軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17.罠で狩りをする

「リアム! 昨日はありがとね!」

ハンターギルドに入った途端、アスナにつかまってお礼を言われた。

昨日とは、キンバチの巣を換金した話だろう。

この一帯では、庶民の生活は主にジャミール銀貨という貨幣が使われる。

貨幣というのは、使われている銀――または金、銅の含有量、そして発行している国の信用度等々で価値が変わる。

ジャミール銀貨は、銀の含有量も鋳造のくっきり度も安定しているから、よく使われている。

その価値、大体100枚で、単純労働者の一ヶ月の収入だ。

ちなみにジャミール金貨というのもあって、銀貨100枚でおおよそ金貨四枚というレートだ。

そこまで高価だと日常的には使いにくいので、商取引とか、国や貴族の間の褒美に使われる。

昨日のキンバチの巣は300枚の値がついた、それを山分けしたから、アスナも俺も庶民の一ヶ月くらいの収入を得たことになる。

「ほっんとうにありがとう!」

「ううん、キンバチを見つけたのはアスナだから。俺こそありがとう」

「へへ……ねえ、今日はどうする? ここに来たって事は、また狩りにいく?」

「そのつもりだ。さっきすれ違ったハンター同士が言ってたけど、西の街道の野犬掃除があるんだって? そっちいってみる?」

「……」

「どうした、鳩が豆鉄砲を食らったよう顔をして」

「うん、びっくりしてるの。あたしてっきり、昨日のキンバチに味をしめて、今日も探しに行こう、とか言い出すって思ってたから」

「なるほど」

言いたい事はわかるが、あれはあくまで臨時収入のようなものだ。

あんなのを当てにしてたらそれはハンターじゃなくてばくち打ちだ。

「それを思い出させても行こうってならないんだ。子供なのにえらいな」

アスナと一緒に、街を出て西の街道にやってきた。

「なんでも、近いうちにお偉いさんが通るから、この道を綺麗にしなきゃなんだって」

「お偉いさん……もしかしてなんとか伯爵なのかな」

「なんとか伯爵?」

「俺も名前はよく覚えてない。父上の知りあいで、今度奥方を連れて訪ねてくるって小耳に挟んだ」

「なるほどね。ま、そんなのはどうでもいいのよ。重要なのは、ここに出没する野犬を狩って、それをギルドに持っていったら数に応じて報酬がもらえるって事」

「たしかに」

まったくもって、アスナの言うとおりだった。

現場のハンターからすれば、本当に伯爵様が通るのかどうかなんてどうでもいい話。

アスナの言うとおり、狩った獲物を持っていけば換金できる、という事だけが重要なのだ。

「その野犬って、どういうの?」

「普通のちょっとおっきい犬。でもすごく凶暴で、咬まれるとやっかいな病気にかかるのよ」

「なるほど。アスナは狩った事はあるの?」

「うん。こう見えても、これ、得意なんだ」

アスナはそう言って、二本のナイフを持ちだした。

共に逆手に構えた二本のナイフは結構様になっている。

「接近戦なんだ」

「弓矢はどうにも苦手なのよねー」

アスナはあっけらかんと笑った。

俺はなるほどと思った。

「それなら――シェル」

初級身体強化魔法、シェル。

それをアスナにかけた。

「なになに? あたしになにかしたの?」

「体を強化する魔法、簡単に言えば防御力があがる。簡単なものだから効果もそれなりだけどね」

「そんなのも使えるんだ!」

「気休め程度だけど、ないよりはましでしょ」

「へえ……ねえ、武器を強化する魔法ってない?」

「あるけど……やめた方がいいよ」

「なんで?」

「武器を魔法で強化すると、攻撃力はあがるけど、その分もろくなって壊れやすいんだ」

「そりゃ困るね」

アスナは納得した。

これは、俺の中身が貴族の五男にのりうつった庶民だからでる発想だ。

庶民のほとんどは、仕事道具をワンセットだけもっていて、それを大事に大事に使っている。

場合によってはその仕事道具を子供に受け継がせて何十年と使い続ける。

一時的に使いやすくなって、その分壊れやすくする魔法は庶民にはむしろマイナスになる。

アスナも庶民で、すぐにそれを納得した。

そんなアスナと街道をすすむ。

すると、野犬の群れと早くも出くわした。

前と後ろと、五匹の中型犬が俺達を取り囲む。

「いきなり囲まれちゃった、まずいね」

「大丈夫――トドメは任せていい?」

「え? どうするの?」

「こうするのさ――ノーム!」

土の下級精霊・ノームを五体同時に召喚した。

ノームは野犬に向かっていった。

見た目がモグラなノームに、野犬は咬みついた。

鋭い牙がノームの体に食い込んだ――瞬間。

ノームの体が膨らんだ。

一瞬にして倍――いや三倍に膨らみ上がった。

咬みついた野犬は、牙が突き刺さったこともあり、一瞬で膨らんだことも相まって。

あごを限界まで開かれて、開くことも閉じることも出来ない状態に陥った。

「アスナ!」

「やるじゃない! 後は任せて!」

最大の武器である口そして牙を封じられた野犬の群れに、アスナは飛びかかっていく。

口の中の獲物がいきなり膨らんで、パニックになる野犬たち。

アスナはその野犬の急所にものすごく正確に刃を突き立てていき、あっという間に五匹の野犬を始末した。

俺はパチンと指を鳴らす、ノームの召喚をとく。

「それ良いじゃんリアム、こういう釣りってあったよね」

「それからの発想なんだ」

「そっかー。よし、これを持って帰って換金しよう」

「ううん、このまま行こう――アイテムボックス」

俺はアイテムボックスを出して、野犬の死骸を入れた。

――――――――――――

海水 5,000,029リットル

純水 5788リットル

純白炭 318キログラム

ジャミール銀貨 186枚

砂金 100キロ

野犬の死骸5匹

――――――――――――

リストに、今入れた獲物が加わった。

「ギルドに戻ったらだすから、いちいち往復しないでこのまま行こう」

「すっごい便利だねその魔法!」

アスナは、ものすごく興奮した。