軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

◆88・リリたんは人である……?

誰でもわかる前回のあらすじ!

―――――『リリたん、じっじの孫バカぶりを垣間見てちょっと引く!』

おじいちゃんから渡されたお金で魔道封筒を買い、書いた手紙と共に返信用封筒に入れる。

ちゃんと確認できていない人間に入れる金額じゃないとも、五歳児にポンと渡す金額じゃないことも書いたけど、返すのは貴族であるおじいちゃんには失礼だと思ったので、これはそのまま受け取り、今後の魔道封筒代として使うことにした。

書き上げた手紙に蝋を垂らし、ナツメさんに作ってもらったシーリングスタンプを押して封をする。

最後に封筒の左上にある魔法陣に魔力を少量流せば、手紙が宙に浮かんで光の粒となって消えた。

「おお!」

飛文書ってこんな感じで飛んで行くのか。起きた時にはすでに目の前に出現していたし、自分で飛文書を使うのは初めてだから、なんだかソワソワワクワクしてしまった。

光の粒になって消えたということは、物理的に飛んでいっているわけではなく、転移しているんだろうか?

これまで、自分でも転移できないかといろいろなイメージで試してみたけど、未だに成功の兆しはない。でも飛文書のように、人ではなく物体であれば、私でも転移させられるんじゃないだろうか……。

そう思って、目の前にある紙で実験しようとしたところで、スライムたちがもぞもぞと動き出したので、実験はまたの機会にしようと片付けをする。一度起きたと思ったら、そそくさと私の膝上に移動して二度寝をしていたレイも目を開けているので、微睡んでいただけかもしれない。

スライムたちに水球を用意していると、雪丸さんとアルベルト兄さんが続けて起きだした。ルー兄は……と視線をやると、すでに着替えすら終わっていて、ちょっとビックリしてしまった。

「みんな、おはよう」

「おはようございます」

「「おはよう」」

「随分、早起きですね」

「うん、たまたま目が覚めたの。起こしちゃった?」

「いえ、問題ありません」

「大体いつもと変わらないと思うぞ」

「うん、いつもどおりに起きただけだから大丈夫」

そうなのか。いつも私が最後に起きてたのは分かってたけど、みんなこんな早起きだったのか……。

「いつも私が起きるの待っててくれたの?」

「待っていたというか、私は鍛錬とかしているしな」

「俺も」

「リリアンヌ様は気にせず、たくさん寝ていてください。まだ幼いですから睡眠は大切です。リリアンヌ様の睡眠時にどうしても動かなければいけない時は、私が抱えるので問題ないですよ」

「ありがとう」

そうだね、中身がどうであろうと身体は五歳児だから、雪丸さんに甘えることにしよう。

起きたアルベルト兄さんとルー兄は「朝の鍛錬に行ってくる」と、宿の庭先へと向かっていった。

私とレイは、宙に出した水球でぷかぷかするスライムを眺めながら、しばらくベッドでゴロゴロし、雪丸さんは近くにいた妖精と何かを話していた。

朝食時間の少し前にアルベルト兄さんとルー兄が戻ってきたので、みんなで食堂へと向かう。

朝食内容は黒パン一個と豆のスープ、チーズ少々である。

これがこの世界の一般的な朝食なんだろうか? 前の宿屋はご飯が付いていない宿だったし、それまでは野宿で私が作ったご飯を食べていたから、ご飯付きの宿が初めてなのだ。

リリたんの胃袋的にはこの量でもいいんだけど、なんだか物悲しい気持ちになってしまうのは、贅沢というものだろうか……。

しかし……

「「…………」」

アルベルト兄さんとルー兄の目がちょっと虚ろである。そうだよね、鍛錬上がりの二人にこの量は辛いんじゃなかろうか。

雪丸さんはそもそも食べなくても平気な人外さんなので、少なくても大丈夫だとは思うけど、二人には少な過ぎる気がする。

ちなみレイは、みんなの朝食後に部屋で私のご飯を食べると言って、私の服のポッケの中で微睡み中である。

「(これは贅沢、食べられることに感謝すべきだ……)」

ルー兄がボソボソ小声で念じるように呟いている……。うん、気持ちは分かる。私も家出前はパン一個とかスープだけな日々だったから、それに比べればこれは贅沢とも言える食事だ。

だけど、今の私に食事に関する我慢はストレスである。これはもう、食に妥協したくない日本人の性とも言えるだろう。

「後でレイと一緒に続きを食べればいいよ」

ボソッと呟いた私の言葉を聞いた二人は、その意味を正しく理解し、途端に目に精気が漲った。

……そこまでか。

とにかく、出された食事は感謝して食べることにする。

もくもくもくもく……もくもくもくもく……

みんな無言で、やたらと早い咀嚼を繰り返している。

それは、食べることリスの如く……ちょっと怖い。

パンはこっそり〈アイテムボックス〉にナイナイし、スープとチーズをもくもくともぐもぐした。パンは後でアレンジして食べるつもりである。

食堂での食事が終わり、部屋に戻った私たちは、マジックバッグから取り出したご飯を広げて、食べ始める。

「贅沢なことだとは分かっているのだが、リリィの作ったもの以外は全て味気なく思えてしまって……」

「俺も……」

「リリアンヌ様が作るものはどれも絶品ですからね」

あ~、なんかすんません。舌を肥えさせてしまったかも……。

レシピを渡したところで、そもそも〈交換ショップ〉でしか手に入らないものもたくさん使っているから、再現はできないだろうし。

さっき実験しようとした物質転移の魔法ができるようになれば、二人にご飯を転送してあげられるかもしれない。今はまだできるかどうか判らないから、言わないけどね。

食事が終わった私たちは荷物を整理し、宿を発つことにした。

宿を出るところで、宿を紹介してくれたベントスさんに会った。

「おや、皆さん今からお発ちですか?」

「ええ」

みんなを代表して話すのは雪丸さんだ。

「宿をご紹介いただき、大変助かりました」

「いえいえ、私は案内しただけですから」

「ベントスさん、ありがとうございます」

「おや、礼儀正しいお嬢さんだ。私の方こそ、昨日は美味しいお菓子をくれてありがとうね」

「はい」

「ところで……、旅中であるならば、騎獣をご利用されるおつもりは?」

「はい、ここからは騎獣を利用するつもりです」

「そうですか、ではこの通りの次の交差路を左に曲がってすぐの騎獣屋であれば、質も種類も多くておススメですよ」

「そうなのですね。お教えくださりありがとうございます。そちらを覗いてみようと思います」

「ええ、どうぞお気をつけて」

ベントスさん、いい人だった。

ベントスさんに見送られ、私たちはおススメされた騎獣屋へと向かった……のだけど……

――ヒヒンッ! ヒヒンッ!

――ブルルッ! ブルルッ!

何だか騎獣として並んでいる魔獣の様子がおかしい。

終始、落ち着きなくジタバタしているのだ。

「なんなんだ、突然! お前たちどうしたっ」

騎獣屋の店主らしき人も、なんだか混乱しているようである。

「………………」

一体どうしたんだろうかと、こちらも困惑していたところで、ポッケの中からレイの痛いほどの視線を感じ、どうしたのかと尋ねれば、「多分、リリィが原因だと思う」と、衝撃の答えを返された。

「え? どういうこと?」

「ここの魔獣は本当に質が良いみたい。だから魔力にも敏感で、〈認識阻害〉で薄めた魔力の気配からでも、リリィの魔力量の多さに勘付いちゃったんだと思う」

そ、それは……かの『魔王化現象』再びってこと!?

以前、ソウさんとギルドのクエストを受けに行った時のことだ。お目当ての魔獣がなかなか見つからずに首を傾げていたら、実は自分から漏れ出た魔力が原因で怯えられ、逃げられていたことを知り、「魔獣に逃げられるなんてどこの魔王だよっ!」と頭を抱えたのである。

普段、森で狩りをする時は〈認識阻害〉改め、〈認識遮断〉の魔法をかけていたから気付かなかったけど、街に行く時は〈認識遮断〉の魔法は使わないようにしていたから、そのまま魔法をかけずに狩りに行ったために起きた現象だ。

その人外じみた現象をまた引き起こしてしまったということ!?

え……、どうすれば……〈認識遮断〉を使えばいいの? でも、そうしたら、私の姿が突然消えたようになりそうだし……と考え始めたところで、ジタバタしていた魔獣たちが徐々に大人しくなってきた。

「え?」

「〈認識阻害〉の魔法を重ねがけしたので、これで問題ないはずですよ」

「……そうなんだ、ありがとう」

原因に気付いた雪丸さんがすばやく対処してくれたおかげで、事なきを得たようだけど、自分がちょっと人の定義から外れているのでは……と若干の不安を感じてしまったのであった――。