軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

106.通訳も魔法で

男を倒したあと、改めてピリングス達がいた方を向いた。

ピリングスが数体、物陰に隠れてこっちの様子をうかがっているのが見えた。

完全に警戒心が解けたわけではない、かといって今すぐ逃げ出す訳でもない。

種族が違うから表情もよく分からないが、そういう感情になっているのが手に取る様に分かった。

「さて、これからどうするか」

「ピリングス達には人間の言葉が通じると言われてますわ」

「そうなのか?」

驚き、シーラに振り向く。

シーラは真顔だった。

「それもペットとしてさらわれやすい一因ですわ。言葉が分かるから躾がしやすいのですわ」

「なるほど、種族の特性が悪い方に作用したのか」

でもそういうことなら話が早い。

俺はピリングス達に向かって話しかけた。

「こっちの言葉がわかるか? 俺に敵意はない、話がしたい」

まずは呼びかけてみた。

すると半分隠れてこっちの様子を伺っていたピリングスがひそひそと、何かを相談し出すような様子を見せた。

そこそこの距離から伝わってくるピリングスの鳴き声、会話が成立するような言葉ではなく、「ピー」とか「キー」とかそういう、可愛らしく愛嬌のある鳴き声だ。

こっちには分からないが、向こうには伝わっている。

『あんな事言ってるけどどうする?』

ピリングスのどれかがこんな事を言ってるのが、なんとなく仕草と雰囲気でわかった。

「会話の一方通行はちょっと困るな」

「魔物であればやりとりもできるのですけれど」

「え?」

「え?」

びっくりしてシーラの方を向いた、シーラもびっくりして俺を見た。

「な、なんですの?」

「魔物だったら会話が通じるのか?」

「え、ええ。あまりにも人間過ぎる魔物だとやはり無理のようですが、近しくて……言い方はわるいですが、獣に近いようなタイプならば通じると聞いたことありますわ」

「そうか……ちょっと待ってて」

俺はテレポートで街に戻った。

一瞬で戻ってきた街の中で、まわりを見回した。

すぐに目当ての相手を見つけた。

「スラルン、スラポン」

「りあむさまだ」

「あそぼうりあむさま」

スライムの二体は、いつもの舌っ足らずな感じで、俺に懐いてきた。

「悪いけど頼みたい事があるんだ、協力してくれないか?」

「それっておてつだい?」

「りあむさまとおしごと?」

「ああ、お手伝いで、お仕事だ」

微妙に違うと言いかけたけど、話をややこしくするからやめた。

「おてつだいするー」

「りあむさまのやくにたつー」

スラルンとスラポンは俄然テンションが上がって、ますます俺に懐いてきた。

そんな二体を連れて、テレポートで森に戻ってきた。

「ただいま」

「どこへいってらしゃったの――ああ、そういうこと」

俺が連れ帰ったスラルンとスラポンをみて、一瞬で俺の意図を理解したシーラ。

「そういうこと」

俺は微笑みながら頷き、スラルンとスラポンに言った。

「あそこにいるピリングス達と会話がしたいんだ。通訳――あっちが言ってる事を俺に教えてくれ」

「わかったー」

「ちょっといってくるー」

スラルンとスラポンはみょんみょん跳ねて、ピリングス達に向かっていった。

最初は何かの接近にビクッとしたピリングス達だったが、それがスライムだと知るとまったく敵意をみせることなく接近を許した。

「りあむさまがおはなししたいの」

「なにをいってるのかおしえて」

スラルンとスラポンの質問に、ピリングス達は相変わらず「ぴー」とか「きー」とかで返事した。

それを聞いてから、スラルンとスラポンが戻ってきた。

「りあむさまりあむさま」

「あのにんげん、われわれにおんをうってなにをたくらんでいるのだ? っていってるよ」

スラポンの口からでたのは、いつもの舌っ足らずながら、いつもと違う複雑な内容だった。

まるで三歳児が大人の書いた脚本をそのまま読んでいる、そんなちぐはぐさを感じた。

「じゃあ俺の言うことを――って、こっちの言葉は伝わるんだっけ」

思わずスラルンとスラポンにこっちの翻訳も頼もうとしたが、その必要はないって思いだして、苦笑いしつつピリングス達に向かって大声で言った。

「企みはない、お前達を保護したいだけだ」

いうと、ピリングス達はまたぴーきー鳴いた。

「どうだ?」

「そんなのしんじられない」

「にんげんのかんげんにはにどとだまされない」

「かんげんって……ああ、甘言か」

「知らなかった……あんな言葉遣いをする種族だったのね」

となりでシーラが微妙にショックを受けていた。

俺は更に呼びかけた。

「本当だ。このスラルンとスラポンをみろ、俺はこいつらと一緒に、魔物が多く住んでる国を作ってる。そこにお前達を保護したい」

「まもののくに?」

「なにをよまいごとを、っていってるよ」

俺はスラルンとスラポンの通訳を通して、ピリングス達を説得した。

最初は頑なだったピリングス達だったが、次第に――

「でもすらいむたちがなついてる」

「ほんとうにがいはない、のか?」

などと、考えを改めるそぶりを見せだした。

そのやりとりをしている間、俺は同時に別の事をしていた。

スラルンとスラポンの通訳を間近に感じていた俺は、その事象を強くイメージ出来た。

イメージ出来たもので魔法を開発する。

俺はそれが出来る。

皮肉にも、人間に長く虐げられたことで、ピリングス達の警戒心は強く、説得に時間がかかった。

『もう一度だけ、人間を信じてみるか』

時間はかかったが、通訳の魔法が完成したのだった。