軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

222.無条件の信用

「ぐぐぐぐ……うわっ!!」

力が弾ける。

無理矢理こじ開けようとした扉が、開ききる前に反発して、それまでにそそいだ力を俺ごと弾き飛ばした。

101連を同時に発動させられるほどの魔力が一気に俺を襲って、俺は数十メートル吹き飛ばされて、地面にめり込むほど叩きつけられた。

「いっっったぁ……」

失敗がそのままダメージになって、俺の身に降りかかってきた。

一瞬、回復魔法を自分にかけようとも思ったが、魔力の無駄使いはやめることにした。

俺は立ち上がって、今の失敗を振り返る。

感じた事はいたってシンプル。

バネが強い上に、複雑な仕掛けがある。

かなり力を入れないといけない上に、精密な操作も要求される。

力強さと精密さ、その両方を要求されて、失敗したもんだからバネが弾いて自分の指を挟んだ――そんな感じだ。

俺は残った魔力で飛び上がって、開いた次元の穴の所に戻ってきた。

軍服姿のドラゴンたちはそこにいたまま何もいわなかった。

俺は一度ラードーンの方をみた。

目があって、ラードーンは何もいわなくて、「ふっ」とだけ笑った。

それが「お墨付き」のように思えた。

魔法の事は分かる。

俺がやったことは間違いではない――少なくとも方向性は。

あとは回数の問題だけだ。

101連で一気に魔法を覚えてしまおうとしたが、101回では回数が足りなかっただけで、方向性自体は間違っていない。

そう思って、念の為に前世のラードーンに視線で確認して、ラードーンは「問題ない」といわんばかりの笑顔を返してくれた。

だから俺は続けた。

残った魔力をかき集めて、再チャレンジした。

何回か繰り返したあと、デュポーンが開いたのとは違う、小さな次元の穴が開いた。

「すごいわね」

デュポーンが感心した様子でいった。

「人間なのに【アナザーディメンション】を覚えたのって史上初なんじゃないの?」

「【アナザーディメンション】っていうんだ。うん、ディメンションって名前がつく魔法はいくつか覚えてるから、それで体が何となく分かってるのかも知れない」

「にしたってねえ」

「でも覚えて良かった」

「これで魔力が使い放題じゃな」

「うん、これで四人を維持していられる。今回の事が終わった後も」

「「「「…………」」」」

俺がいうと、目の前の四人――過去のドラゴンたちはそろってきょとんとなってしまった。

「あれ? どうしたんだ? 俺何か変な事をいった?」

俺は自分の言葉を振り返った。

「あんた達の維持にかなりの魔力がいる、【アナザーディメンション】で向こうから魔力を引き出せれば維持出来る……間違ってたか?」

「魔法の理屈という話なら間違ってはいないのじゃ」

「だよな」

ラードーンにいわれて、俺は少しほっとした。

魔法の事はわかる――って最近は思うようになったけど、それは逆に言えば魔法の事で勘違いしたら他の事以上に恥ずかしいって感じちゃう、って事でもある。

そうじゃなくて良かったとホッとした。

「そうじゃないんなら……なに?」

「わしらのためにそれをやっていたのに驚いたのじゃ。のう?」

「そんな事を考えてたんなんてね」

「その口ぶりからして、私達を戦力として見てるわけでもなさそうなのが驚きに拍車をかけたのよ」

「はあ……なるほど?」

何となくいいたいことはわかったけど、それってそんなに驚く事なのかなと不思議に思った。

不思議に思っている間も、俺が開いた次元の扉の向こうから何かが飛んできた。

今度はただの岩で、隕石のようだった。

人工物じゃないからさきほどの魔力にはならなかったが――体に取り込んで、ラードーン達の維持に回した。

早速思った通りの事ができた。

この【アナザーディメンション】なら維持出来る――と実際に実証して見せた。

ラードーン達四人をこの先も維持していられる――魔法でそれが出来る。

新しい魔法で目の前の障害を取り除いたことが俺に大きな達成感を与えてくれた。

これが出来るのなら。

これほどの障害も乗り越えられたのなら、現在のラードーン達三人もきっと助けられる。

魔法ならそれが出来る。

達成感とともに、確信の伴った自信も得られた。

「小僧よ、一つ提案があるのじゃが」

「提案?」

「そうじゃ。人間どもをより大きな絶望に陥れて、【ドラゴンスレイヤー】の解除を引き出す方法じゃ」

「俺は何をすればいいの?」

「話はかんたんじゃ、今お前の配下の魔物どもに人間の街を襲わせている」

「そうなんだ」

「そいつらをそこそこの所で引き上げさせて、小僧がその後を引き継ぐ」

「俺が人間の街を襲えばいいの?」

「いいや、とある魔法を開発し、それを向こうの全国民相手に放つ。それだけじゃ」

「とある魔法って?」

そんないい物があるのかな、そう思い不思議そうに聞き返すと、ラードーンはふっ、といたずらっぽく笑った。

「【ヒューマンスレイヤー】」

「わかった」

俺は二つ返事で承諾した。

魔法そのものを出来るかできないかといわれれば問題なく出来る。

要するに人間だけに特効性を持つ魔法のことだ。

魔法自体は簡単だし、全国民相手に放つのも異次元の魔力で詠唱すれば問題なくいける。

持続じゃない瞬発的なもので良さげだから、街の都市魔法も応用出来る。

できるから、即答した。

「疑問はもたぬのじゃな」

「あるけど、魔法以外の事はラードーンのいう事は無条件に聞くようにしてる」

「……」

ラードーンはポカーンとなった、その少し後ろでデュポーンが。

「殺し文句ね」

と、複雑そうな顔でつぶやいていたのだった。