軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

224.スカイリンク

四人を見送った後、俺はそのまま待機した。

「ラードーンに待ってる間どうしようかって聞いておけば良かったか」

手持ち無沙汰になって、何をすればいいのか悩んだ。

結果、「魔力はいくらあっても困る物じゃない」と、覚えたばかりの【アナザーディメンション】で次元の壁を開いた。

開いて、向こうから 何か(魔力の素) が飛んで来るのを待った。

「……なんか釣りみたいだな」

しばらくぼうっと待っていると、そんな感想が浮かんできた。

セットをして、向こうから来るのを待つ。

向こうから来たらそれを逃さずにしっかりキャッチする。

釣りとかなり似ていた。

だったら釣りのように、エサとか投げ入れる箇所とか、そういう工夫が出来ないものか、と考え出したその時だった。

『よろしいでしょうか、ご主人様』

何もないところからレイナの声が聞こえてきた。

一瞬戸惑ったが、すぐにレイナがリアムネットの新機能を使って、音声による連絡を取ってきたのだと分かった。

「ああ。何かあったのかレイナ」

『お忙しい所すみません。ただいま進軍しておりましたが、人間側の9割9分が突如昏倒するという事態が発生しました』

「ああ、それならこっちがやったことだ」

なるほど、と俺はうなずいた。

ラードーン達四人が散らばって、【ヒューマンスレイヤー】をかけてくれている。

その効果が出始めたんだ。

その事はレイナ達先遣隊には伝えてなかったことを思い出した。

「悪い、知らせるのを忘れてた。迷惑かかったか?」

『とんでもございません、これにより進軍がスムーズに行きました』

「そうか」

『完全に昏倒しないのは何か意図があっての事でしょうか』

「うん?」

俺は小首を傾げた。

そういえばさっきも、レイナは「9割9分」っていってたっけ。

全部じゃない……のか?

「全部に効果が発揮するようにしたはずなんだけど、【ヒューマンスレイヤー】は」

『【ヒューマンスレイヤー】……ということは、ご主人様が新たに開発した魔法ということでよろしかったでしょうか』

「ああ、今回の一件の元凶、【ドラゴンスレイヤー】とほぼ同じ効果で、対象が人間に変わっただけの魔法だ」

『であれば――さすがご主人様でございます。二重の意味で』

「二重の意味?」

俺はますます首をかしげた。

「一つは【ヒューマンスレイヤー】を作ったことで、もう一つは?」

「はい、いま改めて昏倒しなかった者達を検めさせていただきましたが、いずれも亜人か、亜人とのハーフでございました」

「……ああ!」

いわれて、はっとした。

【ヒューマンスレイヤー】は「人間」のみを対象にした魔法。

【ドラゴンスレイヤー】でラードーン、デュポーン、ピュートンの三人でも倒れてしまったように、【ヒューマンスレイヤー】を喰らってしまうとどんな人間だろうと対抗できない。

だけどそれはあくまで人間相手のはなしで、極論踏めばつぶれるアリとかに【ヒューマンスレイヤー】をかけても何も起こらない。

それは、ハーフも同じだった。

人間の社会の中に結構数がいる、人間と他種族との間に生まれたハーフたち。

そのもの達には【ヒューマンスレイヤー】は本来の効果を発揮しない。

「うーん、失敗じゃないけど、盲点だったな」

『はい、しかし、これはすごい事だと思います』

「どういう事だレイナ?」

失敗は失敗、これの何がすごいのか分からず、首をかしげて聞き返した。

すると、リアムネットを通してレイナのあの冷静な、しかしどこか興奮しているのが窺える口調の返事が返ってきた。

『改めて精察いたしますが、ご主人様の【ヒューマンスレイヤー】はとてつもない精度で人間とそれ以外を判別出来ていると感じました』

「……ああ、そうだろうな」

それには――魔法の事だからその事にはちょっと自信がある。

人間相手にはきいて、そうじゃない別種族にはきかなかった。

人間かどうか判別した、と言う意味ではかなりの精度でやれたと思う。

たぶん――100%分けられていると思う。

『相手が人間かどうかを判別する魔法としても活用できるかとおもいました』

「ああ、なるほど。……ありがとうレイナ」

『はい、なんでしょうか』

「対象を限定して、そうじゃないものを選別する。魔法の幅がめちゃくちゃ広がった」

『お役に立てて光栄でございます』

リアムネットの向こうで、レイナの感動したような言葉が聞こえてきた。

「そういえば、レイナだけなのか? 他のみんなは?」

『ご主人様のリアムネットを利用するため、一度領内に戻って参りました』

「そっか、領内かあらかじめ持たせた媒体がないとだめなんだっけ。兄さんに持たせたもののように」

『はい』

「ふむ……レイナは、どこにいても見られるものって聞かれて、何を連想する?」

『どこにいても……ですか』

「ああ」

『月……でしょうか』

「月?」

『はい。人間達の間では、故郷から離れても変わらない月を見て、遠い故郷に思いをはせて郷愁を紛らわせるのだとか』

「あー……なんか聞いた事あるようなないような」

なるほど、と俺は思った。

「しかし月か。月だと夜しかないんだよな」

『では空はいかがでしょう』

「なるほど、空か」

俺は頷き、空を見上げた。

確かに空はどこにでもある。

一瞬空気というもの考えたが、意識したときに「ある」って認識出来るものの方がいいだろうと思った。

だから空にした。

俺は少し考えた。

頭の中で魔法の詳細をまとめた。

「名前は……【スカイリンク】とかかな」

どこにいても、空さえ見えていればリアムネットが使えるようになる。

今までは必要なかったけど、領外にでる事が増えるかも知れないから。

この魔法を、ラードーン達が戻ってくるまでに作ってしまおうとおもった。