軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

◆129・不憫な犠牲者

認識遮断魔法をかけた私とルー兄は、妖精や妖精が見えるほどの高魔力保持者でなければ、この姿を捉えることはできない。

それでも何となく、抜き足差し足忍び足。

まぁ、私は浮遊魔法で青くて丸いあの子の如く、地面の上に浮いているけれど。

すすす~っと地面の上をスライドしながら、目的の建物へ近付いていく。

その途中で、視界の端で何かが動いた気がして、思わず歩みを止めた。

「…………?」

「(リリィ? どうしたの?)」

「(何か、動いた気がして……)」

――動物? 虫? 気のせい?

動きを感じた先に視線を遣るも、特に動きはない。

やっぱり気のせ……。

「にゃにゃ~! ナツメ様~!」

「にゃ?」

「「――!?」」

「あっ! アオにゃ~!」

気のせいかと思った瞬間、樹の影からアルベルト兄さんに付き添っているはずのアオくんが姿を見せた。「ナツメ様~!」と言いながら、ブンブンと手を振っている。かわいい。

はっ! 今は猫妖精のかわいさにほっこりうっとりしている場合ではなかった……。

それにしても、ここにアオくんがいるということは……と目を凝らせば、案の定、アオくんのすぐそばにアルベルト兄さんの姿があった。ついでに、その後ろには知らない男の人もいるけれど、アルベルト兄さんと同じような恰好をしているので、あの人も聖騎士さんなのだろう。

アオくんが声を上げたことでアルベルト兄さんもこちらに気付いたようだけど、後ろの聖騎士さんがいるからか、ちょっと視線をオロオロさせて戸惑っているようだ。

まぁ、そうだよね。

きっとあの後ろの聖騎士さんには、私たちも猫妖精たちも見えていないし、声も聞こえていないのだろう。私たちとアルベルト兄さんは、お互い『なぜここに?』とか思いつつも、声を上げられないでいるのだ。

――さて、どうしたものk……。

「にゃとぅっ!」

「――!?」

ナツメさんの勇ましい声が響いた瞬間……、いや、全然勇ましくないな。何よ、『ニャトゥ』って。

とにかく、ナツメさんの声が響いた瞬間、アルベルト兄さんの後ろにいた聖騎士さんが崩れ落ちた。

「ナ、ナツメさん……、にゃんてことを……」

「ちょっと眠らせただけだ、問題にゃい!」

「クラウディオ……」

「まぁ、いろいろ説明するより、寝ててもらった方がいいかもしれないけど……」

「しかし……、目覚めた時に何て言えば……」

「にゃ? 『大きにゃ木の実が降ってきた』とでも言えば良かろう」

ナツメさんの言葉に、何となく辺りの木の上を見てみる。

アルベルト兄さんも同じく上を見上げているので、木の実を探しているのだろうけど、それらしいものは見当たらない。

「木の実とかないよな……」

「………………アルベルト兄さん、コレ……」

「………………」

周辺に木の実がなかったので、アイテムボックスからバルーンナッツの殻を差しだした。旅の途中で採った木の実である。バレーボールくらいの大きさなので、丁度いいと思うのだ。

中身は食べてしまったので、ちょっと軽いかも? 何か詰めておこうか……。

ああ、いや、中身は『アルベルト兄さんが食べた』ということにしておけばいいか。

「これが降ってきたと言うのか?」

「眠っている間にこの人を移動させれば、どこの木の実か分からない……はず……」

「……わかった」

まぁね、もう気絶しちゃってるからね。

『ニャトゥメチョップで気絶した』って言うよりはいいと思うよ。

『木の実が当たって気絶した』って言われるのも、結構恥ずかしいかもしれないけれど……。

とりあえず、アルベルト兄さんが『クラウディオ』と呼んだ聖騎士さんへの対応はこれでいいとして……。

「アルベルト兄さん、どうしてk……」

「あ~! 見つけたにゃの~!」

「ん?」

「あれ?」

「にゃ?」

アルベルト兄さんがここにいる理由を尋ねようとしたところで、聞き覚えのある声がこちらに向かったきた。

「アルベルト~! お手紙持ってきたにゃの~!」

「手紙?」

――うん、さっき私が書いた手紙だね。

「これね! リリアンヌからの……」

言葉に詰まった小雪ちゃんの視線の先にいるのは、私、リリアンヌ。

そう、私たちは小雪ちゃんがアルベルト兄さんに手紙を届けるよりも早く、アルベルト兄さんに遭遇してしまったのだ。

「あれれ~? にゃの……」

――そうだね、『あれれ~?』だね……。

気まずい。非常にきまずい。

ついさっき『任せるにゃの!』と、とっても張り切っていた小雪ちゃんを親になった気分で見送ったというのに……。だが、しかし……。

「こ、小雪ちゃん、手紙をアルベルト兄さんに渡してもらっていいかな?」

「……わかったにゃの! アルベルト、はい! お手紙にゃの!」

「……ああ、ありがとう」

アルベルト兄さんは『目の前にいるのに手紙?』という顔をしているが、何も言わずに手紙を受け取っている。そのまま、お口チャックリンしていておくんなまし。

「にゃにゃ? こゆき?」

「アオお兄ちゃま! そうなの! わたち、『小雪』って名前を付けてもらったにゃの!」

「にゃにゃ! それは良かったにゃにゃ!」

――ナイスだ、アオお兄ちゃま!

小雪ちゃんの気がアオくんとの会話に逸れている間に、アルベルト兄さんには私からの手紙を読んでもらう。

目の前で自分の書いた手紙を読まれるというのは、内容がただの連絡事項であったとしても何となく恥ずかしい気持ちになってしまうけれど、小雪ちゃんの努力の前では私の羞恥心などミジンコ以下なのである。なので、『読め! さあ、読め!』と視線に圧を乗せて、アルベルト兄さんに手紙を読むように促した。

まぁ、大したことは全く書いていない。

大事なのは『小雪ちゃんが届けてくれた手紙をアルベルト兄さんが読む』ということなのだ。

そうこうしているうちに、アルベルト兄さんは手紙を読み終えたようである。

――ミッション コンプリィィィトォォォ~!

「……えっと、それで、どうしてここに?」

あ、うん、そうだね。

詳しいことは何も書いてなかったので、結局口で説明しなきいけないんだった。

一瞬感じてしまった達成感はさておき、アルベルト兄さんに、わたしたちがここにいる理由を説明し、ついでにアルベルト兄さんがここにいる理由も聞く。説明したのは私ではなく、ルー兄だけど。

とにかく、情報交換をしあった結果、アルベルト兄さんたちは『孤児が森の方へ連れて行かれた』という情報を元に、森の中を捜索しようとしていたらしい。

そして、私たちは 傀儡人形(マリオネット) 部隊がいるという場所へ行こうとしていたところで……。

まぁ、どう考えても目的地は同じだよね。

ルー兄の話では、森のこの辺りには、目的地の建物以外の建物はないようだし。

ということで、私たちは行動を共にすることにした。

……その前に、クラウディオさんとやらを移動させておかないとね。

クラウディオさんをアルベルト兄さんに運んでもらい、私は土魔法で小さめの簡易小屋を造る。その中にクラウディオさんを寝かせたら、念のために簡易小屋に結界を張っておく。これで、眠っている間に何かに襲われるようなことなどないだろうて。

しかし、私たちが戻ってくる前に目覚めてしまったらどうしようかね?

「アルベルト兄さん、この人に書置きでもしておく?」

「あ~……、そうだな」

「その必要はにゃい」

「「え?」」

「この人間が目覚めそうににゃったら、即座に意識を刈ってやろう」

「「え……」」

「いやぁ、そういう問題じゃないと言うか……」

「にゃ? しかし、変に目覚められても面倒ではにゃいか」

「それはそうだけど……」

それって、クラウディオさんは意識が浮上する度に猫チョップを喰らわせられるってことでしょ。不憫過ぎるんだけど……。クラウディオさんというより、『苦労ディオさん』と呼んでしまいそうである。

「ナツメ様!」

「にゃんだ?」

「その役、俺がするにゃにゃ!」

「にゃ? いいのか?」

「アルベルトはしばらくリリアンヌと一緒に行動するみたいだし、俺が付いていなくても問題ないにゃにゃ。見張りと意識刈りくらい、俺もできるにゃにゃ!」

「にゃ、そうか? ではアオに頼もう」

「なら! なら、わたちもアオお兄ちゃまと一緒に残るにゃの!」

「ん? いいにゃにゃか?」

「一緒に見張りするにゃの!」

「じゃあ、一緒に頑張るにゃにゃ!」

――あ~、ほっこりするぅ。

トラさんとロックくんのコンビも良いけど、アオくんと小雪ちゃんのコンビも良いよね。

まぁ、話している内容は、目覚めそうになったクラウディオさんに、どれだけ素早く猫チョップできるかについてだけど……。

結局、私たちが戻るまで、クラウディオさんにはここで寝ていてもらうことが決定した。クラウディオさんの同僚らしいアルベルト兄さんは複雑な顔をしているけれど、いろいろ説明するよりは、その方が平和だと思うよ。……多分。

不憫なクラウディオさんに、幸あれ――。