軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

◆77・旅立ちの朝。

辰五郎親分を見送った私は、朝食の準備をするために外の調理場へと向かった。

私の家の中でゴロゴロしていたナツメさんも一緒に調理場へ行くようだ。

調理場で猫を連呼しまくる猫の歌を口ずさみながら料理をしていると、いつの間にか来ていたハウゼンさんに「君は大きいピクシー族だと思っていたのだが、ケット・シー族だったのか?」と真顔で聞かれて、死んだ魚のような目になってしまった。

だから、人間だってぇの……。

別に自分のことを歌ってるわけじゃないから……。

そんな自己紹介みたいな歌を歌うの、ジ●イアンくらいしかいないと思う。

そう思っていた矢先に、猫の歌を気に入ったナツメさんがその歌を歌い出したので、まんま自己紹介歌みたいになってしまったけど、正確には猫妖精だしね……と、生温い目で見守ることにした。

それはさておき、今日の朝ご飯はいろいろなパンとサラダ、オムレツ、ソーセージ、アスパラとエビのミニグラタンに、野菜たっぷりコンソメスープだ。

「君の料理も今日で食べ納めか……」

「あ、マジックバッグの中に料理も詰めてあるんで、食べ納めではないですけど」

「……マジックバッグ?」

「はい、旅に必要そうな物をいろいろ詰めてあるので、あとで渡しますね」

「いや……、ありがたいが、マジックバッグ……。マジックバッグは高級魔道具だが、いいのか?」

「え? あ~……、大丈夫です。誰かに私からマジックバッグをもらったとか言わないでもらえれば」

「それは決して言わないが、結局、狩りを手伝えたのも一回だけだったし、その、やはりお金が……」

「いえ、その一回の狩りでかなりの獲物をもらったので充分です。問題ないです」

「そう……か? ではありがたく頂戴することにする」

「はい」

どうしよ、自分でアッサリ作れちゃったから、マジックバッグが高級魔道具だったとか気にしてなかったわ。私が作ったことは黙っておこう。

できあがった料理をテーブルに並べていると、ルー兄や雪丸さん、いつもの妖精組やスライムたちもやってきたので、今日のメンバーはこれだけかなと辺りを見回していると、入り口に白い人が二人いた……。

「え?」

「おはよう、リリアンヌ!」

「……オハヨウゴザイマス?」

超絶眩しい笑顔で、爽やかに声を掛けてくる見慣れた(?)白竜様と、その白竜様の髪を短くして、男らしくしたような白竜様が見え……たような……見えてないような……?

「こうして言葉を交わすのは初めてだが、久しいな。息災であったか?」

「……? エット、ゲンキデス」

なんか男らしいほうの白竜様にちょっと意味不明なことを言われたけど、意味がわからないな。『言葉を交わすのが初めてなのに久しい』ってなんだ? 普通に初対面……ん? でもこの人もどう見ても白竜様……白竜様か? 双子? 分裂? 分身? 何? とりあえず……

「眩しい……」

二倍で眩しいんですけど。眩し過ぎて、余計に思考が働かないんですけど。

「眩しい? そこまで日は差してないと思うけど」

ええ、発光源は貴方たちです。日は眩しくないです。

「にゃ⁉ 白竜様?」

「白竜様がお二人?」

「みゃ⁉ どうなってる?」

「白竜様! お久しゅうございます!」

「うむ、雪丸か。随分久しいな」

「…………は……くりゅ……?」

「…………」

あれ? ナツメさんたちも驚いてるね。じゃあ、双子だったとかではない?

雪丸さんだけ、普通に挨拶してるわ……。

うん、ハウゼンさんとルー兄は固まってんね。そうだよね、そうなるよね!

「ああ、そういえば、お前たちにも言っていなかったな。二百年ほど、こ奴に我の代理をさせていたのだ」

「「「代理⁉」」」

「あ、僕のことは『レイ』とでも呼んで。代理っていうか、しばらくアルバスの身体の管理を任されてただけだよ。君らも僕がアルバスの身体を使い始めた頃は、『なんだか口調が変わりましたか?』とか『なんだか髪がすごく伸びましたか?』とか言ってたと思うけど、覚えてない?」

「にゃ……、そういえば……」

「そういえば……少し女っぽくなられたなと思ったことがあったような……」

「…………女っぽく?」

いや、そこで気付いてよ! そんだけ変わってたらおかしいでしょうが!

「みゃ……、でも気配は変わっていなかったからな……」

「まぁ、身体はアルバスのだったし、中にアルバスもいたから気配は変わらなかったと思うよ」

「ソレハ……、二人で一つの身体を使ってたということですか?」

「そうだよ、でもやっとアルバスが起きたからね、アルバスの身体はアルバスに返して、僕は分離したってわけ!」

「分離……」

え? 生物の分離ってそんな『身体返すね!』ってノリで、できちゃうものなんだろうか……?

「元々、僕の身体は誰かさんにほとんど吹っ飛ばされちゃってさ、死にかけの僕の身体にアルバスの肉体の一部を分けてもらって、生き延びたからね。半分くらいはアルバスの身体だし、分離は割と簡単にできたんだ」

「ソウナンデスネ……」

そんな、粘土じゃないんだから、肉体の一部を分けてもらったとか超笑顔で言われても、ちょっと反応に困っちゃうんですけど……。てか、身体吹っ飛ばされたってナニ?

「あれ? じゃあ、今まで私が話してたのは『レイ様』だったってことですか? さっきの白竜様の『久しい』って何だったんでしょう?」

「あ、『様』は要らないよ。リリアンヌは『レイ』って呼んで」

「え……、あ……、さすがに呼び捨ては……」

「いいから、いいから! ね?」

「うっ……」

話してる途中にさり気なく抱き上げながら、眩し過ぎる笑顔を超至近距離で喰らわせるのヤメテ。目がぁ~! 目がぁ~! イケメンは百歩くらい下がって、チラ見する程度で丁度いいんだよ! 過ぎた美形は凶器だって自覚して!

「リリアンヌ、そ奴を『レイ』と呼んでやれ。二百年も代理をさせたからな。褒美のひとつくらいあっても良かろう」

「褒美?」

なんかよく分からないけど、白竜様のお願いとあらば、無下にするわけにはいかない……か?

「それから、先のお主の疑問だがな、リリアンヌがこ奴と初めて会った時から、我はこ奴の中から見ていたからな。話していたのはこ奴であったが、我の意識も共有させていたから、我の言葉でもあったのだ。だから、我はちゃんと自分の名前を名乗ったであろう? 我もお主には名で呼んでいいと言ったのだがな」

「それは……」

ぶっちゃけ、白竜様のフルネーム覚えてn……。アルバス、なんちゃらダ……ダ……ダル? ダ●シム? なんだっけ……。もう完全にアルバス・ダ●ブルドアしか出てこないんだけど、どうすれば……。

ちょっとヤバい汗が出始めて困惑していると、救いの声が聞こえてきた。

「アルバスの名前は長いからね。というか、竜族はみんな名前が長いんだよ。竜族同士だって、みんな略して呼び合ってるんだから、リリアンヌもアルバスのことは『アルバス』って呼べばいいよ」

「ん? うむ、まぁ、長いか? こ奴の言うとおり『アルバス』で構わんぞ」

「は、はぁ……。じゃあ、『アルバス様』と……」

「うむ、我にも敬称は必要ないが、まぁいい」

流石に白竜様まで呼び捨てとか無理だな……。

まぁ、とりあえず……

「お二人もご飯食べます?」

「リリアンヌの手料理? いただくよ!」

「うむ、いただこう」

「そういえば、今日はラキさんとラダさんはいないんですか?」

「うむ、おいてきた」

オイテキタ……。

なんかニュアンス的に、二人が追いかけてきそうだな……。

そうこうして、みんなで朝食を食べていると、案の定、ラキさんとラダさんがやって来た。二人の話を聞くに、白竜様は二人を置いてきたというより、黙って山を下りてきちゃったらしい。

「少し山を下りただけではないか。この森からは出ないのだから良かろう……」

ラキさんとラダさんに少々お説教をされた白竜様こと、アルバス様はちょっと拗ねていたけど、朝食に出したグラタンがお気に召したようで、おかわりも出したら、すっかりご機嫌になっていた。

途中でハウゼンさんに「お前がアウルムの気に入りか」とか、ルー兄に「うむ、お前も人族にしては魔力が多い方だな。妖精には害を為すのではないぞ」とか、話かけていた。

話かけられた二人は硬直したり、咽たりして、返す言葉は片言になっていた。

HAHAHA! これで仲間だな! まぁ、私の席はアルバス様とレイに挟まれていて、アルバス・ハイビームとレイ・ハイビームで、私が見えなくなる蒸発現象が巻き起こりそうなくらい眩しいけどな!

両隣が眩し過ぎる朝食を終え、しばらくの食休みをした頃、雪丸さんがハウゼンさんとルー兄に「そろそろ行きましょうか」と声を掛けていたので、旅に必要そうなアレコレを詰めたマジックバッグをハウゼンさんとルー兄の二人に渡し、雪丸さんにはご飯をイッパイ詰め込んだマジックバッグを渡す。

ちなみにハウゼンさんとルー兄に渡したのは、前に作った猫マークと肉球マークの刺繍を入れたバッグだ。雪丸さんには、新たに作った狼のシルエットマークを刺繍したマジックバッグを渡した。

「私にも……ですか?」

「はい、何も要らないって言ってましたけど、ご飯食べますよね?」

「食べる必要はないですが、リリアンヌの作ったものであればいただきます」

「はい、いろいろ詰めたんで食べてください」

みんなに荷物を渡し終えたので、〈アイテムボックス〉から既に出しておいたポシェット型マジックバッグを肩に掛けて、ポンチョを羽織り、ポンチョに追加で縫い付けた大きめポッケの中にスライムの 珠青(たまお) と 望湖(もちこ) を入れたら、準備完了だ!

「ん? リリアンヌ?」

「にゃっ⁉」

「リリアンヌ、その恰好は……」

「んじゃ、行きましょうか!」