軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

◆163・ギアンダノッティの嘲笑 □

町での散策を終えて宿へと戻ってくると、赤き竜の面々も戻ってきた。

ロイド様が飛文書を飛ばしたからだろう。

そこでミルマン兄さんが、ナツメさんと話す謎の珍生物を発見してしまったらしい。

「何だか、金竜様の使者に似ていますね。言葉まで発するのは、特別な個体なのでしょうか?」

――ミルマン兄さん、それ、白竜様入りです。

「(当たりが出たら、もう一本……)」

――ちょっと、レイさん!? 変なこと言わないで? 当たっても、ドラドラくんはイラn……。

「《我はアウルムの使者ではないぞ?》」

「アウルム……?」

「《うむ、我は白竜だからな。アウルムの使いにはならぬ》」

「……え? あ、……え? 白、りゅう? 白竜? ……様? あ、アウル……? あ、リリィ嬢、あの……」

――あ~あ~、ミルマン兄さん、大混乱だね。

私に助けを求めるかのような顔を向けるミルマン兄さんに、軽く説明することにした。

白竜様自身が、『我は白竜だ』とか言っているので、伏せる必要はないのだろう。

他の竜族の名前を言っちゃっているけれど、それはいいのかな?

フルネームじゃないからいい? そうなんですね。

「そのポニ……え~、その動く珍植物の中身は白竜様です。ちなみに、アウルム様というのは、金竜様のことです」

「……そっ………………、っ…………」

「今、白竜様とか、金竜様とか……」

「スチュー?」

「どうした?」

「………………」

「ミルマン殿、目を逸らすな」

ポニワの中身について話したところ、ポニバス様が見えていないライ兄さんたちはともかく、ガッツリ見えているであろうミルマン兄さんは、一度ポニバス様に目を向け……、何事もなかったかのようにスッと目を逸らした。

まぁ、目を逸らしたくる気持ちは、分からないでもない。

だって、ポニワよ?

ただの白竜様ならばともかく……、いや、それもちょっと困るけど、とにかく、これの中身が『白竜様です!』と言われて、すぐに受け入れられる猛者など、きっとこの世のどこにもいないだろう。

ロイド様だってちょっぴり精神崩壊しちゃったのに、ミルマン兄さんに『目を逸らすな』とか、酷なことを……。

「ところで、コr……いえ、このお方のお身体は、植物なのですか? 先ほど、リリィ嬢が『植物』と言った気がするのですが」

「え? ああ、正確には『魔植生物』だそうです。私もよく分かりません!」

「そうなのですね。魔植生物ということは、ネペンティアやギアンダノッティのようなものでしょうか」

ミルマン兄さん?

ちょっぴり受け入れつつも、どうにか現実から目を逸らそうとしていませんか?

まぁ、それより……。

「ネペン……とか、ギア~~~ッティって、何ですか?」

「ネペンティアは袋状の植物で、虫などを食べる植物です」

「ほぉ……んむ」

――なるほど? 食虫植物っぽいヤツ?

「ギアンダノッティというのは……、コレです」

そう言って、ミルマン兄さんが服の内ポケットらしきところから取り出したのは、五センチくらいのデッカイどんぐりだった――。

「どん……」

「これは、危険を感知するとカラカラと音を鳴らしてくれることがあるのです。まぁ、全ての危険を感知してくれる訳ではないのですが、コレのおかげで命拾いすることもあるため、『幸運の実』とも呼ばれています」

「へぇ~! すご~…………ぃっ……」

よく見れば、ポニワの目と口を四角にしたような顔が付いていた――。

まぁ、四角いのは顔のパーツだけで、本体は普通に丸っこいどんぐりである。

かわいいと言えばかわ……、……うん、微妙だな。

ポニワの方がかわ…………、……いや、どんぐりの背比べだ。

どんぐりだけになっ!

「リリィ嬢?」

「――っは!」

「どうかしましたか?」

「いえ、何か、顔があるな……って思っただけです」

「リリアンヌ、ノッティがほしいにゃ~か?」

「ん? ノッティってコレ?」

「そうにゃ~。ほしいなら僕があげるにゃ~よ!」

「え、いや、別に……」

「ナツメ様~……、僕のお宝出してほしいにゃ~……」

「お宝……」

別にほしい訳ではない……と言う間もなく、ロックくんがナツメさんの元へと走り去っていった。

それから、しばらく――。

「リリアンヌ! はいにゃ~!」

「……ワァー、アリガトウ」

元気イッパイで戻ってきたロックくんに、小袋イッパイの顔付きどんぐりを、袋ごと渡された。

――うん、お家に帰ったら、飾るよ。……多分。

私がロックくんから思わぬプレゼントをもらっていると、ポニバス様がミルマン兄さんに話しかけていた。

「《お主、よく見れば、エミリーの血統だな》」

「……エミリーですか?」

「《うむ、随分と精霊に好かれておった者だ。お主も似た魔力をしておる》」

「そうなのですね……。我が家の家系にそのような者がいたとは、知りませんでした」

「《そうか? まあ、昔のことだからな》」

――あれ? 思ったより普通に喋って……。

いや、よく見れば、ミルマン兄さんとポニバス様の視線が合っていない。

どうやら、ポニバス様の頭に咲いている花に焦点を合わせているらしい。

まぁ、ポニバス様の目を見たところで、視線が合ってんだか合ってないんだか、分かんないけどね。

「《そういえば、もう一人……。ん? 気配が……。ああ、お主だ》」

――ルー兄!? こっそり気配遮断を使って、アルバス様に話しかけられないようにしていたね!?

割と平然としているように見えたルー兄も、実はそうでもなかったらしい。

まぁ、気配遮断を使ったところで、アルバス様には意味がなかったよね。

多分、普通に見えていた上に、気配遮断のスキルを使っていたこともバレているはずである。

「《確か……、ルーニィと言ったっか?》」

「――え゛っ?」

――アルバス様! 『ルーニィ』ではなく『ルー兄』です。

発音が少々違ったとはいえ、アルバス様に『ルーにぃ』と呼ばれたルー兄が混乱しています!

「《ふむ、ルーにぃ?》」

「あっ……」

――アルバス様、ヤメテ! 言い直さないであげて!

「……ルーファス……ッデス」

「《ん? ああ、ルーファス……か》」

「ハイ」

「《お主は、ファウストの血統だな》」

「ファウスト?」

「《うむ、お主は見た目もファウストに似ておる》」

「……はぁ」

――あ、ダメだ。ルー兄が生返事してる……。気配どころか、思考を遮断したのでは?

確か、ミルマン兄さんとルー兄は、来訪者の子孫だって話だったよね。

来訪者云々の話をするつもりはないみたいだけれど、アルバス様も興味があるのだろう。

「(なぁ、スチュー、説明してくれよ)」

「え? ああ……」

――ライ兄さん、本当に知りたいのかい?

世の中には『知らぬが仏』とか、『好奇心、猫をも殺す』とか、そういう言葉があったりもするよ?

「《そういえば、他の者には見えないのだったな……》」

「ポ……アルバス様?」

「――わっ!」

「何だ!? 魔物?」

「見たことがないヤツだ」

「ん?」

――あれ? 何だかデジャヴュ……。

「《む? まさか、『魔物』とは我のことか?》」

「――えっ!?」

「は?」

「喋っ……」

「貴方たち、見えているのですか?」

突然、ナツメさんが見えちゃった時と同じ反応だ。

これはどう考えても……。

「《見えぬ者にも見えた方が良いかと、見せてやったのだが?》」

「……ス、スチュー?」

「……こちら、白竜様だそうです」

「……こちら?」

「ええ、こちら」

「《うむ、我は魔物ではなく、白竜だ》」

「「「………………っ…………」」」

――うん、アルバス様? とりあえず、その身体が本体ではないと言った方がいいと思います。

先ほどから話題に上がっていたらしき竜族について、興味津々であったライ兄さんとニックさんとハリーさん。

見えないながらに、話の内容から『まさか、そこに竜族の何かが!?』と、ワクワクソワソワとし、ミルマン兄さんからの説明を待っていたのだろう。

――だが、しかし。

そこに突如として姿を見せたのは、竜族の『りゅ』の字も見当たらない謎生物。

そこでようやっと、ミルマン兄さんが目を逸らしたり、言葉を濁したりしていた理由を悟ったのだろう。

まぁ、もう、見えちゃったあとに察してもね……。

「《そうだな……。せっかく誰にでも見えるようにしたことだし、これからこの姿の我は、『リリアンヌの使い魔』であることにしよう》」

――は???

「つ……、使い魔……ですか?」

「《うむ》」

「『使い魔』とかいるんだ」

「そもそも、ポニワはリリアンヌの使い魔みたいなものだけど?」

「え゛!?」

「今はリリアンヌが具体的な命令を出していないから、リリアンヌが使役している状態のものがいないってだけで、金竜様の命令で動いている分は、金竜様の使い魔とも言えるしね」

――そうだったのか……。

「最近は、テイムして使役している魔獣のことも総じて『使い魔』と呼んでいますし、そう珍しいものでもないですよ」

「そうなんですね……」

「《呼び方の問題だな。リリアンヌはスライムも従魔にしておろう? あれも言わば、リリアンヌの『使い魔』だ》」

「なる……ほど……」

「《では、今から我は、『リリアンヌの使い魔』だ》」

――え? 何が、「では」?

そもそも、私の使い魔設定である必要なんて……。

「《我の近くにずっといる人間が、リリアンヌしかおらぬではないか》」

「……ル、ルー兄とか、雪丸さんとか、レイとか、ナツメさんとか……」

「俺は……」

「私は、ずっと白竜様に付いていられる訳ではないですから」

「むしろ、今の僕も『リリアンヌの使い魔』側だと思うけど」

「吾輩も、ずっと人の姿でいる気はにゃいぞ?」

「………………ぐぅ」

「《リリアンヌ、我に不服でも?》」

「イエ、滅相モゴザイマセン」

「まぁまぁ、本当の使い魔になる訳じゃないんだし……」

「ああ……、うん、ソウダネ」

「《よろしく頼むぞ、主》」

――主呼び、ヤメテ。(白目)

そもそも、なぜ、誰にでも見えるようにしてしまったので?

「《使い魔であれば、この姿で食事をしていても誰も不思議に思うまい》」

「「「………………」」」

――いや? 貴方、見た目が不審……不思議なので、ちょっと……。

みんなも、アルバス様の言葉に疑問の表情を浮かべちゃっています。

《カラカラッ》

「ん?」

「あ、リリアンヌ、ノッティが鳴いてるにゃ~よ?」

――これ、鳴き声なの?

確か、危険を感知して音を鳴らすことがあるって……。

鳴いている(?)のは、私が持っているヤツだけだ。

ミルマン兄さんが持っているノッティは鳴いていない。

確認のために袋の中を覗けば、ノッティの顔らしき模様が弧を描いていた――。

《カラカラッ♪》

「………………」

――鳴き声じゃなくて、笑い声だったよ!

何が、『幸運の実』だって?

《カラカラッ♪》

《カラカラッ♪》

《カラカラッ♪》

ノッティ入りの袋をそっと閉じる――。

「しゃかしゃかしゃかしゃかシャカシャカシャカシャカ釈迦釈迦釈迦釈迦……」

「リ、リリアンヌ!?」

《カッ、カラ……カカッ……》

《カララッ……カッ……カッ》

《カラッ……カカッ……カッ》

「あっ……」

「ん?」

「《こ奴ら、リリアンヌの使い魔になったぞ?》」

「……え?」

――なんでぇ!?