軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

216.雨漏り

「ん?」

ふと、俺はある事に気づいた。

勘違いかも知れない、それを確認するため四人をまじまじと凝視する。

「どうしたのじゃ?」

「なんか……漏れてる?」

「うむ、そうじゃな」

あやふやな俺の言葉を、前世ラードーンは即答で、しかもはっきりと認めた。

「さっきから漏れてるよ……これは……魔力か?」

「たぶんこの先もっと漏れがひどくなって行くと思うよ」

前世のデュポーンがことも無げに言い放った。

魔力が体から漏れているっていう、明らかによくない状況なのにあっさりとしているデュポーン。

他の三人も似たような感じの表情だった。

「そっか、大丈夫なのか」

「大丈夫じゃないよ」

「え?」

彼女達の反応からそう思った俺だったが、どうやらちがったようだ。

「この肉体を構成しているのは今のわしらの力じゃ」

「ああ、そうだな」

そこは前のラードーンと同じだった。

【オーバーソウル】で俺の魂を広げていったんは俺の中に迎え入れたが、実体化してるときには俺の魔力とか力とは関係がない。

それは今でも同じようだ。

「わしらの生命力がこのまま弱くなってくれば、雨漏りも更にひどくなるじゃろうな」

「雨漏り……なるほど」

前世であっても、ラードーンのたとえはわかりやすかった。

「ひどくなる前にどうにかする……やることは変わらないな」

「そういうことね」

「それで、具体的にどうするのか分かっているのかしら?」

ピュトーンが聞いてきた。

自分のことなのに、生き死にがかかっているはずなのに、彼女の表情は穏やかだった。

「ああ、さっき空から確認したら、七本の魔力が大地を伝って、【ドラゴンスレイヤー】を支えている感じだった」

「なるほど、拠点型の大規模魔術じゃな」

ラードーンが言い、俺は小さく頷いた。

ハミルトンの屋敷にいたときによんだ魔術書のなかにそういう知識が記されていた。

魔法のほとんどは人間なり魔物なり、「個体」が自分の持つ魔力をつかって発動させるものだ。

しかし一部の大規模な魔法は、いろいろと条件が揃った場所で、その場所に集まる自然の魔力をつかって行使する。

「【ドラゴンスレイヤー】はたぶん……いや間違いなく、七つの拠点で術式を支える構造になっている」

俺は途中で言葉をかえて、言い切った。

「そういうものだったのね……やっかいだわ」

「こういうのって発動しちゃうと一本二本きっただけじゃダメだよね」

「そうじゃな、発動後は七本全て断ち切らねば、いかにわしらの力でも振りほどくことはかなうまいな」

目の前の彼女達は俺の説明に納得し、さらに全員が俺以上に賢いので、一度理解するとたちまちその事まで全てが理解できたような感じだ。

「そう、だから今からタイムリミットまでに七つの拠点をつぶさないといけない」

「なんで魔物達を動かしたの?」

前世のデュポーンが聞いてきた。

「え?」

「あたしらをこうすることができるんなら、後はあたしらだけでやれるじゃん」

「ああ、そういうことか……多分だけど、正しい順番で解いていかないといけない。同時にじゃダメ……そんな感じがした」

「うげえ、そういうやつ? めちゃくちゃ意地悪じゃんその魔法つくったやつ」

「殺意が高い――私達をそれほど畏れていた、と評価すべきなのかも知れませんわね」

「順番は全て分かっているのか?」

「分からない。今の所は一番だけ。たぶん、一本目切ったら二本目が分かって、二本目きったら三本目が……そういう風に順番に分かっていくんだと思う」

「手分けは無理という訳じゃな」

俺は小さく頷いた。

彼女達を殺す為の魔法、【ドラゴンスレイヤー】。

前世ピュトーンが言うように、ややこしいのはそれだけ彼女達のことを畏れて、「必殺」を期して万全な形で仕込んだからなんだろうと俺も思った。

「しょうがない、じゃあ全部あんたに任せる。あたしはあんたに従うよ」

「そうですわね、私もそうします」

「ここで死んでももう一度生まれ変わるだけじゃが……まあ、今生の別れの時間くらいは作ってやるか」

ラードーンたちはそれぞれの言葉で乗ってきた。

「なにあれ、変な格好」

空の上から地上を見下ろしている俺達、前世のデュポーンが失笑気味にそんな事を言い出した。

俺達の視線の先には魔物達が行列をつくって行進している。

国境の赤い壁を越えてパルタ公国の国境内を進軍しているその姿はかっこよささえ感じたが、デュポーンの目にはまったく違うイメージに映ったみたいだ。

「変な格好?」

「全員なんか着込んでるじゃない? 鎧みたいなの」

「ああ、それは魔導戦鎧っていうんだ」

「魔導戦鎧? なにそれ」

「知らないのか? ラードーンから教わったヤツを俺なりにアレンジした物だけど、基本は一緒なんだけど」

「こいつの? ああ、あれか」

前世のデュポーンは前世ラードーンの方をちらっと見て、ポンと手を叩いた。

それを受けて、ラードーンも口を開く。

「魔導戦鎧か、たしか人間がその名前で呼んでいたな」

「……あっ」

『あれは我の力で作られた、人間が魔導戦鎧と呼んでいるものだ』

「そうだったそうだった。ラードーンもそんな事を言ってた」

俺ははっとして、思い出した。

確かにあの時、ラードーンはそんな事を言ってたっけ。

たしかにそうだった。

いつの間にかラードーン自身がそう呼んでたって思い込んでた。

「……結構な代物のようね。あれ、全部あなたが作ったんですの?」

「ああ」

俺は小さく頷き、ピュトーンの方を向いて、答える。

「普段は中々使う機会がないけど、今回は失敗できないから」

「そうなの」

「まあ、あれなら砦はたぶん問題なく――」

言いかけて、言葉が止まる。

頭のなかで何かがひらめいた。

「どうしたのじゃ?」

「……いける」

「うむ?」

俺は行進を続ける、魔導戦鎧の群れを見て、そして四人をみた。

「たぶん……いける」

「なにがよ」

「 雨漏り(、、、) を止めるの」

いうと、彼女達はすこしびっくりしたような、そんな表情に変わった。