軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

◆98・まさかの遭遇 □

トラさんを新たな旅の同行者に加えた私たちは、サンヨルドとアールティの中間にあるアルニヤという小さな町に一度寄ったが、それ以外の町と村には寄らずに野営をしながら進んでいた。

時折、MAPスキルを開いて現在地を確認する。

次の目的地のアールティまではあと少し……といったところなのだけど、なんとなく、向かう方面から国境方面へとすれ違う人の数が、やたら多いような気がしないでもないと、ふと思った。

「なんかカレッタ方面に行く人多くない?」

「どうだろう? ロンダンに来るのは初めてだから、よく分からないな」

「人などよく見てませんでした」

「にゃ? 人がどっちに行こうと気にすることではにゃいだろう?」

思わず漏れた私の疑問に対して、ルー兄の答えはともかく、雪丸さんとナツメさんは人外丸出し回答である。

まぁ、人間が目の前で襲撃されていたって観戦気分でのほほんとしているのだから、人の行く先なんてもっと興味ないんだろう。

どの道、この先で何かあったとしても、引き返すという選択肢はないから、気にしても仕方ないか。

それに、アールティは目の前だ。何かあるなら、アールティの街で聞けばいい。

そうして辿り着いたアールティの街に入った私たちが、宿を見付けてしばしの休息を取り、情報収集に出たところで、私は思わぬ人物と遭遇することになったのである――。

まずは情報収集がてら、買い物もしておこうと市場へと向かった。

王都も近付いてきたことで、私たち一行は認識阻害魔法を使わないようにしていたためか、なんだか囲まれ始めている気がしないでもない。

私は同行者一行を見回した。

「アルベルト兄さんか……」

「リリィ?」

雪丸さんは注目されているけど、「近寄るなオーラ」を発しているので、ちょっと遠巻きにされている感じだ。

私はそんな、冷気発生中の雪丸さんに手を繋がれているので、私の周りにも人はいない。

ルー兄は、認識阻害魔法は使っていないけど、気配遮断のスキルを使っているらしいので、相変わらず影の薄い人ぶっている。

レイは仔猫姿で私のお腹のポッケの中だし、猫妖精組は人に見えない猫獣人型のままなので、認知すらされていない。

うむ、やはりアルベルト兄さんだ。

王子様みたいな顔して子爵家の三男とか、ビジュと肩書がバグってるアルベルト兄さんに、またしてもピラニアガールズが群がろうとしているのだ。

アルベルト兄さんには、今回も生贄になってもらおうか……と考えていた時だ。

「ベルツナー嬢?」

――え?

思わず聞こえた声に反応して、その声の主の方を見てしまった。

あ、やべ……っと思った瞬間、目が合ってしまった人物を見て、私は固まった……。

ミ! ミルマン兄さんんん~~~!?

家出して、初めて遭遇した冒険者集団にいた称号持ちの人である。

あの時の私は認識遮断魔法を発動していたので、私の姿は見えていなかったはずだ。なので、私が一方的に見知っているだけの人物だったはずなんだけど……。

――え! どういうこと! どういうこと!

今、「ベルツナー嬢」って言わなかった?

「――っ! やはり、君、ベルツナー家のリリアンヌ嬢だろう?」

目が合ってしまったことで確信を得たらしいミルマン兄さんが、こちらに向かってツカツカと歩み寄ってきた。ついでに、ミルマン兄さんのパーティーメンバーらしき人たちも一緒にこちらにやってきた。もちろんアニッチョーリさんの弟、ニック・マッチョーリさんも一緒である。

「ベルツナー家?」

「リリアンヌ……嬢?」

ミルマン兄さんの言葉を聞いたアルベルト兄さんとルー兄が首を傾げているけれど、それを気にする余裕もなくあわあわしていると、私の同行者一行が、私とミルマン兄さんの間に入り、ミルマン兄さんの行く手を遮った。

ナツメさんたちも前に出てくれているけど、猫妖精の姿はミルマン兄さんたちには見えていないはずだ……。

「――!? 君たちは?」

「そちらが先に名乗るべきでは?」

「そうだ! 何(にゃん) だ、お前は!」

アルベルト兄さんの発言に便乗したナツメさんだけど……、声も聞こえてないと思うよ……。

「……そうだな、失礼した。私はスチュアート・ミルマン。カレッタを中心に、A級冒険者として活動している。こっちは私のパーティーメンバーだ」

「リリィとは知り合いなの?」

「いや、知り合い……ではないが、それより、私が名乗ったのだから、君たちも名乗るべきでは?」

「……アルベルトだ」

「ルーファス……」

「ニャツメだ!」

「――っ! ロックにゃ~!」

「え? あ、トラにゃん!」

うん、だから猫妖精組の声は聞こえてないでしょ。分かってるでしょうに……。

ちなみに雪丸さんは終始無言である。レイはポッケの中で威嚇モードだけど、ポンチョの中なので、私にしか見えていない。

「君たちはリリアンヌ嬢とはどういう関係なんだ?」

「なぜそんなことを聞く」

「彼女には少し前まで捜索依頼が出ていたのだ。もう一度聞く。君らはリリアンヌ嬢とどういう関係だ?」

「それは……」

「……関係?」

「リリアンヌは、吾輩たちの大事な同胞だ!」

「僕たちはとっても仲良しにゃ~!」

「オイラとも仲良しにゃん!」

あ~、うん、アルベルト兄さんとルー兄との関係って聞かれると、「あれ? なんだろう?」ってなるのは分かる。旅の最中は家族って設定だったけど、今はその設定が通じる相手ではなさそうだもんね。

てか、私ってナツメさんの同胞扱いだったの!? え? それってナニ扱い?

人? 人だよね? 人外扱いではないよね? 妖精に同胞扱いされることに、ちょっとした不安を感じてしまうのだけど……多分、今はそんな場合ではない。

「あの……、『 少(・) し(・) 前(・) ま(・) で(・) 、捜索依頼が出ていた』と言いましたよね? その依頼はすでに取り下げられたのでは?」

「――っ!? あ、ああ……、それは、そうだが……」

依頼出してたのって、多分、お祖父ちゃんだよね……。

まさかミルマン兄さんに依頼出してたなんて、誰が思うよ。

予想外過ぎるよ、お祖父ちゃん……。

「依頼者は私のお祖父ちゃ……お祖父様ですよね?」

「ああ」

「祖父には、少し前に私の無事を報せましたので、それで依頼を取り下げたのかと。今、一緒にいるこの人たちは、現在の私の保護者代わりの方たちですので、ご心配なさいませんよう」

「そう……なのか?」

「はい」

一瞬、剣呑な空気が流れかけたけど、私自身が弁明したことで、ミルマン兄さんは納得せざるを得ない……と言ったところだろうか。

既に依頼が取り下げられているってこともあるだろうけど。

アルベルト兄さんとルー兄が何か言いたげだけど、今はスルーだ。

それよりも、ものすっごい気になってることがある。

ミルマン兄さんが付けているペンダントだ――。

赤いキラキラハートに金の矢が刺さった、めちゃくちゃラブリーなデザインである。

――魔法少女かっ!

なんで、そんなかわいいのしてんの?

いや、妙に似合ってるけどさ。なぜそのチョイス?

「にゃ? あの赤い石……にゃんだか見覚えがあるようにゃ……」

「え?」

「いい匂いがするにゃ~」

「何だか懐かしい気がするにゃん」

「ん?」

どうやら、猫妖精たちもミルマン兄さんのペンダントを見ているようだけど、呟く言葉が気になって、思わずミルマン兄さんのペンダントを鑑定した。

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◆MPメガ盛りハート♡NEO

[効果]MP一万UP♪

[効果時間]ずっと♡

[使用方法]キラキラハートから、金の矢を引き抜くといいよ☆

[製作者]しんたろ~☆

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――ぶ~っっっ!

なんじゃそりゃあぁぁぁぁぁ~!

『しんたろ~☆』って、絶対、来訪者のシンタロウさんでしょ!? メガ盛りって何! NEOって何! え? もしかして『NEO』じゃないヴァージョンもあるってこと? てか、その『☆』とか『♡』何!?

あれ? ……ていうか、MP一万UP……って……、ミルマン兄さんのMPが一万UPしたら、妖精が見えるようになるのではなかろうか?

まぁ、それはそれとして、MPをUPさせるアイテムとか作れんの!?

魔道具……なんだろうか? あとでナツメさんたちに聞いてみよう……

そんなことを考えていた時だった――。

突然、大きな鐘の音が鳴り響いた。

――カンカンカンカンカンッ!

《緊急封鎖! 緊急封鎖!》

――カンカンカンカンカンッ!

《これより、アールティへの出入りは禁止! これより、アールティへの出入りは禁止!》

けたたましく打ち鳴らされる鐘の音とともに、街の緊急封鎖を告げる怒号のような声が聞こえた。

「え? なに……」

「緊急封鎖?」

「にゃ? 騒がしいにゃ……」

「お祭りかにゃ~?」

「お祭りなら美味しいものがあるかもしれないにゃん」

――いや、ロックくん、どう考えてもお祭りじゃないよ?

明らかな非常事態であろうに、猫妖精三人組ののほほんぶりに、気が抜けてしまいそうになる。

「まさか……」

「おい、どうする?」

「行くべき……でしょう」

あれ? もしかしてミルマン兄さんたち、何が起こってるか把握してる?

「ベルツナー嬢!」

「え? あ、はい」

「私たちはここを離れますが、ベルツナー嬢はこれから安全な場所へと避難してください」

「避難?」

「ええ、恐らく街中を騎士が巡回しているでしょうから、その者にこちらを見せてください」

そう言って、ミルマン兄さんは私の腕に、金の輪っかを通した。

『ん?』と思った瞬間、腕に通された金の輪は、私の手首にフィットするように収縮した。

「うぇ!?」

「騎士にこれを見せれば安全な場所に誘導してくれるはずです。くれぐれもご無事で」

「え、あの?」

「ああ、あとで腕輪を受け取りに行きますから。また後ほど」

そう言って、ミルマン兄さん一行は去っていってしまい、結局、何が起こっているのか聞きそびれてしまったのである――。

「えぇ~?」