軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

◆161・乗っ取り □

しばらくすると、ゾルジ邸へと入っていった金ポニワ隊が戻ってきた。

ぐるぐるに拘束された人間一人を、ポニワが二体で担いで運んでいる。

「力持ちぃ~……」

ポニワが運んでいるってことは、この人たちは例の人工魔石を持っているってこと?

「ゾルジ家の当主もデルゴリアとは別に、自分たちで人工魔石を作っていた可能性があるからね。魔石を持っていなくても、無関係であるとは言い切れないし、そこはレギドール騎士団に調査してもらわないと……」

「そっか……」

ゾルジ邸の中にいた人たちは、私が植物魔法で眠らせ、拘束している。

外にいた門番さんと庭師さんらしき人も、ゾルジ邸の一部がぽっかりと消失した時に騒ぎ始めたので、同じく、拘束しておねんねしてもらった。

レギドール騎士団が来るなら、拘束しておいたままでいいかな?

どっちにしても、早めにレギドール騎士団の人に来てもらった方がいいよね。

アルベルト兄さんや、赤き竜の面々にも連絡しないと……。

レギドール騎士団と大公子様には、ロイド様たちが連絡してくれると言うので、お任せだ。

待っている間にふとレイを見遣れば、なぜかまたアルバス様になっていた――。

帰ったんじゃなかったんだ……。

「《リリアンヌ、我は気付いたのだ》」

「何にですか?」

「《うむ、レイの身体に意識だけを残せば、我も町に出られる》」

「…………なる……ほど?」

どうやら、先ほどまではレイと再融合したようなフュージョンドランゴンヒューマン状態だったらしいのだけれど、今はレイの身体に意識だけを飛ばしている状態なのだとか。

融合していたドラゴン部分は、今は元のグレイド山に戻っているらしい。

そして、レイの身体を使えば町に出られることを知ってしまったアルバス様が、どうにかしてここで長居しようとしているようだ。

というか、アルバス様ならわざわざレイの身体を使わなくても、ゴーレム的な分体を作ってそこに意識を乗せるとかできるのでは……?

「《――っ‼》」

――あれ? 何でそんな、『盲点!』みたいな顔を?

そんなアルバス様が、目の前を横切るポニワを一体、掴んだ。

どうしt……。

「《うむ、できたな》」

――ふぇっ!?

「《これはいい。ずっと同じ所にいるのは、それなりに退屈だからな》」

それなり……? いや、まずは……。

――アルバス様!?

それ、ポニワ! ポニワですよ? 今、ポニワ乗っ取りましたよね?

いいんですか!? 何やってんですか? 本当にそれでいいんですか!?

そう、アルバス様は自分の意識をレイの身体からポニワへと移したらしい。

アルバス様が乗っ取ったポニワは、元のポニワよりも人型っぽくなった。

パッと見、人型アルバス様を二頭身のぬいぐるみにしたような見た目だ。

葉っぱの色も、金から白に変化している。

但し、顔がポニワ。

身体は大きく変化したというのに、顔にだけポニワ要素が残るなんて、どういうことよ。

「《うむ、皆にも教えてやろう》」

「ん?」

「《しかし、この身体ではまともな魔法が使えそうにないな》」

「うん? いいでしょ、それで……。てか、魔法使おうとしたの? やめてよね……」

――うん、そうだね。

アルバス様が魔法を使ったら、何かが消滅するおそれが……。

私もレイの意見に賛成である。

身体の主導権が戻ったらしいレイは、すぐに仔猫姿になった。

ポニワ化したアルバス様と話している姿はとてもかわいい。

話の内容は割と聞き捨てならないけれど……。

てか、アルバス様、『皆にも教える』って言った?

――誰に? 何を?

ちょっぴり嫌な予感を覚えつつも、ポニワアルバス様を見遣ると、まるで水を得た魚のように走り回っていた。

――子供かっ!

まぁ、走り回ったところで、本体サイズがニ十センチくらいだから、同じ所でチョマチョマしているだけである。

かわいいけれど、中身がドラゴンだと思うとね……。

「……リ、リリアンヌ……」

「はい?」

「……状況を説明してほしいのだが?」

「………………」

――私もだよ!

アルバス様が掴んだポニワが突如として姿を変え、言葉を発しながら自由に動き出したのだ。

ポニワが見えていないハインリヒさんやブラッドリーさんはともかく、全部見えているロイド様はさぞやビックリだろう。

――私もだよ!

大体、説明って言われたって『白竜様がポニワ化して、そこにいます』以外、何を言えと?

まぁ、明らかに他のポニワと別物になった個体の中身が、白竜様であることには気付いていなさそうだけれど……。

――ああ、なるほど!

「白竜様がポニワ化して、そこにいます」

「……ポ?」

「白竜様です!」

そう言って、ポニワ化した白竜様を指し示す。

「なっ……、そっ……」

――分かります、分かります。

プロトタイプポニワより、ちょっぴり人型になったとは言え、顔が《ぽぉ~!》だもんね。

コ(・) レ(・) の中身が白竜様だなんて、ちょっと信じがたい……というか、信じたくない気持ちも分かりますよ?

ですが、残念! 事実です。受け入れてください。

「そもそも、竜というのはおとぎ話や伝説上の生き物だ。この世に存在するという話はあっても実際に目にした事例がほぼなく、それがあるのが、このレギドールで金竜様が数百年前に姿を見せたという話か、別大陸で邪竜と呼ばれている黒竜の話があるくらい。しかし、それもやはり、ただの作り話だと言う者も多く、一説には特殊個体のワイバーンではないかという話もあるのだ。少し前にアルトゥ教教会で金竜様のお言葉が示され、金竜様の使者を目にしたことで、神聖で強大な力を持つ者の存在自体は感じたが、どうにも実感がないままだった。きっと、そう感じていたのは私だけではないだろう。やはり、実際に竜を見た訳でも、直接言葉を聞いた訳でもないからな。レイ殿が半竜人であったということだけでも、やっとの思いで理解したのだ。まぁ、実際に、レイ殿の腕が竜の鱗に覆われたのを見てしまえばな! だと言うのに……、だと言うのに……」

――ぉおぅ……。

突如として、早口で捲し立てるように話しだしたロイド様。

竜族という存在がこの世にいることを認識していながらも、どこかで半信半疑だったと?

しかし、貴方、さっきまでレイ姿のアルバス様と話していたじゃない。

「君やレイ殿がそうだと言うなら、私が話しているのは、やはり白竜様なのだろう……と思っていただけだ! 実感していた訳ではない!」

「あぁ……」

しかも、聞かされた内容が、『ちょっと間違えて邸の一部が消滅してしまったが、うむ!』って話だったしねぇ……。

挙句の果てに、そんな竜族が目の前でポニワ化しちゃったもんだから、徐々に溜めこまれていた『非現実的出来事』についてのキャパシティが、一気に許容量を超えちゃったかな?

ロイド様の情緒が、崩壊寸前である。

遂には地面に膝を突いて、項垂れ始めるロイド様。

ハインリヒさんとブラッドリーさんが、オロオロしているよ?

「《若者よ、アーテルを『邪竜』呼びしていると、殴られるぞ? 気を付けよ》」

「へ……、あ、エ? アーテル……トハ?」

――あ、ロボイド爆誕に乾杯!

「《黒竜のことよ。あ奴は人間があまり好きではない 故(ゆえ) 、人間を殴ることに躊躇などせぬからな》」

「ア……、ハイ……」

――竜族に殴られたら、爆散すると思います。

「《それと、竜はワイバーンではないぞ? 我はともかく、ラダが聞いたら怒り狂うだろうから、それも気を付けよ。爪で引っ掻かれれば、皮膚が裂けるでな》」

――皮膚どころか、身体が裂けると思います。

「ラd……、心得マシタ……」

「《うむ》」

――あ、ロイド様、顔が死んだ。

ラダさんが何者であるかが気になりつつも、それを聞く気力すらなくなったらしい。

そんなロイド様の足下で、はしゃぎまわるアルバス様。

瞳のハイライトが消えたロイド様の肩をポンポンと叩き、そっとチョコ(製菓用)を差しだす。

――まぁまぁ、甘いもんでも食べて落ち着きなはれ。

「何だ、この茶色い板は……」

――返せ!

「白竜様、ちっちゃいにゃ~」

「《愛らしかろう?》」

「白竜様も一緒に旅ができるにゃん?」

「《そうだな》」

――ん?

「白竜様、あとで町に行かにゃいか?」

「《うむ、楽しみだ》」

――んんん?

ロイド様に、ガルーダモードのラダさんが凶器級の足爪をお持ちであることを説明していると、アルバス様と猫妖精たちの不穏(?)な会話が聞こえてきた。

もしやアルバス様、ポニワ化したままずっとここに……?

まぁ、ほとんど何もない山の上に棲んで、動ける範囲がせいぜいティントルの森の中層辺りまでだったことを思うと……。

意識を移すことで自由に動かせる身体(?)が手に入ったら、そりゃ、はしゃぎたくもなるよね。

――あ、何だか、ちょっぴりホロリ……。

だけど、今までそういうことをしようとは思わなかったのだろうか?

やろうと思えば、ポニワとか使わなくてもできた気がするんだけど……。

「《我の意識を乗せられる存在がいることに、先ほど気が付いたのだ》」

「それって僕のこと?」

「《お前に呼ばれなければ、誰かに意識を乗せようなどとは思わなかったからな》」

「なる……ほど……?」

そもそも、自分の身体があるのに、他の身体で動こうとは思わないよね。

そういえば、アルバス様は山から下りてくる時は人型になっているけれど、ドラゴンモードで移動したりしないのかな?

せっかく飛べる……飛べるよね? 飛べる生物なのに、自由に飛び回れない?

「《ん? 人の少ない所で飛び回ることもできる。我は我の意思で行動範囲を制限しているだけだ。まぁ、アーテルなんかは、人がいようとお構いなしに動き回っているさ。どうするかは、それぞれの自由だな》」

「そうなんですね」

「《その内、リリアンヌを乗せて飛んでやろうか?》」

「え! 本当ですか!?」

「《うむ。まぁ、今は無理だが》」

「ああ……、それは、はい」

――うん、今はポニワですもんね。

私がティントルの森に帰ったら、アルバス様がドラゴンモードでお散歩に連れて行ってくれるらしい。

飛ぶなら、お散飛……、おさんぴ? いや、お散歩でいいか。

お竜様の背に乗って飛び回ることを、『お散歩』という言葉で片付けてしまっていいのかは些か疑問ではあるけれど、すごく楽しみだ。

――ねばぁ~えんでぃんぐ!