軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

200.魔法なら……

ゆっくりと目を開ける。

さっきまでの感覚が残っているのか、まだ目が少しチカチカしていた。

それでも――。

「ラードーン……デュポーン?」

なんでここにいるのか? って疑問に思えるほど、はっきりと二人の姿を目で捉える事ができた。

「何をしたのだ?」

「え?」

「自力で戻ってくるなどあり得ぬ話だ」

「……ああ」

少しきょとんとなった俺は、思い出してポンと手を叩いた。

戻ってきた(、、、、、) 事で感覚と記憶が少し混乱していたが、改めて意識することではっきりと思い出せた。

「まずかったかな。全然手足とか動かせなかったもんで、唯一動かせそうな魔力を引っ張ってみたんだ」

「……」

「……」

「魔力のほうが手足よりも上手く扱えるって事になるのかなこれ。それは地味に、いやすごく嬉しいな」

自分で言って、言葉にしてみてよりいっそう嬉しさがこみ上げてきた。

憧れの魔法、その魔法の源である魔力。

その魔力を手足以上に扱えるというのは俺には本当に嬉しいことだった。

遅れてこみ上げてきた嬉しさをかみしめていると、ふと、ラードーンが複雑そうな顔をしているのと、デュポーンは目をきらきらさせているのが見えた。

「どうしたんだ?」

「ダーリンのすごさに感動してるの!」

「……つまり、お前は魔力をうまく扱えるから、我の手助け無しに魔力を回収した、ということか」

「あ、ああ。そういうことなのか」

「……まったく、なんと言う男だ」

「まずかったのか?」

「いいや、何もまずいことはない。お前ならそうだろうな、と納得できる範疇だ」

「驚いたけどね!」

デュポーンはそう言い、俺にぎゅっと抱きついてきた。

今ひとつよく分からないけど、まあいっかって思った。

「……あれ?」

「どうした」

「目がチカチカするの……治まらない?」

訝しむラードーンにそう答えた。

そして改めてまわりをよく見た。

戻ってきてから目がチカチカしていた。

落ち着けば治まると思ったが、未だに治まっていない。

むしろ何も変わらない。

チカチカしていると思っていたのも、落ち着いてみればチカチカとは少し違う感じがした。

「それが死霊魔法を扱う人間が見ている世界だ」

「え?」

「お前、月は何色に見える?」

「月?」

いきなりなんだ? と首をかしげる俺。

「月は月、光の色だから……一色だろ?」

「うむ、人間はそうであろうな。だが我らは――」

「四色に見えるんだよ!」

ラードーンを押しのけて、デュポーンがまるで自慢するかのような口調で言ってきた。

「四色?」

「うん! あっでも、一番はっきり見えるのは青、それからピンクとオレンジ、あと普通の人間が見えてる金っぽい光の色」

「そうだったのか?」

「我らは月に連なる力を見ているからな。それで四色に見えているのだ」

「へえ……」

「それと同じ、死霊魔法に足を踏み入れた者は世界の色が変わる。そうだな――」

ラードーンはそう言い、パチン、と指を鳴らした。

瞬間、部屋の窓に留めてあるカーテンが一斉にぱらりと落ちて窓からの光を遮断した。

たちまち部屋の中が暗く――ならなかった。

「これは……普通に昼間?」

「通常の人間には暗闇にしか感じられぬ」

「 あっち(、、、) の力が見えるようになったって事だよダーリン」

「……なるほど」

俺は小さく頷き、納得した。

ラードーンが言ってたのはこういうことだったのかと納得した。

一度死んで、仮死状態になって初めて使えるというのはこういうことだったのか。

「無論今はまだ見えるだけだから、これから死霊魔法の魔法の部分を覚えていかねばならんがな」

「そっか……二人にはこれが見えないのか?」

「うむ」

「あたしたちは死なないから」

「死なない……」

「そういう存在なのだ。便宜上死はあるが、我らは死ねば即座に生まれ変わる」

ラードーンはそう言い、デュポーンを見た。

デュポーンも心なしかどや顔をしている。

そういえば、何度かデュポーンは生まれ変わって若返った、的な事をラードーンが言ってたっけ。

「我らは死ねない、死を体験できない。故にその世界は見えぬ」

「興味はあるけどね、まっ、しょうがないよね」

「なるほど…………」

俺はあごに手をやって、考えた。

ラードーンの言いたいことはわかる。

分かる、が、死霊魔法のこの世界観、この景色に触れたばかりで、見た目からしてまったく違うこの世界観は俺に大きな刺激を与えていた。

そのせいなのか、頭が普段よりも冴える。

頭の中で それ(、、) がまとまった。

思案で少しうつむいていた俺は顔を上げて、ラードーンとデュポーンの二人をまっすぐ見た。

「……体感させてあげようか」

「え?」

「何を言い出す、そんなのは不可能だ」

「魔法なら出来る」

「「――っ!!」」

二人は一斉に驚いた。

そして、ハッとした。

俺が口にする言葉には説得力があった。

特にラードーンにはそうだったと思う。

他の事は出来ない、そういう話になったとき頭の回転が途端に遅くなる。

しかし、魔法は違う。

魔法なら、魔法なら出来る。

二人の目に、期待と感動の光が灯った。