで、とかじゃない。

「あちち……本当に爆発だな、これ」

『ため込んだ熱が一気に放出されればこうもなる』

「たしかに、魔晶石も似たような使い方が出来たっけ」

『冷えたあとはそれはそれで面白いぞ』

「どれどれ……あー、本当に土っぽいっていうか、粘土っぽいな」

水を掛けて、その水蒸気も収まった所で、しゃがみ込んで残された蟻塚の骨組を手で触ってみた。

冷えたあとで蒸発しきれなかった水がすこし残っているせいか、粘土か泥のように、いかようにもこねくり回して形を変えられるものになっていた。

これが熱という観点で、ラードーンの全力にも耐えられるというのはすごく面白いなと改めて感心したのだった。

翌朝、魔物の街が見える程度の野外。

離れすぎる必要もなく、かといって実験だから街の中という訳にもいかなくて。

俺は街が見える程度の野外にやってきて、アイテムボックスからアオアリのそれを取り出した。

こぶし大の泥団子になっているそれをちょっと摘まんで、親指と人差し指で捏ねて、小さな豆くらいの大きさにした。

『それくらいでよいのか?』

「実験だし。なによりこれくらいでもどこまで耐えられるのかが知りたい」

『なるほど』

納得してくれたラードーン。

俺はその豆粒大にしたのを空中に浮かべた。

そして前詠唱してからの、【ミラー】を最大数の101枚だした。

101枚の魔法の鏡が、晴れ渡った青空から太陽の光を集めた。

それが全部、一斉に泥豆にあつまった。

黒ずんで文字通り「泥」にも見えてしまうそれは、あっという間にまぶしく、白く輝き始めた。

そうして、じっくり見守る。

この太陽の光を集めるやり方。

一分がたった。

「かなり持つな」

『そのやりかた、今までだと数秒程度でかなりの成果を出していたものな』

「ああ、一分もこれを続けるなんて思ってもいなかった」

『我が熱ではどうしようもなかったのは納得出来たか?』

「今でもまだ信じがたいけど」

『ふふっ』

ラードーンと話ながら、それを見守り続ける。

あっという間に時間がたっていって、5分くらいがたった。

その間、集束太陽光にてらされ続けるそれは白い輝きを発したまま、変化はなかった。

「変化はない……けど」

『うむ、当てているのは光だ。何かしらで破壊できていれば光がとうに貫通している』

「だよな」

『ここまで来ると我も俄然楽しみになったぞ』

「俺もだ、どこまで行くんだろうか」

そのまままった、じっと待ち続けた。

五分を超えて、十分くらいになったところで。

「……本当にあてつづけてるんだろうか」

と、思わず言葉にだしていってしまった。

いってから「しまった」とあわてて口を押さえたのだが。

『恥じることはない。こうも変化がなければそう思いもしよう』

「そうか。……見た目だと当て続けてるはずなんだが」

『どうする? まだ始まって十分。一度確かめてみるか?』

「そうだな」

俺は小さくうなずいた。

別日にしたこの実験。それは「太陽光」という、時間制限のあるものを最大限活用しようとしたからだ。

だけどラードーンのいうとおり、まだ十分しかたってない。

このタイミングで一度試しても大丈夫だろうとおもった。

俺は魔法の鏡をといた。

集束の太陽光が照らされなくなっても、それは白い輝きを放ったまま。

「これを……地面でいいか」

『ふふ、水でもよいのだぞ』

「どう考えても大爆発する」

昨日はそうだった。

今日のは十分とはいえ、昨日よりもかなり長い時間の光をあつめた。

熱を昨日より蓄えているのは間違いないし、なにより水をかけての爆発じゃよく分からない。

爆発は「一瞬で広がり」すぎて、判別が難しいのだ。

俺は溶岩の事を思い出した。

「地面でいいか」

『妥当だな』

ラードーンのお墨付きをえたから、俺は浮かしているそれをゆっくりと地面に下ろした。

白い輝きを維持したまま、豆粒大のそれが地面に下ろされた――瞬間だった。

「――【あぶ】」

直感が働いた、としかいいようがない。

触れた瞬間輝き――光が溢れたから、俺はシールドを張りつつ、後ろにむかって大きく跳躍した。

逃げたのだ。

それとほぼ同時に爆発がおきた。

昨日の水をぶっかけたとき以上の――それの数十倍は巨大な爆発がおきた。

途中でどうにか【アブソリュート・フォース・シールド】、物理をシャットアウトする魔法障壁をはりつつ、更に後退する。

爆発が全身を飲み込んだ。

更に速度をあげてとにかく後退する。

全身をガードしつつ、どうにか「爆発」から抜けたあと、俺の目に映ったのは。

「……うそ」

半径五十メートルはあろうかという、綺麗な半球形をしたクレーターだった。

溶岩すらなく、そのクレーターには「えぐり取られた」かのように、跡形もなくあったものが消え去っていた。

『……すごいな』

ラードーンも、その光景に絶句していて。

俺は、アオアリの蟻塚から取れたそれが、ちゃんと照射し続けた分のエネルギーを取り込んでいたんだなと理解した。