軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

120.赤色の意味

アナザーワールドの中、すっかり空間に比べてこじんまりと感じられるようになってしまった俺の家。

その家の小さなリビングで、アスナとジョディと三人でいた。

リビングのテーブルには、二つのグループに分けてものが置かれている。

片方は新鮮な果物の山。

どれもかぶりつきたくなるくらい、美味しそうな果物ばかりだった。

もう片方は干しシイタケ。

こっちは逆に、ちゃんと料理しなければ食べられそうにない代物だ。

その干しシイタケを凝視しながら、強くイメージする。

新しく魔法を開発する時はイメージが大事だ。

完全な空想でも出来なくは無いけど、そのイメージができる似たようなものが実物としてあると、より魔法が作りやすい。

「まだかな」

「気長に待ちましょう」

「うーん、暇なんだよね。リアムがすっごい集中しててこっちの話しかけに反応しないしさ」

「邪魔をしないの。大事な事をしてるのだから」

「はーい」

アスナとジョディのやりとりも、 なんか言ってるな(、、、、、、、、) 程度に耳を素通りしていく中、干しシイタケを眺めて、イメージに変換する事数時間。

新しい魔法ができ上がった。

魔法が発動した瞬間、テーブルの上に置かれた果物はぎゅっ、と圧縮された。

両手だけじゃ抱えきれない位の果物はみるみるうちに小さくなっていき、やがて小さな指輪のケースくらいの箱になった。

「よし、出来た」

「おー、すごい。ちっちゃくなっちゃった」

「これはリアムくんが使っている、アイテムボックスと同じもの?」

「ああ、効果は一緒だ。中に入っているものは腐らないし場所も取らない。アイテムボックスと違うのは、こっちが使い捨てだって事だ」

「使い捨て?」

「一回出してしまうと箱に戻せないって事だ」

「へえ」

アスナは小さなケースを持ち上げて、マジマジと見つめたり、ゆすったり指でコンコン叩いたりした。

「これって、どれくらい頑丈なの?」

「やってみていいぞ、全力で」

「よし!」

アスナはそう言って、愛用のナイフを抜き放つ。

ケースをテーブルの上に戻して、ナイフを両手で構えながら真下に向けて、思いっきり突き刺した。

鈍い音がして、ナイフの刃が箱にはじかれた。

「おー、かなり強く刺したのになんともない」

「すごいわね。絶対に壊れないのかしらこれ」

「絶対にじゃないけど、象が乗っても大丈夫なくらいには頑丈だ。取り出すには箱にかかった魔力を断てばいい――のは、元々の想定通りだ」

「なるほど……でも、これだとあまり良くないかもしれないわね」

「なんでだ?」

魔法そのものの出来には自信があった、だがジョディは否定するような事を言った。

「いざという時のためのものなのよね?だったら、これじゃ見つかって前もって排除されるのも簡単だわ」

「えー、こんなのがそんなに凄い物だってわかんないよ」

アスナはフォローをしてくれたが。

「いや、ジョディの言うとおりだ。確かにこれは排除されやすい、それに、これくらい小さかったら、普段からいちいち気に掛けないから、なくなった事にも気付かないだろうな」

「そうね、これならまだ邪魔なくらい大きな宝箱にした方が良いわ」

「分かった、改良する」

俺は箱を見つめながら、更にイメージする。

今度は追加のものがいらなかった。

いや、既にその追加のものが見えていた。

それ(、、) と最初に作った箱、両方を見つめながら、イメージする。

最初に出来たものから少し変えるだけだから、今度は二十分くらいで出来た。

魔法を発動させると、箱そのものが消えてなくなった。

「消えた!?」

「どこかに飛ばしたの?」

「いや、ここにある」

俺はテーブルの上、箱を置いてあった場所を手でなぞった。

見えなくしただけだ。

そうしながら、魔法を解除する。

すると、箱が再び現われた。

「こんな感じで、空気みたいにずっとあって、でも意識しないと触れもしない、なくせもしない」

イメージに使ったのは空気だった。

「空気って、それすっごい!」

「なるほど、これなら強奪される心配もないわね」

「ああ、後はこれをあっちこっちに配置して貯蔵するだけだ。いざって時はこう――食糧が大量に現われる。」

そう言いながら、箱そのものを解除。

山ほどの果物が再びテーブルの上にあらわれた。

「……」

「どうしたのジョディさん?」

「これを、あっちこっちに配置するのよね」

「ああ、そのつもりだけど」

「いざって時は自動的に開放されるのね」

「そうだ」

「それは、危険じゃないのかしら。まったく何もないところから急に大量のものが現われたら、事故や怪我に繋がりそう」

「……なるほど」

ジョディのいう事も一理あった。

俺は彼女をじっと見つめた。

「どうしたのリアムくん?」

「いや、魔法を改良するんだけど――次のイメージ、ジョディさんだなって」

「私?」

「ああ、ちょっと待ってて」

俺はジョディさんをじっと見つめた。

彼女の事をじっと見つめて、新しい魔法をイメージした。

「……」

「あれ? ジョディさん、顔赤いよ。もしかしてリアムに見つめられて照れてる?」

「な、何の事かしら」

「とぼけないとぼけない。いいじゃん別に、どうせ今のリアムには聞こえてないんだから」

「……ち、違うわよ」

「ちぇ、もう少しで落ちたのに」

意識の外でアスナとジョディが何かごちゃごちゃやってる中、今度は五分くらいで出来た。

途中から、何故か見つめているジョディの顔が赤くなったのも、イメージの助けになった。

完成した魔法を、果物にかける。

果物は再び消えた。

「よし、出来た」

「さっきと同じ?」

「何が違うの? 今度は」

「さっきから、ジョディがアドバイスというか、忠告してくれてただろ?」

「ええ」

「それに、なんか顔も赤くなってた」

「え、ええ……」

「それを組み込んだのが、これ。魔力を消失させると――」

――食糧、解放します。食糧、解放します。

声が聞こえて、空中から赤い光が警告のように明滅した。

それから十秒くらいして、果物が再びあらわれた。

「こんな感じだ」

「いいね! ちゃんと警告がでるんなら怪我しない。ねっジョディさん」

「え、ええ……そうね」

アスナに振られたジョディは、何故かまた顔を赤らめていた。

「これで大丈夫かな?」

「え、ええ」

俺に見つめられて、ジョディはゴホンと咳払いして、赤い顔をなんだかごまかしながら。

「いいと思うわ、さすがリアムくんね」

ジョディのお墨付きがでて、また一つ、魔法が完成したのだった。