軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

154.変身

デュポーンは目を輝かせたままスタスタと近づいてきた。

何をする――と身構えていたら、彼女はまったく敵意がないまま、俺と腕を組んだ。

敵意がなく、また予想外の行動だったから、反応できなくてなすがままにされた。

「えっと……?」

「ねえ、あんたの名前は?」

「名前?」

「そ、名前」

「名前なんて――」

さっき名乗ったはずじゃ?

というか知ってるはずじゃ?

そう思ったが、とりあえずもう一回名乗ってみることにした。

「リアム・ハミルトンだけど」

「そっか。ねえリアム、リアムはどういう女が好き?」

「へ?」

「教えてくれたら嬉しいな」

「いや……その……」

いきなりなんの話か、と戸惑ってしまう俺。

直前まで殺気立ちこめていた修羅場が、一瞬にして甘ったるい空気に上書きされてしまった。

それをやったのが、デュポーン。

今の彼女は殺気のかけらもない。

幼い姿で媚び媚びの女の子にしか見えない。

故に俺は戸惑い、彼女の真意がつかめずにどう返事していいのか分からなかった。

「あっ、言い難かったら良いよ。こっちが 合わせる(、、、、) から」

「合わせる?」

「そっ。あたし達はね、子供を産みたいって思った相手の種族に合わせて姿を変えられるんだ。もちろん趣味もね」

デュポーンはそういい、口を押さえて「ニヒッ!」と笑った。

「そんな事ができるの?」

「もちろん。相手の性別に合わせることもできるよ。相手が女だったらこっちは男になれるし、リアムが男だから、今回は女のままでいいよね」

「すごい話だな……」

気に入った相手の種族や外見的な好み、それに性別まで変えられるなんて。

にわかには信じがたい話だけど、ラードーンが否定してないと言うことは本当のことなのかな。

と、俺がそんな事を思っていると、デュポーンが。

「じゃあ、リアムの好みに姿を変えるね」

といって、俺と腕を組んだまま、目を閉じてなにやらぶつぶつと唱えだした。

そして体に光があつまって――弾ける。

「……あれ?」

戸惑うデュポーン。

俺もちょっと困った。

光が弾けた後も、デュポーンの姿はまったく変わっていなかった。

魔法を使う俺は、今のは詳細は分からないけど、デュポーンが姿を変える魔法的な物を使ったんだって分かる。

だから「ある種」の期待をしてたんだけど、それがまったく変わらなかった。

「ど、どうして!?」

「ふはははは」

デュポーンじゃなくて、俺の体が光った。

それと同時に、ラードーンが姿を現わした。

「ああっ! 何しに出てきたのよ!」

ラードーンを見た途端、デュポーンはあからさまな敵意を剥き出しにした。

「お前に説明してやろうと思ってな」

「説明?」

「こいつの頭にはな」

ラードーンはそういい、俺の腕をぽんぽんと叩いた。

身長差がなきゃ頭をポンポンしてたのかな? なんてちょっと思ったりした。

「女、というものがないのだよ。そういう性的なものが一切入っていない」

「うそだ!!」

デュポーンが食い気味で否定した。

「人間の男がちちしりふとももに興味がない訳がない!」

「それがいるのだ。我がこいつの中から出てきたのは何故だと思う? 面白いからだよ」

「――っ!」

デュポーンは息を飲んだ。

直前の説明は被せ気味で否定したのに、その話にはむしろ納得したという反応をした。

ラードーンが俺の中に「取り憑いてる」というのはよほどのことのようだ。

同じ存在であるデュポーンには、それが強く伝わった、ということのよう。

「ほ、本当なの?」

「そのことでお前を騙して、我になんの得がある」

「……う、うそだ、うそだうそだうそだ!」

デュポーンは激しく反応した。

その姿で駄々っこみたいな反応は、なんだか頭を撫でてあげたくなる、そんな可愛さがあった。

「化けの皮を剥がしてやる」

デュポーンはそういい、俺から少し離れて、また体から光を放ちだした。

「な、なんだ?」

「自前で変身するようだ」

「自前で?」

「それくらいはできる」

ラードーンがやや呆れた感じでいった後、デュポーンの変身が終わった。

光が収まった後、現われたのはグラマラスな美女だった。

ボン、キュッ、ボン! という形容がある。

デュポーンが変身したのは、ボボン、キュッ、ボボン! って感じのナイスなボディだった。

「どう? これならドキドキするでしょ? 我慢しなくてもいいのよ、いまここで押し倒しても全然オッケーよ」

デュポーンはそう言いながら、やたらと扇情的なポーズをして、俺に流し目を送ってきた。

俺はそんなデュポーンを見つめた。

「おっ。な、なによ、やっぱり効くじゃないの」

正確には、デュポーンの変身した過程を見て、思い返していた。

「ふふっ、甘いな」

「なんですって」

デュポーンという、超越した存在がやるそれはわかりやすかった。

人間よりももっとシンプルに、簡潔に魔法を使うことができる竜。

その魔法を目の前で見せられたから、はっきりとイメージ出来た。

俺は目を閉じた。

今のイメージを、より明確なものにした。

そして魔力を練り上げ――発動。

魔力の光が俺の全身を包み込んだ。

すると――

「えええ!?」

デュポーンが驚く声が聞こえた。

この反応――成功か?

そう思い俺は目を開けて、自分を見た。

「……うん、成功だ」

直前まで、子供だった俺は、すらりと手足が伸びて大人の姿になっていた。

喋った一言も声が低く大人のようだ。

デュポーンのそれを見て、イメージして、俺が使えるような魔法にした。

「い、今の……魔法を作った?」

「ふふっ、これが我がこいつの中にいる理由よ」

「なんか……思ってたよりもすごい……」

デュポーンはますます熱のこもった目で、俺を見つめるのだった。