軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

117.戦後の宴

夜、街の中央広場で、大きな宴が開かれていた。

ライトの魔法で街は昼間に匹敵するほど明るく、熱狂的な盛り上がりで渦巻く熱気は盛夏に匹敵するほどのものだった。

宴を開いた理由は、ジャミール軍を撃退したから。

二万の軍勢を死者無しで撃退したという大勝利に、街の住人は沸きに沸いていた。

俺はというと、中央にある巨大なキャンプファイヤー、それがよく見える特等席に座らされていた。

『リアム、こっち引っ張って』

テレフォンの魔法でアスナの声が聞こえて来た。

俺は要求通り、魔法で彼女をよび寄せた。

「ただいまリアム。わっ! すっごい盛り上がってる」

「どうだった? ギルドは」

ジャミール軍を魔物の軍勢が撃退した。

その事実がハンターギルドにどう影響するのか知りたくて、俺はアスナに頼んで様子を探ってもらってきた。

「あっちも大盛り上がり」

「大盛り上がり? お通夜ムードとかじゃなくて?」

俺はそれに驚いた。

魔物が人間の軍を撃退したんだから、恐れられているものだと思ってたんだけど。

「ハンターだからね、ギルドにいるメンツは。リアムが壁を張って、入ってきたジャミール軍だけを追い払ったってのが伝わってたから、バカにされてる」

「バカに」

「そっ、蜂の巣を突っついてばっかでー。な感じ」

「ああ、なるほど」

蜂の巣というのは上手い例えだな、と俺は思った。

まさに、俺はそういう形にしようと、今回色々やった。

蜂はたしかに恐ろしい。しかしその巣をあえて突っつかない限りは脅威にはならない。

もちろんハチミツを狙って手を出そうとする人間もいるだろうが、そういう時は覚悟しろよ、と。

その俺の真の狙いが、俺が言語化しなかった形でハンターギルドに伝わっているのを知って、ほっとした。

「ハンターってさ、別にすすんで魔物を襲わないんだよね。依頼とかにならないとまずやらない。だからリアムがやろうとしてる、進入しなきゃ手を出さないってのは、ハンターからするとありがたいし、他人事で見てられる理由かな」

「ってことは、ハンターギルドが敵に回ることは?」

「ないない。今んとこは。まっ、ジャミールがハンターギルドに大金とか積んだらしょうがないけど」

「たしかにそれはしょうがない」

そうなると仕事で、依頼を受けたハンターは動き出す。

そういうのまで、止める事は出来ない。

「あっでも、ちょっと変化もあった」

「どんな?」

「ガイさーん! クリスちゃーん!」

アスナが大声を出して呼ぶと、その二人がやってきた。

ガイはギガース達と樽の酒で飲み比べをしてて、クリスはいろんな女性型の魔物達とキャンプファイヤーのまわりで踊っていた。

「どうしたでござるかアスナ殿」

「戻ってきたんだ、一緒に踊ろ」

「それは後で。それよりも二人とも、上がってたわよ、懸賞金」

ガイとクリス、二人の目がキラーンと輝いた。

アスナは二枚の紙を取り出した。

二人の手配書だ。

「はいこれ、ガイさんの」

「うおおおお! 上がってるでござる。100枚……金貨でござるな」

「うん、これでガイさんもA級の賞金首だよ。おめでとう」

「うむうむ、当然でござるな」

「あたしのは? ねえあたしのは?」

「クリスちゃんのはこっち。金貨210枚。ランクは変わってないよ」

「おー」

「がははは、お情け程度の賞金でござるな。これなら拙者、次の戦辺りでイノシシ女を超えるでござる」

「ぐぬぬぬぬ……あっ」

ガイの挑発に悔しそうにしてたクリスだが、握り締めた自分の手配書で何かを見つけたのか、表情が一変して、にやっと笑い出した。

「ふふん」

「な、なんでござるか」

「これをみなさいよ」

クリスは自分の手配書をガイに向けて突きだした。

「見ろと言われても、イノシシ女の間抜け面ではござらんか――むむっ」

ガイも、その「何か」に気づいたようだ。

「ふふん、気づいた? そう、あたしの名前」

「名前?」

気になった俺は、横から手配書をのぞき込んだ。

すると手配対象のところに、見慣れない表現が書かれていた。

「白銀の人狼……これ、二つ名か」

「うん! あたしの見た目にちなんだものだろうね」

「なるほど……うん、白銀の人狼、かっこいいな」

俺は素直にそう思って、口にした。

すると、それを受けてクリスがガイに向かって。

「そっちは何かついてる? あっ、もしかして『脳筋のガイ』とかだったりする?」

「ぐぬぬぬぬ……」

ガイは自分の手配書をくしゃくしゃにした。

顔が真っ赤になって、頭のてっぺんから湯気が噴き出しそうな勢いだ。

いがみ合うガイとクリス。

これはもうほっとこうと思った。

「リアム様」

「ん?」

声に振り向く、一人のエルフの少女が、瓶を持って、頬を染めながら俺を見つめていた。

「ああ、ありがとう」

酌をしたいんだとすぐに理解して、俺はコップを差し出した。

彼女はそれになみなみと瓶の中身を注いだ。

「あの……リアム様、すっごく格好良かったです」

「かっこいい?」

「あの魔法を使ったときのリアム様です」

「ああ、大魔法か」

「はい! すごく格好良くて――一生忘れません」

「そんな大げさなもんじゃないよ――これだろ?」

俺は手を空に向かって突き上げた。

大魔法を使わずに、魔法陣を広げる。

手元から上空に伸びる、逆円錐形の魔法陣の積層。

「あっ……」

エルフの子はうっとりして、俺の姿を見つめた。

そんなに気に入ったのか――と、思っていたら。

「あの時のリアム様だ」

「すごくかっこいい……」

「神々しいぞ……」

宴してた魔物たちも手を止めてこっちを見つめる。

一部にいたっては、俺を拝んだりしている。

「神様とか天使様っぽいね、それをだしてるリアムって」

アスナも、好意的に言ってくれたのだった。