軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

◆122・レギドールへ

「にゃふっ、 中々(にゃかにゃか) 美味かったにゃ」

「お腹いっぱいにゃ~」

「オイラも」

「あんなにバクバク食べておいて、 中(・) 々(・) なの?」

「リリアンヌの海鮮ばぁべきゅ程ではにゃかったからにゃ」

――いや、一緒だわ。

「どっちも焼いただけだよ……」

強いて言うなら地球産調味料の有無だけど、私は交換ショップで入手した調味料をかけただけだ。それに、バーベキューをする時は大抵、各自で勝手に焼いているではないか。故に『リリアンヌの海鮮バーベキュー』という表現は語弊がある。

――まぁ、いいや。

お腹がいっぱいでツッコむのが面倒だったので、心の中だけで反論しておくことにした。人は満腹になると、何もしたくなくなる生き物なのだ。仕方ない。

それより、皇子様や貴族たちが何の抵抗もなく屋台料理を食べていることに少々驚いたけれど、ワイワイと屋台飯を堪能したあとは、いよいよ海越えだ。アーメイア大陸を出て、レギドールのあるパドラ大陸へと向かう。

まずはロンダンの使者の一団として、レギドールの王城へ向かうらしい。

まぁ、城の中まで行くのは、ロンダンとカレッタの一行だけだ。私たちは、アルベルト兄さんが所属している聖騎士団・第五部隊の駐屯地へ先に向かう予定である。

ロンダンとカレッタの一行が王城でデイジー捜索の許可を取ったら、第五部隊駐屯地で合流するのだとか。

王城は『レギン』という名の皇都にあるらしい。

レギンの北西にアルトゥ教の総本山があるようだ。

更にその奥には、海まで続く森が広がり、森の中央にアルトゥス山と呼ばれる霊峰がある。恐らく……というか、十中八九、その山に金竜様がいるのだろう。

ところで……

「ねぇ、ナツメさん、これからパドラ大陸に行くんだけど、一緒に行くの?」

「にゃ? 行くぞ?」

「あんまり森を離れられないって言ってたのに、大丈夫なの?」

「まぁ……、あと少しくらいにゃら……」

――歯切れ悪っ……!

本当は帰った方がいいけれど、もうちょっと遊びたいし~ってところだろうか。

まぁ、どうしてもダメなら、きっとソウさんが迎えに来るだろう……。

ソウさんは、ナツメさんの分まで森の管理仕事をし、森でお留守番中のナツメさんのスライムたちのお世話までしているのだ。……ソウさん、お土産いっぱい買って帰るからね!

ソウさんはいつも紳士なオカンだけど、お肉を食べている時だけは野生がこんにちはしているので、きっとお肉が好きだと思うのだ。パドラ大陸で有名なお肉とかあるだろうか。

お肉の調達についてはさておき、まずはアルベルト兄さんの気掛かりである孤児たちの調査と、ルー兄の仲間の解放だよね。デイジーのことは、ロンダンとカレッタ一行も調査をするだろうし、優先度はさほど高くない。

そもそも、デイジーがスキルを使えば、猫妖精たちが気付く可能性が高いのだ。

今はスキルが封じられているのだか何だかでデイジーの魔力臭が判らないみたいだけど、ずっと封じられたままということはないはずである。

もしも、デルゴリラ枢機卿の周辺にいるのであれば、わざわざ捜さなくても見つかる可能性も高い。デルゴリラ枢機卿が一番の調査対象なのだから――。

旅の途中の景色に気を取られたり、美味しいものに気を取られたり、つるもふ生物に気を取られたり、猫妖精に気を取られたりもしたけれど、ここで一度、気を引き締めておくとしよう。

「にゃっ! リリアンヌ、アップリンの串焼きが売っているぞ!」

「えっ!? ホント? どこどこ?」

「あそこだ、あそこ!」

「お腹がいっぱいだと言っていなかったか?」

「アルベルト兄さん、私たちにはマジックバッグがある!」

「…………そうだな」

どうせアルベルト兄さんも食べるくせに~と、私は猫妖精たちと共にアップリンの串焼き屋台へと走った。

「あれ? カレッタで食べた串焼きとちょっと違うね」

「うむ、ここのアップリンにはシナメェンがかかっているようだにゃ」

「ん?」

――今、E●KOさん、いた?

「シナメェンはアーメイア大陸ではあまり見かけにゃいのだが、ここはパドラ大陸に近い 港街(みにゃとまち) だからにゃ……」

――ああ、うん、交易品とかかな。

それより、『メェン』の発音が気になって、話が頭に入ってこないわ。

匂いはシナモンっぽい。

―――――――――――――――――――――――――――――――

◆アップリンの串焼き・シナメェン風味

ケンによってカットされたアップリンにシナメェンの粉末を塗し

串焼きにしたもの。

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うむ、シナメェンの鑑定がしたかったのだけど、串焼きの鑑定しちゃったよ。

まぁいいや、シナモン風味の焼きリンゴみたいなもので間違いないだろうし。

「ん? 嬢ちゃん、一人かい? これ、ほしいのか?」

「あ、はい。買います。おいくらですか?」

「おお、小さいのにしっかりしてるね。一本三百ロダだよ」

三百ロダとは銅貨三枚分。つまり、一本三百円だ。

普通のアップリンの串焼きより少々お高いのは、シナメェン分だろう。

「(みんな、一本ずつでいいの?)」

「吾輩は二本食べるぞ!」

「僕も二本!」

「オイラは一本でいいにゃん」

「(レイは?)」

「僕も一本かな……」

人外組に本数確認していると、ポッケの中のスライムたちが激しい主張をしてきた。

「うぉぉ、分かった、分かったから、ポッケの中で跳ねないで……」

スライムは基本的に雑食だけど、うちの子たちは特に果物とか野菜が好きらしく、食べたいものがあると、跳ねてアピールしてくるのである。うちの子、賢い! でも、ポッケが風船人間みたいな動きになってるからヤメテ……。

密かにスライムたちを宥めようとしていると、みんなが追いかけてきた。

ロンダン・カレッタ一行まで一緒である。

「リリィ、突然走りださないでくれ……」

「あ、ごめんなさい」

「嬢ちゃんの連れかい?」

「はい」

「そうか、一人でなくて良かったよ」

「あ、はい……」

そうだね。猫妖精たちと一緒でも、ほとんどの人には、一人でうろつく五歳児にしか見えないもんね……。

それはさておき、アップリン串を買い終えると、付いてきたみんなも同じものを買い始めたので、屋台のおじさんはニッコニコである。お礼だと言ってアップリン串を二本おまけしてくれたので、ありがたくナイナイしておいた。

出発前にまたもや寄り道をしてしまったけれど、今度こそ、レギドールへ向けて出発である。今は私が起きているということで、私はナツメさんと一緒に、ロイド様のレイヴンラニットに乗ることになった。雪丸さんと一緒で良かったのに……。

しかし、ロイド様が私の同乗を切望したのは、レイヴンラニットの上で自由過ぎる振る舞いをするナツメさんの抑止力がほしかったからだということに、すぐに気が付いた。ロイド様はナツメさんに強く言えないみたいだからね。

飛行中の騎獣の上でウロウロするナツメさんを宥め、『吾輩が操縦してやろう』と宣うナツメさんを抑え、別の騎獣に飛び乗ろうとするナツメさんを捕まえ……、景色を堪能する余裕もない。

やっぱり、ユージオさんの騎獣に乗せてもらえば良かったよ……。

まぁ、現在はず~っと海の上を飛んでいるだけなので、特に変わり映えのしない景s……

ザババババババッ――!

「ほぎっ!?」

「なっ……」

「にゃ?」

海の上を飛行中の私たち一行の前に、突如として巨大な水柱が出現した――。

周りのみんなも、突然立ち昇った水柱にてんやわんやしつつも、臨戦態勢を取っている。私も少々身構えつつ、『何じゃ~!』と、よく見れば、それは水柱ではなく、海中から垂直に伸び上がった巨大な蛇であった。

「海蛇?」

「シーサーペントかっ!」

「ふむ、小物であれば蛇鳥の前には姿を見せぬであろうが、あれは蛇鳥と同格だからにゃ」

「…………蛇鳥?」

もしかして、蛇鳥ってレッサーワイバーンのこと?

ナツメさん的には、レッサーワイバーンは鳥なのか……。

まぁ、それよりも、目の前の蛇である。

「〈アイスロック〉」

カキーン――!

「なっ……」

「な、何だ! 魔法か?」

「誰がやった? ミルマン殿か?」

「にゃははははは、 中々(にゃかにゃか) に愉快にゃオブジェににゃったにゃ」

「あ、ナツメさん、あれ、持って帰る?」

「そうだにゃ、取ってきてやろう」

「あ、じゃあ、お願いしようかな」

「にゃふ! 任せろ」

軽快な身のこなしでレイヴンラニットから飛び去って行くナツメさんの背を見送っていると、背後から有無を言わせぬような呟きが聞こえた。

「…………君、やっぱり呪文を使っていないよな?」

あ、やっちまっただ――。