軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

239.すでに偉業

リアムの部屋の中。

リアムは椅子に座っていて、目の前のテーブルに魔晶石ブラッドソウルのかけらを置いて、それをじっと見つめていた。

少し離れた所で人の姿になったラードーンとデュポーン、そして眠りから覚めてピュトーンがやってきて。

少女姿のドラゴンたちが三人で向き合っていた。

その中でも、戻ってきたばかりのピュトーンが、一心不乱なリアムの姿を不思議がった。

「彼、何をしているの?」

「魔晶石の『溶け方』を観察しているといっていたな」

「溶け方?」

「うむ。それが次の魔法をどうこうするために必要な事だといっていた」

「そう……」

「ああん、研究熱心なダーリンも素敵!」

「邪魔をするでないぞ」

「しないわよ! あんな素敵なのにぶち壊すなんて。あんたじゃあるまいし」

「ほう……我の事をどう思っているのか、一度その体にじっくり聞く必要がありそうだな」

「やっぱりあたしに喧嘩売ってるのあんた。いいよ? ぶっ殺してあげるからかかってきなよ」

「やめなよー。殺し合いはピューが寝た後にして」

部屋の中、一触即発の剣呑な空気になった。

デュポーンはストレートに怒りの形相になり、ラードーンは表情こそ笑っているが目がまったく笑っていない。

ピュトーンもふわっとしているが、言外に「それ以上やったらぶち殺すぞ」と殺意を隠そうともしない。

元々殺し合いをしていた三人は、何かある度にこうして一触即発の状態になってしまう。

もっとも、これも過去の彼女達をしる者からすればかなり平和になったと驚かざるをえない状況だ。

そうやって彼女達が平和になったのも――。

「――やめよう。ここであやつの思考の邪魔をしたくない」

「むっ……確かに。ダーリンの邪魔はしちゃだめだよね」

ラードーンが先に矛を収めて、デュポーンもそれに乗っかった。

三人が殺意をぶつけ合う中、リアムはまったく動じず、それどころか気づいてもいない位の感じで、ひたすら魔晶石ブラッドソウルの観察を続けていた。

「さて、すこし真面目な話をしようか。そのために我が出てきたのだ」

「なにさ。話があるんならちゃちゃっとして」

「面倒臭いからもう寝ていー?」

「あやつをどうするのか、それを一度言葉として聞いておきたくてな」

ラードーンはピュトーンの言葉を無視して、話を進めた。

「どうするのかって?」

「どうしてあげたいのか、と言い換えてもいい。特にお前は惚れた相手の種族にちょこちょこなるくらい献身的なのだろう?」

「いいジャン別に」

「悪いとはいっていない。実際、相手の男に取った天下を献上もしていたのだろう?」

「だからいいじゃん別に」

「だから悪いとはいっていない」

「だったらなによ!」

「けんか腰にならんで黙って聞け」

デュポーンとラードーンはまたまた一触即発の険悪ムードになった。

「きいてどうするの?」

ピュトーンがやはり殺気は出しつつ、しかしすこしだけ話を先に進めた。

それをうけて、ラードーンも少しだけ殺気を抑えて、答えた。

「まずは確認。かぶらぬのならそれでよし」

「……まっ、たしかにかぶったらやだもんね」

「そういうことだ。世界を代わりにとって献上するなどまさにな。世界は一つしかない、そして――」

「この三人ならだれでも普通にとれる」

ピュトーンがいい、他の二人も小さく頷いた。

「そうだ。大抵のことは我らなら一人でもやれる。かぶらなければよし、かぶるのであれば――」

「ここで誰かに退場してもらうしかないわね」

「……」

デュポーンがいい、真っ先に殺気を高めた。

ピュトーンは無言だったが、やはりリアムに懐いているからか、デュポーンに対抗するような形で殺意を剥き出しにした。

ラードーンも同じだった――が、こっちは対話の発起人と言うこともあってか、あるいは既にデュポーンとぶつかってピュトーンにたしなめられたからか。

やや抑えめに話を続けた。

「殺し合いは全員が表明したあとでも良かろう。かぶらなければ何も問題はないのだからな」

「まっ、それもそっか」

「……うん」

「お前はどうするつもりだ」

「ダーリンを世界の覇王にする! きまってるでしょ。ダーリンが言ってくれたら明日にでもここに世界中の首脳の首を並べるよ」

「わかりやすいな、そうだとは思っていた」

「なによ、わるいっての?」

「いいや。わからん話でもない。我もメスだからな」

「ふん……かっこつけちゃって。そっちのあんたは?」

「ぴゅーは彼とえっちしたい」

「それは予想してなかった。直截にもほどがあるのが貴様らしいが」

「ぴゅーとふれあっても大丈夫な人は何百年ぶり。ふれあえる存在で、一番都合のいい存在になりたい」

ピュトーンの告白はあけすけだったが、ラードーンもデュポーンも驚きはせず、否定はしなかった。

今現在の自分達の考え方とはちがうが、「数百年ぶりに巡り会えた希有な人間」という意味ではピュトーンとデュポーンの出発点はまったく同じだからだ。

「そういうあんたはどうなのよ」

「我か? ふふ、我ながら茨な道を選んだのかもしれんと自分で思っているところだ」

「まわりくどいわね、さっさといいなさいよ」

「わからないけど、かぶらないだろうから、べつにいい」

「そうかもしんないけど、いいなさいよ」

「うむ」

ラードーンは頷き、一度リアムの方をみて、言った。

「あれほどひたむきな子だ、望むなら魔法を極めるまでサポートしてやろうとおもってな」

「うーわー、ふわっとしすぎ」

「どこまでが『きわめる』なの?」

「我ながら茨な道といっただろうが」

「ま、そうね」

デュポーンが言い、三人は一度視線を絡ませ、やがて頷き合った。

「って事は誰もかぶらなかったって事ね」

「そういうことだな」

「めんどうくさくなくて、いい」

「あとはまあ、一つだけわかったこともある」

「そうだな」

「うん」

三人はまた頷き合って、リアムの方を見た。

三人の共通認識、それは、リアムの敵は自分の敵。というものだった。

彼女達のことを昔から知っているモノであれば驚きだっただろう。

限定的とは言え、この三人が同じ目的のために、ある意味手を取り合うなんて。天と地がひっくり返ってもあり得ない事だったからだ。

それを成し遂げたリアム。

本人は自分が成し遂げたことの大きさをまったく理解していなくて。

ただひたすらに。

「法則性……ありそうなんだけどな……」

憧れ続けて、今は手が届く魔法の事だけを考えていたのだった。