軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

◆125・驚きの吸引力

「ほぇ~……」

私が今、見上げているのは、超デッカイ鷲だ。

目つきが鋭くて、とってもかっこいい。何だか「兄貴!」と呼びたくなる風貌である。こちらのデカ鷲さんは『ゲイルイーグル』という魔鳥で、身体が黒、頭と尾が白く、羽の先が鮮やかな緑色のもふもふさんである。

もふもふでありながら、かっこいい。素晴らしい。

少し前に見た黒い奴らの記憶は消去し、『 騎(・) 獣(・) 屋(・) 』にやってきた私たちは、飛行型騎獣の定番とも言える鳥系魔獣を紹介してもらった。

ゲイルイーグルは3~4人乗り用で、1~2人用であれば、『ウィンドホーク』という鷹の魔鳥がおススメらしい。ウィンドホークも見せてもらったけれど、こちらもかっこよかった。素晴らしい。

そう、飛行型騎獣は鳥系が定番。

こんなに素晴らしいもふが普通に借りられるというのに、ハリーさんはなぜあの店に私たちを連れて行ったのか。解せぬ。せめて、てんとう虫であれば許容できたものを……。いや、やっぱり蟲はなしである。

ここで借りる騎獣はこのデッカイ鷲、『ゲイルイーグル』だ。

この騎獣屋では騎獣に名前は付けていないようで、番号で呼ばれている。今、私の前にいるゲイルイーグルも『風の三番』と呼ばれているらしい。それはそれで、ちょっとかっこいいけれど、今回私たちを乗せてくれるゲイルイーグルさんには敬意を込めて、『兄貴』と……いや、『兄貴』と呼ぶ度に、ハイパーロングヘアーな黒い服の人が頭の中で睨んできそうだから、『風の兄貴』にしようかな。

それにしても……。

――はぁ、風の兄貴のお腹に埋もれたい。

あの、モフッとして丸ッとした魅惑的なお腹。

猫妖精たちや獣型の雪丸さんとは違った、鳥特有のもふもふ……。

飛びつきたい。

煩悩塗れの視線を風の兄貴のお腹へと向けつつも、騎獣屋さんの魔鳥に勝手なことはできないと、必死に我慢することにした――。

もふぁっ――。

「リリアンヌ!?」

「――はっ!」

――いつの間に!?

どうやら私は、無意識のうちに、風の兄貴のお腹に抱きついてしまったらしい。

もふぁっ、もふぁっ――。

ああ、だめだ、離れられない。

何という吸引力……。

「お、お嬢ちゃん……」

「あっ! ごめんなさい!」

騎獣屋のおじさんに困惑の目を向けられ、慌てて正気を取り戻す。

「いや、いくらテイムしている魔鳥とは言え、ゲイルイーグルは必要以上に触られるのを嫌って、人を乗せる時以外は距離を取りたがるんだ。だから、よく触らせたなと驚いているよ」

「……そうなんですか?」

あれ? 怒ってない?

もしかしてこれは、お触りOKということ?

「あの、もうちょっと触っていても……?」

「ん? ああ、風の三番が嫌がっていないなら、触るのは構わないよ」

――やった~!

という訳で、私は風の兄貴のお腹に抱きつき、しばらくもふもふを堪能させてもらったのである。

しかし、ずっとこうしている訳にもいかないと、私たちは風の兄貴に乗って、次の町を目指すことにした。

ロイド様と赤き竜の一行は、ここからレギンへと向かう。

レギンには王城があるが、いるのは王ではなく、大公らしい。

レギドールは、アルトゥス山の麓にある町、これから私たちが向かう『リビエス』から広がり、できた国だ。リビエスにあるアルトゥ教の教会には教皇猊下がいて、国で一番偉いのは『教皇猊下』とされている。しかしながら、教皇は政治にはほぼ関与しておらす、言わば、国の象徴のような扱いらしい。

そこで、政治を取り仕切る代表として、大公が存在するという訳だ。

実質、国のあれこれにかんしては、大公を中心に回っているため、教皇自身には特に力はないようだ。

祭壇の間で時間を潰しているらしい人が教皇本人っぽいので、力がないということには、ちょっと納得である。

教皇が会っているのは、実は雪丸さんだという事実はさておき、王ではなく大公を置いているということは、国としても『教皇』という存在は必要なのだろう。

何となく、今は教皇よりも枢機卿の方が力を持ってしまっている気もするけれど……。まぁ、デルゴリラとかいう枢機卿のしていることが教皇と無関係かどうかはまだ分からないから、何とも言えないか。

みんなからレギドールの話を聞きつつ、風の兄貴に乗った私たちはリビエスへとやって来た。

当初は、私たちも聖騎士団・第五部隊の駐屯所へ向かう予定だったのだけど、ルー兄は元 傀儡人形(マリオネット) だし、リリたんは五歳だし……ということで、近くで宿でも取って、お留守番していようということになった。

しかし、「宿なんて取らなくても、私がいい場所に案内してあげるわ」と、クロに連れられて、とあるお邸へと行くことになったのである。

クロ曰く、このお邸は、かなり昔にやって来た来訪者が、来訪者や高魔力保持者、つまり妖精が見える人専用の宿屋として営業していたのだと言う。当時は、妖精たちと、妖精が見える人たちの交流の場にもなっていたらしいのだけど、二百年前のとある来訪者によって起こされた事件をキッカケに、この宿屋も営業を停止したのだとか。

その後は、このパドラ大陸の猫妖精や霊獣たちによって密かに手入れされ続け、営業はしていないけれど、いつでも使える状態になっている上に、様々な魔法がかけられ、今では妖精たちの避難場所のひとつになっているらしい。

お邸はアルトゥス山を中心に広がる『レイヴェルの森』に近く、リビエスの町の外れにある。元宿屋と言っても、かなり限定的な営業だったため、そこまで大きい建物でもない。田舎の別荘地にある、ちょっと大きなお家と言う感じだろうか。

「何だか、落ち着く雰囲気だねぇ」

「気に入った?」

「うん、すごく!」

「それは良かったわ。リリアンヌなら、いつでもここに来ていいわよ」

「ホントに? やったぁ!」

「ん、リリアンヌ、来た」

「――へ?」

クロに案内されて入ったお邸の中には、白髪ボブでヘテロクロミアの十五、六歳くらいの美少女がいた。

「…………シロ?」

「ん、シロ」

「人型だね」

「ん、今日は人型」

かわいい。

そんなかわいい人型シロが、なぜか私の周りをぐるぐるしだした。

――え? 何? 地震?

「ちょっと、シロ、何してるのよ!」

「ん、リリアンヌが来たから」

「え?」

――ダメだ、意味が分からない。

「シロ様は、食べ物がほしいにゃ~よ!」

「え? あ、そうなの?」

「ん……」

そう言えば、シロも結構な食いしん坊だった……。

だからって、ぐるぐるする必要はないと思うのだけど、まぁ、いいか。

それにしても、ロックくん、よく分かったな……。

クロたちに広間へと案内され、ソファに腰かけたところで、マジックバックを漁り、食べ物をいろいろと広げてみた。

「ん、いっぱい。嬉しい」

「僕も食べていいにゃ~か?」

「いいよ」

「にゃっ! 吾輩も食べるぞ!」

「オイラも……」

「うん、みんな、好きに食べたらいいよ」

すっかりくつろぎモードに入ってしまっているが、ただただ、くつろいでいるだけではない。

まずは、アルベルト兄さんが聖騎士団・第五部隊の駐屯地へと行き、孤児院に関する調査についての進捗具合の確認をしてくるということになった。

どうやら、このお邸には、猫妖精か霊獣の案内がなければ辿り着けない魔法がかけられているらしく、アルベルト兄さんには、ここへ戻ってくるための案内役として、パドラ大陸の猫妖精が付いていくのだとか。

アルベルト兄さんに付いていくのは、黄色い瞳のアビシニアンブルーっぽい子だ。名前は『アオ』というらしい。名付けたのは絶対、シンタロウさんだろう。

それはさておき、アルベルト兄さんが駐屯地に行っている間に、私とルー兄は、強制隷属魔法にかかっている人についての作戦会議をすることにした。

強制隷属魔法を解除すると、魔法をかけた者に気付かれる可能性があるのだけど、分かるのは魔法が解除されたということだけ。ならば、デルゴリラがいるであろう教会から離れた位置に強制隷属魔法にかけられた人を集め、一気に解除するのはどうだろうか?

「そうだね、全員は無理かもしれないけれど、一気に大人数の強制隷属魔法が解除されれば、デルゴリア側の戦力も減るし、孤児たちについての情報を持っている人もいるかも」

――デル……ゴリア……?

あれ? 一体いつから『ゴリラ』だと……。

まぁ、いいや。

とにかく、アルベルト兄さんが戻ってきたら、今度は私とルー兄が姿を消しながら、強制隷属魔法がかけられている人たちを、密かに拉致してくることとなった。

いや、『拉致』と言うと、何だか私たちの方が犯罪者っぽいので、『保護』と言おう。

言い方ひとつで、犯罪者っぽくなってしまうとは、何と恐ろしい……。

まぁ、実際にやるのは『拉致』だと言う事実は、心のポッケにナイナイしておくことにしよう。

こうして、今後の計画を立てたところで、私たちは、アルベルト兄さんの帰還を待つことにしたのであった――。