軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

100.触るな危険

もっと落ち着いて話をするために、俺はホークたち三人を連れて、テレポートで街に戻ってきた。

「な、なんだこりゃ」

「テレポート。上級神聖魔法……だったかな」

「上級……」

「神聖魔法……」

「そんなのも使えたのかよ」

呆然とするホーク、セタ、ティセの三人。

俺が上級魔法を使える事に言葉を失っていたが、すぐに別の事に気づいた。

「二人とも見て、あれ!」

少年のセタが声を上げて、仲間二人の背後を指した。

それに振り向く二人、そこで、バンパイアの一人が魔法を使って水汲みをしていた。

バケツを置いて、魔法を詠唱して、何もないところから水を作り出して、バケツを満たす。

「あれって魔法だよね」

「ああ、この街のインフラ――いわば生活魔法、ってところかな」

俺はセタの疑問に答えた。

「生活魔法だぁ?」

「そう。炊事に使う火と水、それに夜用の明かりくらいだけどね。この街の住民は自由にその魔法を使えるようにしてる」

「ど、どうやってそんな事を?」

「この道路の下に魔導書と同じ効果のあるものを埋め込んだ。道路があるところなら使える」

「「「……」」」

絶句する三人。

俺を見て、自分達が立っている道路を見て、街中を見回す。

そして、三人でひそひそ話を始めてしまう。

「おい、どう思う。魔法はお前ら二人の専門だろ」

「信じられないけど、本当の事みたい」

「ええ。そうだとわかってからより強く感じるの。この常に魔導書に触れている感覚……」

「本当だって事か……」

「そもそも、この街もおかしいよ。魔物がどうしてこんな栄えた街を作れるのさ」

「まあ、あれみたいに魔物じゃないのもいるみたいだけどね」

「バンパイアのことか? それなら魔物だぞ」

「え?」

会話に割り込むと、ティセは驚いた。

「ば、バンパイアって」

「吸血鬼の事か? 嘘をつくな、あいつらが昼間出てこれるわけねえだろ」

「ふつうはそうだけどさ――リヒター」

俺は名前をつけた一人、バンパイアのリヒターを呼んだ。

それまで水汲みという日常生活をしていたリヒターがバケツを置いて、こっちにやってきた。

「なんですかリアム様」

「お前の牙をみせてやってくれないか」

「はい、いいですよ」

リヒターは二つ返事で、指を使って口を大きく開いて、鋭く尖った牙を見せた。

「見た目はこれくらいだから信じてもらえないかもしれないけど。俺の魔法で進化して、昼間でも活動できるようになったんだ」

「……って事は、あれもバンパイア?」

セタがおそるおそる別の男を指した。

俺達の横を通り掛かった青年の男。

「ああ、そうだ」

「「「……」」」

またしても、ぽかーんとしてしまう三人。

「あら、リアムくん」

そこに別の人が通り掛かった。

俺を「リアムくん」と呼ぶのは、この街の一万人を超す住民の中でもただ一人。

数少ない人間、ジョディさんだ。

「ここで何をしているの?」

「ちょっとハンターが来てたから、その対処でね。ジョディさんは?」

「ジョディさん!?」

「言われてみればババアに似てる……いや、ババアは人間だ、今はもっとババアのはずだ」

ジョディさんの名前を聞いて、何故か反応する三人。

その三人の方を向いたジョディ、しばしの間みつめて、ちょっと首をかしげてから。

「あらあら、もしかして毒蛇団たち?」

「「「その名前で呼ばないで!!!」」」

三人は声を揃えて抗議をした。

本気も本気の抗議――なのだが、三人とも顔を真っ赤にして、恥ずかしそうな感じだ。

「知り合いなのか、ジョディさん」

「ええ。この子達の若い頃に面倒を見たことがあったのよ。毒蛇団って名乗って、大暴れしてる悪ガキがいるって聞いてね。それで」

「へえ、なんか演劇一本分出来そうな関係性だな」

「三部作でやれるわ。エピソード1は私の手に噛みつき続けたこの子達が心を開くまで」

「なるほど、エピソード2辺りでジョディさんがピンチになってみたり?」

「そうそう、そして最後は成長した三人、私の元から巣立っていくの」

「なるほど」

俺は三人を見た。

そりゃまた奇遇だな。

「ほ、本当にジョディさん……ですか?」

セタがおそるおそる聞く。

「騙されるな! ババアがこんなに若いわけがねえ!」

「あらあら。そんな事を言う子には、また中辛のカレーを食べさせちゃうわよ」

「うぐっ!」

大声で反論していたホークが一瞬で黙ってしまった。

「中辛のカレー?」

「ええ、この子、こんな図体のクセして、辛いの大の苦手なの。カレーも蜂蜜入りじゃないと食べられな――」

「やめてくれ! 俺が悪かった!」

一瞬でジョディさんに全面降伏したホーク。

よく見れば他の二人も似たようなものだった。

最初に対峙したときは不敵な感じだったのに、今はすっかり借りてきた猫のようだ。

「あの……ジョディさん、どうして……?」

「私? 私は今、リアムくんの下僕よ」

「使い魔! 使い魔契約だから!」

「似たようなものじゃない。リアムくんが本気で命令したら絶対服従だし」

「いやそれはそうだけど」

「つ、使い魔……」

「まさか、それで?」

「魔導学的にはあり得るけど……えっ……?」

俺とジョディさんのやりとりを聞いて、ますますぽかーんとする三人。

そこに、またまた誰かがやってきた。

「リアム様!」

「ん? レイナか、どうした」

「えっと、もう危険は無いんですか?」

走ってきたレイナは俺と、見慣れない新顔の三人を交互に見比べながら、聞いてきた。

「ああそうか、戦闘があるかもってなってたのか」

「はい、それでわたし、みんなに防衛用の魔法を詠唱させてました。1000人くらいです」

「なるほど」

この街にはインフラを利用した防衛システムがある。

いざという時、俺と使い魔契約した者が全員使える攻撃魔法がある。

「それはもう必要ないな」

「分かりました、じゃあ適当に街の外に撃たせます」

「ああいや、俺に向かって撃ってくれ。街の外って言っても、いつか着弾した場所を使う時に整地の手間が発生するからな」

「なるほど、わかりました!」

レイナが応じて、駆け去った。

「ジョディさんはちょっと離れてて」

「ええ。あなた達も、ほら」

ジョディさんは呆けてる三人を連れて俺から離れた。

しばらくして、空から魔法が降ってきた。

空を覆い尽くすほどの、ファイヤーボールの雨あられだ。

「アブソリュート・マジック・シールド」

俺は同時魔法の最大数でアブソリュート・マジック・シールドを放った。

それは積み重なった、多層結界。

ファイヤーボールは次々とそれに当って、炎と障壁が同時に消し飛んだ。

消し飛んだ分、次から次へ補充発動する。

アブソリュート・シールドは絶対防御だが、一発で消える。

俺はそれを、レイナがいう、1000人分――千枚の障壁を張って、ファイヤーボールを綺麗に消し飛ばした。

「……こんなの、SSSどころじゃない」

「アンタッチャブル級……だよ」

ホークらが、離れたところでますます絶句していた。