軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

128.リアムネット(後編)

囲いと窓だけをつけた、まるでウサギ小屋の様な建物の中。

地面は舗装されてなくて、剥き出しの土と、その下に敷設されてるハイ・ミスリル銀が露出している。

この街全ての道路の下にあるハイ・ミスリル銀と繋がっている、インフラのコア。

俺はそこにいて、「魔法の調節」をしていた。

「ネットワーク」

魔法を唱えて、それを起動させる。

すると目の前に巨大な、半透明の本棚が現われた。

本棚には二冊の本が置かれている。

背表紙を見ると、一つは「クリスだよ」とあって、もうひとつは「イノシシ女に告ぐ」とあった。

二つ目の内容は何となく読まなくても分かったから、俺は手を伸ばして「クリスだよ」を手に取って、開く。

本棚も半透明なら、置かれている本も半透明だ。

本は開かれると、光る文字が浮かび上がる。

『西側の警備終了、異常はまったく無いよ。これでいいのかな』

クリスからの「手紙」を読んだ。

新しい魔法故にクリスがまだ戸惑っているのが手に取るように分かる。

「成功だな」

新しい魔法「ネットワーク」が、狙ってた一つの形を実現させた。

新しい形の手紙だ。

今、連絡を取り合うのに「テレフォン」という魔法がある。

これは離れていても、声で会話が出来る便利な魔法だ。

しかし、会話が出来ない時もある。

テレフォンにでられない時が。

そうすると後になって繋ぎ直すんだけど、連絡を折り返す手間が発生するのと、そのタイミングで向こうが話せるかどうか分からないというのがある。

手紙ならその問題はない。

もともと手紙ってのはそういうもんだ。

受け取って、後で読むことが出来る。

この「ネットワーク」はそれに加えてすぐに届くという利点がある。

一瞬で届く手紙というのは、「テレフォン」とはそれぞれに長所と短所があって、棲み分けができる魔法だ。

「おっ」

開いたままの本棚に新しい本が加わった。

『脳筋のくせに生意気な』

という内容の本だった。

これまた、内容を見ないでもある程度分かった。

『イノシシ女に告ぐ』からの『脳筋のくせに生意気な』は。

いつものガイとクリスのやりとりだ。

もはやふたりらしすぎて、中身を見ないでも本のタイトルだけで内容が分かってしまう。

「あっ、そうか」

だからこそ、俺は気づいた。

ガイとクリスのいつものやりとりだから分かるけど、例えば『助けて』なんてタイトルがあっても、それは誰が発した物なのか分からない。

うん、発信者が分かるのは大事だな。

俺は剥き出しのインフラ・コアにそっと手を触れる。

完成した魔法、ハイ・ミスリル銀で出来た古代の記憶の魔法に修正を加えていく。

望む形を強くイメージする。

今までも何回かやってきた様に、イメージして魔法を修正。

「さて、これでどうかな」

少し待つと、本棚に新しい本が現われた。

『りあむさまりあむさま スラルン』

『どこにいるの? スラポン』

タイトルの下に名前が出るようになった。

これまたタイトルで誰なのかが分かる様なものだが、魔法を使って本棚に「書き込んだ」者の名前が出るようになってますますはっきりする形になった。

『みんなには内緒です フローラ』

また新しい本が現われた。

新しい魔法「ネットワーク」の事は、街のみんなに伝えている。

ファミリアで使い魔契約してる街の住民ならみんな使える様にした魔法で、使っていきながら修正をしてるところだ。

そこにフローラも加わった。

みんなには内緒って……誰宛にだ?

「ああ、そうだ」

俺は苦笑いした。

手紙をイメージの一つにしているというのに、俺は宛てる相手の事をまったく考えてなかった。

とは言え、イメージのもうひとつは「本棚」であり「本」だ。

宛名という形で更に名前を増やすのは上手いやり方じゃない。

そもそも、個別の相手に宛てるものなら、手紙を出したと知られたくない事もある。

……ああそうさ、ラブレターとか、そもそも渡した事すら知られたくない。

若い頃の苦い想い出…… 二重に(、、、) 苦い想い出がよみがえりつつ、俺は更に魔法を改良していく。

宛先の効果を盛り込んでいく。

それが出来ると、俺はフローラに手紙を出した。

まっさらな本を取って、「さっきの手紙もう一度書き直して」、と書き込んだ。

最後に宛先をフローラにした。

宛先は個別と、全員の両方にすることが出来る。

今回はテストもかねて、フローラにもやってもらう事にした。

するとほとんど間を空けず、『みんなには内緒です フローラ』というのが送られてきた。

本棚には『みんなには内緒です フローラ』が二つある。

最後に宛先を指定できるようにしたから、俺宛だってことだ。

俺はそれを取って、開く。

するとひかり文字が浮かび上がった。

『好きです、リアム様』

「……ってラブレターぁぁ!?」

思わず、素っ頓狂な声をあげてしまう。

まさか宛名機能を改良した先の第一号で、本当にラブレターみたいなのが送られてくるとは思いもしなかった。

それを驚いているうちに。

『ずるい クリス』

『私もです レイナ』

『お慕いしています スカーレット』

『大好き!! アスナ』

『あらあらうふふ ジョディ』

本棚の本が一気に増えた。

思わず気圧された。

ガイとクリスのいがみ合いの時と同じような気分になった。

中身を読まなくても、中身がわかって来るようなタイトルとタイミング。

なんというか悪い気はしなかった。

その後も大量のラブレターを受け取りながら、ネットワークの効果を少しずつ修正していった。