軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14.卒業試験合格

林の奥に小さな湖があった。

泳いで向こう岸に渡るにはちょっと広すぎて、小船かなんかが必要になるレベルの湖だ。

俺はその湖の中にアイテムボックスを出した。

ふたを開けると、水がドンドン吸い込まれていく。

俺の幻影が海に行って、海水を取ってきた時と同じ行動だ。

ものの十分くらいで、湖水が全てアイテムボックスの中に吸い込まれていった。

干上がって、泥状態の湖底には、あっちこっちで魚がビチビチ跳ねている。

今度はアイテムボックスを逆さにした、取り込んだ湖水を出す。

リストにずらっと並んでいる魚や水草もあったから、「生物」は全部出すようにした。

アイテムボックスの便利なところはここだ。

何を出して、何を出さないのかを術者である俺自身で決める事ができる。

干上がった湖を海水で満たす事も出来るし、なんならまったく関係ない、砂で埋め立てる事も出来る。

出したい量も決めることが出来るから、吸い込んだ分から計算すればかなり簡単に埋め立てる事ができる。

もっと便利に使えそうだな、と、俺は再び水で満たされていく湖を眺めながら、何が出来るのかをかんがえた。

「ここにいたのか」

「え? ブルーノ……兄さん」

背後から声をかけてきたのはブルーノだった。

彼はつまらなそうな顔でまわりをきょろきょろして林を眺め回した。

「どうして、ここに」

「お前がいつもここで遊んでるって聞いてな」

「俺に用があるんですか?」

「ふっ……」

ブルーノはニヒルな笑みを浮かべながら、俺の前に立った。

「俺の結婚が決まった」

「ええっ!?」

「下級貴族の婿養子だ。ハミルトン家に比べりゃ貧乏だが、まだ一代目、俺が隠居しても貴族であり続けることが出来るいいところさ」

「そっか……それは……おめでとう? っていっていいのかな」

「ああ、貴族の四男坊には申し分ない未来だ」

ブルーノは肩をすくめて、にやりと笑った。

なるほど、そういうこともあるのか。

確かに、ずっと貴族の家で部屋住みでいるよりは、新興貴族のところに婿入りしてそっちで一家の主になった方がいいって考える事も出来る。

「じゃあ、おめでとう」

「ふっ……面白い事を教えてやる。お前、真面目だからどうせ知らないだろ」

「何をですか?」

「オヤジの大失敗だよ」

「父上の?」

ブルーノはいつもより、更に皮肉っぽく笑いながら、語り出した。

数年前、ハミルトン家当主チャールズは、魔物を討伐するために兵をだした。

領内に封印されているかなり強大な魔物で、1000人の兵を投入した。

その魔物の封印を解いて、倒して、功績にする予定だった。

しかし、結果は惨敗。

1000人の兵の実に九割を失って、かろうじて魔物を再封印する事で、民に被害は出さずに済んだ。

「それのせいだよ、オヤジが自分で功績を立てるのをやめたのは。トラウマになったんだろうさ」

「……なるほど」

「ちなみにな、その魔物、二代前の当主――前回の三代目が封印したやつだ」

「え?」

「有名な魔物だったらしい。封印で功績一回、討伐でもう一回。魔物一体で六代分の地位を確保しようとしたんだ。それをオヤジがしくじったって訳さ」

「なるほど」

「つまり、俺が何を言いたいかって言うとだ」

更に、口角をゆがめて、思いっきり皮肉っぽく笑うブルーノ。

「オヤジはもう娘を献上して貴族の地位をつなぐ事しか考えてねえ。お前もぼちぼち、家を離れる方法を考えた方がいい、ってことさ」

「そっか。ありがとう、ブルーノ兄さん」

「ふっ……まっ、せいぜい頑張るこったな」

言いたい事をいって、ブルーノは身を翻して、手を振って立ち去った。

皮肉屋だが、紛れもなく俺にアドバイスをくれた。発破をかけた意味合いもあるんだろう。

そうこうしているうちに、湖の水が出切って、元に戻った。

テストが終わったし、アイテムボックスを消して次へ――って思ったら思いっきりびっくりした。

――――――――――――

海水 5,000,029リットル

純水 5788リットル

純白炭 318キログラム

ジャミール銀貨 36枚

砂金 100キロ

リアムへの手紙

――――――――――――

吸い込んだ物を出し切って、アイテムボックスの中身はテスト前に戻ったと思ったら、別の物が入っていた。

砂金……手紙?

俺はまず、自分への手紙ということで、それを取り出して。

「防水の紙だ……」

取り出した瞬間、完全に水をはじくタイプの紙だという事が触感でわかった。

同時に、湖の中にあって、吸い込んだ物だと理解した。

手紙を開く――それは師匠からの物だった。

『リアムへ お前がこれを読んでいるということは、アイテムボックスの使い方をほぼ完全にマスターしたからだろう。もししてなくても、湖の中にアイテムボックスを沈めて、全部吸い込んだ後、水と生き物を吐き出させてみろ』

「読まれてる……」

俺の行動が完全に師匠にお見通しだったみたいだ。

『金塊だと入らないから、砂金を湖にばらまいた。100キロある。アイテムボックスを完全に使いこなせたら、マジックペディアの他の呪文もほぼ使いこなせてるんだろう。この黄金は俺からの卒業プレゼントだ』

「師匠……」

『貴族の五男だって聞いた、独立するときの資金にでもするといい』

『追伸。もらうのが申し訳ないと思うんなら、なんで丁度100キロなのかを当てるといい。卒業試験だ』

手紙はそこで終わっていた。

再びリストを見る。

砂金なのに、きっちり100キロというのは、きっと師匠もアイテムボックスから100キロをだしたからなんだろう。

それを理解でき、師匠から出された卒業試験の問題を解いたことで、ちょっと嬉しくなった。

思いがけないところから降ってきた、黄金100キロという資産。

いつか、師匠に直接あってお礼を言わなきゃな、とおもったのだった。